マライア・キャリーらが彩る映画『フリー・ガイ』の世界 ライアン・レイノルズの選曲センス光るサントラを聴き解く

映画『フリー・ガイ』サントラを聴き解く

 ちなみに、本作のサウンドトラックに収録されていない楽曲のセンスも冴え渡っており、筆者個人として印象的だったのは、物語の前半、とある出来事をきっかけにガイがこれまでの「ゲームのモブキャラ」という存在から逸脱してしまい、追われる身となってしまった状況下で突如として流れるマイリー・サイラス「Wrecking Ball」(2013年)である。ポップカルチャーを楽しむ人であれば誰もが知るであろう、あの「鉄球にまたがるミュージックビデオ」が特徴的な楽曲だ。まさにあのMVが脳裏をよぎるシーンで見事に本楽曲が流れるのだが、あまりにも完璧なカットだったために思わず劇場で笑い声をあげてしまった。だが、あくまで曲が流れるのはほんの一瞬であり、その使い方には単なる大ネタ使いであるだけではなく、「あのMVのマイリーのように現状を打破することも出来ない」というガイに対する悲哀を感じることも出来るのである。

Miley Cyrus - Wrecking Ball (Official Video)

 また、これは映画自体の重大なネタバレになるため詳しくは言及しないが、クライマックスには本作の制作過程で20世紀フォックスが、ディズニーに買収されたからこそ実現出来たであろう、衝撃的かつ爆笑モノの展開が待ち受けている。ある意味ではポップカルチャーにおける究極のクロスオーバーが実現してしまっているのだが、ここでも音楽がそのシーンの破壊力をさらに増幅させているので、ぜひネタバレに遭遇する前に劇場で体験してほしい。

 『フリー・ガイ』は、主演だけではなくプロデューサーも務めているライアン・レイノルズによるセンスが隅々まで冴え渡った、今後も長きに渡って愛されるであろうコメディ映画の快作だが、そのセンスはサウンドトラックにも見事に発揮されている。もしこれから鑑賞する、あるいはもう一度観ようと思っている方がいれば、ぜひシーンを彩る音楽にも注目してみてほしい。きっとさらに本作を楽しむことが出来るはずだ。

※1:https://variety.com/2021/film/news/free-guy-shawn-levy-ryan-reynolds-jodie-comer-1235028546/
※2:https://twitter.com/MariahCarey/status/1426896158958526466(マライア・キャリーTwitterより)
※3:https://comicbook.com/movies/news/free-guy-ryan-reynolds-shawn-levy-credits-great-songs/

■リリース情報
『フリー・ガイ オリジナル・サウンドトラック』 
8月13日(金)CD / デジタルアルバム好評発売中
(税込2,750円 / UICH-1015)
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