花ちゃんズ『MTV ACOUSTIC FLOWERS -Until Full Bloom “Bell & Like”-』インタビュー

花ちゃんズ 富田鈴花&松田好花とプロデューサーが振り返る『MTV ACOUSTIC FLOWERS』 ユニットの可能性についても語る

 日向坂46の富田鈴花と松田好花による花ちゃんズのギター弾き語りライブ『MTV ACOUSTIC FLOWERS -Until Full Bloom “Bell & Like”-』がMTVで6月27日に放送された(リピート放送は7月18日、8月7日)。同ライブは、『MTV ACOUSTIC FLOWERS -Bell & Like-』として2020年3月に開催を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響などにより無観客でのライブの放送となった。今回リアルサウンドでは、そのライブについて花ちゃんズとプロデューサーのMTV戸田裕介氏にインタビュー。ライブの制作エピソードだけでなく、花ちゃんズとしてのこれまでの軌跡、これからの活動の可能性についてもじっくり聞いた。(編集部)

MTV戸田裕介氏、花ちゃんズ(富田鈴花、 松田好花)

花ちゃんズにすごく可能性を感じた

ーー富田さんと松田さんがギター弾き語りを初めて披露したのは、けやき坂46時代の「おもてなし会」(※2018年2月12日、幕張メッセイベントホールで開催)でのことでした。それ以降、クリスマスライブ『ひなくり』などでパフォーマンスを披露してきましたが、おふたりの印象に残っているパフォーマンスやライブはありますか?

富田鈴花(以下、富田):私は全国握手会でのミニライブですね。『こんなに好きになっちゃっていいの?』のCDに収録されている楽曲を全会場で披露したのですが、そのときに毎回2人で「まさか 偶然…」を歌っていたことが記憶に残っていて。その全国握手会の期間は寒暖差が激しかったのもあって、喉を壊しかけてしまったことがあったんです。結局最後まで乗り越えられたんですが、あのときは壁をひとつ超えたなという感覚がありました。

松田好花(以下、松田):私は基本的に花ちゃんズでやったことは全部印象に残っていることばかりなんですけど、中でも一番印象的だったのが直近の『ひなくり2020』で復帰させていただいたときの「まさか 偶然…」です。ファンの方からも「あそこで大号泣したよ」という声をたくさんいただいて、かなり印象深い「まさか 偶然…」だったんじゃないかなと思います。

ーーそうやって数々の思い出を作ってきた花ちゃんズですが、おふたりが考えるこのユニットの魅力はどういったところでしょう?

富田:ギターができるというのは大きな強みだと思っていますし、生演奏の良さを日向坂46の中でもアピールできたらいいなと思っている2人ですね。

松田:ひとりだったら絶対にできなかったことを、たまたま名前に同じ“花”が付いていて、お互いギターをやってきた2人が同じ日向坂46に入ってユニットを組ませていただけことが、すごくうれしくて。鈴花が言っていたように、やっぱり生演奏に特化したユニットはほかにないので、そこは強みかなと思います。

ーーでは、お互いの魅力はどういうところだと思いますか?

松田:鈴花は圧倒的な歌唱力があると思っていて、個人的にもすごく好きなんです。私はどちらかというと歌は得意とまでは言えないので、鈴花の歌唱力に支えられることも多くて。不安なときも鈴花が一緒に歌ってくれていたら私も歌えるような気がするような、それぐらいの心強さが鈴花の歌声にはあります。

富田:恥ずかしいなあ(笑)。好花の魅力は、人間らしさだと思います。温かみがあるメンバーだと思っていて、きっとファンの方も好花のこういうところが好きなんだろうなというのが私にもわかるぐらい。本当に素敵だなと思います。

松田:うれしいです(笑)。

ーー僕は今回のMTVでのライブを何度か見返したときに、おふたりの声が重なったときの気持ち良さが大きな武器だなと思いました。

富田:えーっ! ありがとうございます!

松田:うれしいです。

富田:ファンの方によく言っていただくのは、好花が上ハモをして私が主旋律を歌っているときのハモリがいいねということで、そういうところを褒めてもらえるのはうれしいです。

ーー日向坂46とMTVは2019年3月の『MTV LIVE PREMIUM: 日向坂46 -1st Story-』以降、MCに挑戦した音楽アワード『MTV VMAJ 2019 -THE LIVE-』(同年9月)、ライブ&トーク番組『Storytellers』(2020年12月)などで一緒になる機会も多かったですが、そんな中で花ちゃんズとして単独パフォーマンスを披露できる機会をもらえたことを最初はどう思いましたか?

松田:急に2人が呼び出されて「なんなんだろう?」という感じだったんです。まだ花ちゃんズとしての認識もあまりなかったのに、まさかの2人でのステージということで、めちゃくちゃびっくりしましたね。

富田:私は本当に、ここらへん(こめかみあたり)まで涙が出かかって。

松田:出てはいないんだ(笑)。

富田:びっくりしちゃって(笑)。2人だけでステージに立つ機会をいただけるなんて思ってもみなかったので、純粋にうれしかったです。

ーー坂道グループのメンバーが個人やユニットで、MTVでライブをするのは乃木坂46の生田絵梨花さんが『MTV Unplugged』(2017年12月)に出演して以来ですよね。

戸田裕介(以下、戸田):そうですね。

ーーその理由を戸田さんにお聞きしたいんですが、そもそも花ちゃんズをどういうきっかけで知り、なぜ単独での番組出演をオファーしたんですか?

戸田:先ほどお話があったように、日向坂46の皆さんとは2019年にご一緒する機会が多かったんですが、『MTV VMAJ 2019 -THE LIVE-』が終わったあとは次の予定がなかったので、また日向坂46さんと何かお仕事をご一緒できる企画を考えたいなと思っていたんです。そんな中で2019年12月の『ひなくり2019』にお邪魔させていただいたとき、おふたりが「まさか 偶然…」をパフォーマンスするのを拝見して、「この2人で何かやりたいな」と率直に思ったんですね。

ーー当初は2020年3月にイベント開催予定だったので、そこからすぐにオファーしたと。

戸田:『ひなくり2019』が終わった後にご相談しました。おふたりがこの話を聞いたのは2020年2月の頭ぐらいだったんじゃないですか?

富田・松田:はい。

戸田:それで3月にライブを予定していたので、今考えるとよくこんなタイトなスケジュールでやろうとしていたなと思うんですけど(苦笑)。でも、この2人にすごく可能性を感じて、いい作品ができるんじゃないかと思ったんです。

ーー昨年3月に予定していたイベントはユニット名にちなんで87名限定の有観客ライブを行い、それをMTVで放送するはずでした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が影響して開催延期に。その後もいろいろあり、最終的に今年6月に無観客でのライブが無事放送されました。この1年の間に、ライブに向けた課題も見つかったんじゃないでしょうか?

松田:そうですね。高校生のときに軽音楽部に入ってから始めたギターですけど、遊び感覚でやっていたものが今はお仕事としてお客さんに聴いていただく立場になり、自分ではもっとできると思っていたけど、練習を始めてみたら全然できないじゃないかということがたくさん見つかったんです。軽音楽部のときはギターだけ弾いていたけど、さらに弾きながら歌うとなると両方中途半端になってしまって。ミュージシャンの方って本当にすごいんだなと尊敬の気持ちが増しました。

富田:私は変なところで自信がなくて、変なところでプライドが高いのが自分の短所であり長所であると思っていて。歌うことはすごく好きで、皆さんの前でたくさん歌いたいなと思うんですけど、いざリハーサルをしてステージに立つとなると自分のすべてに自信が持てなくなってしまうことが多いんです。アイドルとしてはあまりよくないと思うんですけど、リハーサルのほうが自分は輝けていると思うことが初期から多くて、お客さんの前に立つことってこんなに大変なんだと感じますし、理想が高すぎるのかなと思うところもありまして(苦笑)。そういった意味で「自分にしかできないことはなんだろう?」と模索して、ステイホーム期間に日向坂46のメッセージアプリでギターやベース、ピアノに軽く触れて、いろんな楽器に挑戦することで自分に自信をつけようと頑張りました。

ーー戸田さんから見て、おふたりのそういう変化や成長はどう映りますか?

戸田:初期のリハーサル映像をこの機会に見返したんですけど、やっぱり2020年2月頃は自信なさげな感じで演奏していましたね。ミスしたらすぐに顔に出てしまう、みたいな。

富田:そうですね。

戸田:でも、そこから1年以上経過して、歌も演奏もこんなにも成長するんだなと思いました。もちろん、本人的にまだまだ課題はあるはずなんですけど。

松田:努力不足はすごく感じます。

戸田:でも、このタイミングで収録できたことは、これから成長する過程がちゃんと見せられると思うのですごくよかったなと感じています。伸ばしていけるところは山ほどあると思うので、最初の一歩としてはよかったんじゃないかな。

ーーあの荒削り感は、この先出せないであろう魅力だと思いますし、本当にこのタイミングだからこその良さだと思いますよ。

富田・松田:ありがとうございます!

ーー当初は弓木英梨乃さんとご一緒する予定もあり、何度か練習もしたそうですね。

松田:「若者のすべて」(※フジファブリックのカバー)を一緒にやらせていただく予定で、それにあわせてギターの技術やアレンジの仕方を学ばせていただきました。

富田:でも、レベルがまったく違いすぎて圧倒されてばかりで。

松田:参考どころじゃなかったです。

富田:こんなにすごいプロの方に教えていただくなんて恐れ多いですし、「この子たち、全然できないな」と思われないかなと心配だったんですけど、弓木さんは本当に優しくて。初めてお会いした瞬間から、そんな心配が吹き飛ぶくらい優しく教えてくださったんです。今回ご一緒できなかったのは残念ですけど、またいつかご一緒させていただける機会があったらな、と思うくらい素敵な方でした。

松田:私も、活躍されている方は内面まで美しいんだなと実感しました。相手を緊張させないように安心感をすごく与えてくださって、本当に楽しくご一緒させていただいていたなという思い出があります。

戸田:富田さんは、ギターの弦について教えてもらってませんでした?

富田:あ、そうです。錆びにくい弦を教えてもらって。私、ギターの弦をすぐに錆びさせてしまうんですよ(笑)。なので、錆びにくい弦を教えていただいて、ステイホーム期間はずっとその弦で練習していました。

ーーセットリストの選定、2人だけでやるからこそのアレンジなど、そういうことを考えるのも大変だったのかなと思います。

富田:「若者のすべて」は原曲とまったく違うキーでやらせていただいたんですけど、そもそも原曲キーで歌うと私たちにはちょっと低いんだよね。

松田:そう。

富田:なので、どのぐらいのキーで歌うかを考えたときに、印象がガラッと変わるほうが私たちらしくできるんじゃないかなと。私の母にも「『若者のすべて』、良かった」と言ってもらえたので、カバーをするときは雰囲気をガラッと変えることも大切なんだと知れたのは、勉強になりましたね。

ーー特に原曲を歌っている方の印象が強いと、そこでどう違った形を見せるかが鍵になりますよね。

松田:そうですね。カバー曲と合わせて、日向坂46の曲もたくさん披露したんですが、普段は大勢でダンスしながらパフォーマンスする曲ですし、2人だけとなると声量も小さくなり、ギターアレンジで雰囲気もかなり変わるので、そういう意味では普段の日向坂46のライブとは印象がガラッと変わって楽しんでいただけたのかなと思います。あと、2人なので普段と違う歌割りで歌ってみたり、そういう遊びも入れられました。

富田:歌い出しをどっちが歌うかで迷ったんです。歌い出しってその曲の雰囲気作りをする上でかなり重要なので、「こうしたほうがいいね」とかお互い意見を言うことも多かったと思います。それに、普段は踊りながら歌っていると、どうしても表情とダンスに気持ちを込めようとすることが多いので、ちゃんと歌に集中して言葉の一つひとつやメロディに気持ちを乗せることが難しくて。そこも含め、「日向坂46にはこんなに素敵な曲がたくさんあるんだよ」ということを音楽として伝えられる機会が得られて、本当にうれしかったです。

関連記事