BTS、『Memories of 2020』で振り返る“飛躍の年” 失敗や後悔にもとことん向き合い、SUGAの不在を乗り越えた1年に

高い完成度とアイデアを取り入れる柔軟性

 さらにインタビューだけでなく、パフォーマンスに関しても彼らはいつだって試行錯誤を繰り返す。リハーサルから立ち位置やカウントの取り方にズレがないように入念に準備をし、撮影や収録後には、すぐにモニタリングでチェック。氷点下の野外ステージであっても納得がいくまで、撮り直すことをいとわない。またBTSは「振り付けチーム長」と呼ばれるJ-HOPEがその名の通り、ダンスの面でグループをリードする。『BANG BANG CON The Live』のメイキングフィルム(ディスク2)では、彼がライブの準備を進めていく頼もしい姿も見てとれる。

 一方で、各ステージに合わせてアレンジを加えていく際には、JIMINも積極的にアイデアを出していく。『2020 Billboard Music Awards』で「Dynamite」を披露する際、JUNG KOOKが登場するオープニングをジャズのアレンジに合わせて華やかな動きをプラスするようにアドバイス。モニタリングしたJ-HOPEはすぐさまその振り付けに反応し「最初カッコよかったよ! たくさん準備したね」とJUNG KOOKとJIMINの双方を褒める。その喜びを糧に、また彼らはより良いパフォーマンスを目指してアイデアを出し合っていくに違いない。

 そして、2020年の後半といえばSUGAが肩の治療のために活動を休止していたタイミングでもあった。SUGAのいない立ち位置をそのままに披露したり、カメラの前に並ぶときにはSUGAの写真パネルを携えたりと、常に彼の存在を機にかけながら活動を続け、寂しいながらも7人の絆を深めた時期。『2020 MAMA』で6冠を達成したときには、「SUGAさんがいないから(7冠じゃなかった)」なんて冗談を笑い合う。また、JIMINのアイデアでSUGAに電話をつなぎスピーチをするという展開もあった。同じ場所にいなくてもSUGAと心を一つにしたスピーチは、「どんなに離れていても私たちはつながっている」と訴え続けてきた2020年の彼らの活動に、これ以上ないほどの共鳴を見せ、大きな感動を呼んだ。

コツコツと積み上げたものが2020年を飛躍の年に

 こうして振り返ってみると、一つひとつ着実に積み重ねられた結果が、今のBTSなのだということに気付かされる。はじまりは、控え室のちょっとした声かけかもしれない。でも、常にコミュニケーションを取るベースがあることで、パフォーマンスについて気になることがあればすぐに指摘できる関係性を築けた。仮に誰かが失敗して自信を失ったときには、みんなで笑えるところまで向き合える空気が生まれた。そしてうまくいったときには、盛大に褒めて伸ばすことでよりよいアイデアが発信しやすい風土になった。もし誰かが休まなければならないときにも、常につながっていると思える愛情が育まれていった。

 対面ライブができないこと、直接ARMYと触れ合うことができないこと。彼らにとって厳しい局面が続いた2020年は、むしろBTSがこれまで培ってきた確かなものがしっかりと目に見えた形になったタイミングと言えそうだ。舞台の表も裏も、どんな姿でも魅せられる彼らの強さは、まだまだ混乱の続く2021年にもしっかりと見てとれる。願わくば、1日も早くARMYの大歓声をダイレクトに浴びながらパフォーマンスし、その喜びを語らう彼らが見られるように。今この瞬間も撮りためられているであろう次回作『BTS Memories of 2021』を楽しみに、この危機をBTSと共に乗り越えていきたい。

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