森七菜、歌手デビュー後の1年で変化した“表現への向き合い方” 憧れだったAyaseとの共演についても語る

森七菜、表現への向き合い方の変化

 森七菜がおよそ1年ぶりとなる新曲「深海」を配信リリースした。「決まったときは夢かと思うほど嬉しかった」という、YOASOBIのコンポーザーとしても活動するAyaseプロデュースによる楽曲。〈君は覚えてますか〉とそっと語りかけることで、聴き手一人ひとりにとっての“大切な風景”を思い起こさせるような、優しい仕上がりの1曲になっている。MVも含めて、自然体な森の魅力が詰まっている作品だが、その裏にはシンガーとして少しずつ成長を重ねてきたことによる自信も感じ取れた。さまざまな環境変化の中で向き合った「深海」の制作、そこに込めた想い、シンガーとしての現在地やこれからについて、森七菜に話を聞いた。(編集部)

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アーティストデビュー以降のさまざまな変化

ーー森さんは昨年1月にシングル『カエルノウタ』でアーティストデビューしましたが、特に同年7月に配信リリースされた「スマイル」以降状況がガラッと変わったような気がします。ご自身的にこの1年、音楽活動に対して手応えを感じることはありましたか。

森七菜(以下、森):「カエルノウタ」は映画『ラストレター』の主題歌だったので、映画と一緒に歌の感想が届くという、とても不思議な体験をしました。「スマイル」は小さなお子さんまで好きになってくれた印象があって、本当にいろんな人から反響をもらいましたし、「スマイル」という楽曲の持つ力を感じさせられた1年だったと思います。

ーー特に「スマイル」はコロナ禍でのリリースということもあり、この曲に元気づけられた方もたくさんいたと思うんです。

森:この曲を出すとき、やっぱりそういう思いが心の中にあったので、ちゃんと届いていたらすごく嬉しいです。

ーーアーティストデビュー直後と比べて、この1年ちょっとで歌との向き合い方に変化はありましたか?

森:歌えば歌うほど、気になるところがたくさん出てくるので、悩みは尽きないですね。

ーーもっとこうしたいという課題が見つかるような感じ?

森:そうです。そんな課題を少しずつでも克服できていけたらいいなと思いながら、活動を続けています。

ーーご自身で「成長できた」と感じることは何でしょう?

森:以前よりも、だんだんリラックスして歌えるようにはなってきました。

ーーそもそも、人前で歌ったりする経験はデビュー前からあったんでしょうか?

森:カラオケぐらいです。実は「カエルノウタ」を歌うことになったのも、岩井(俊二)さんとカラオケに行ったことがきっかけなんです。そこで(森田童子の)「ぼくたちの失敗」を歌って、「私の歌、周りからは賛否両論なんです」と言ったら岩井さんが「いやいや、賛だよ賛!」と言ってくださって。そこで私の声を知ったことで大人たちが話し合いを始めて、「(映画主題歌を)歌ってくれる?」ということになって。まさかカラオケからそんなことになるとはと思いもしませんでした(笑)。

森七菜 カエルノウタ Music Video

ーーそうだったんですね。カラオケから始まり、今では音楽番組で歌う機会も増えました。そういう環境の変化に驚くことは?

森:ありますね。スチール撮影以外ではカメラ目線をすることも滅多になかったので、歌ってるときにカメラ目線をするのはなかなか慣れないですけど、いつまでも恥ずかしがっていてはいけないなって(笑)。そこは経験を重ねるにつれ頑張らないといけないところかなと思っています。

ーー特にテレビでは「スマイル」を歌う機会が多かったですが、この曲に関して解釈が変化していると感じることはありますか。

森:最初はいろいろと気負っていたんですけど、「本当にこの曲を伝えたいなと思ったときに、誰が歌っていると一番伝わるのかな?」と考えてみると……こんなことを言ったら「プロとしてどうなの?」と言われるかもしれませんが、親戚の子どもがカラオケで歌っている感じで見てもらえて、それで元気を届けることが私に今できることなのかなと気づいたんです。そういう思いで歌うようになってからは、お母さんがテレビを観たときに「カラオケみたいだったけども、可愛かったよ? 元気が出たよ」と言ってくれたので、「これでいいんだ!」と確信を持つことができて。皆さんもそういう気持ちで、気楽に楽しんでくれたらと思います。

ーーその親近感みたいなものが「スマイル」と森さんのパフォーマンスの醍醐味であり、ここまで皆さんに愛される理由なのかなと思いますよ。

森:よかった。そう言っていただけてホッとしました(笑)。

森七菜 スマイル Music Video

「Ayaseさんとご一緒したいと話していたら夢が叶った」

ーー話題が少し脱線しますが、森さんは日常生活でどのように音楽に触れていますか?

森:浅く広く聴いています。特定のアーティストさんの曲を全部聴くということはなかなかなくて、メジャーな曲でもマイナーな曲でも自分が気に入ったものを何曲かずつ聴いているぐらいなんですけど、そんな中でも全曲追いかけていたのがYOASOBIさんだったので、今回Ayaseさんとご一緒させていただけると決まったときは夢かと思うほど嬉しかったです。

ーーそうだったんですね。

森:YOASOBIさんに限らず、ハマった曲はのめり込んで、ずっとリピートして聴いています。ただ、YOASOBIさんの場合はそういう曲がたくさん存在していて、「この曲好き」「あ、この曲も好き」というのが続いた結果、「ああ、私ってYOASOBIさんが好きなんだ」と気づいたんです。

ーー例えば歌詞であったりメロディであったり、どういうところが引っかかったんですか?

森:全部です。メロディも歌詞も、ikuraさんの声も全部が完璧すぎて、このおふたりが出会っていない世界線があったら怖いなと思うくらい(笑)。Ayaseさんが書く歌詞とメロディは今まで聴いたことがないような複雑さなんですけど、そこにはまったく攻撃性が感じられなくて、自分の心にスッと入ってくるんですよね。それがikuraさんの壮大で繊細な歌声で表現されて……それって本当にすごいことですよね。

ーー今回の新曲「深海」の楽曲制作&プロデュースをAyaseさんにオファーしたのは、森さんの意向だったんですね?

森:そうです。「Ayaseさんとご一緒したいです!」と私がスタッフさんにお話をしていて、それで夢が叶ったんです! 正直、Ayaseさんが綴った言葉とメロディを歌えたら、それだけでよかったんですけど、最初のミーティングでAyaseさんが「最近どういうことを考えていますか?」「どういう歌詞を書いてほしいというリクエストはありますか?」と私に聞いてくださって。こういうご時世になってから時間も経ちますので、今みんなが薄く長く思っていることをひと集めにして、ちゃんと共有できるような歌にできたらいいなと思って、そういうテーマでAyaseさんにお話しました。自分の中でどうにももどかしくて悲しくて、なかなか向き合えない気持ちだったんですけど、Ayaseさんならどうにか歌にしてくれるんじゃないか、形にしてくれるんじゃないかと、神頼みのような勢いでお願いしてしまったんです。なので、すごく簡単な言葉に聞こえるかもしれないですけど、出来上がった曲を聴いたときは本当に感動しました。自分の思いをここまで美しく広げてくださって、未来に希望を持ちながらちゃんと向き合えるような形にしてくれたから、聴いてくれる皆さんも一緒に、この「深海」に集まれるんじゃないかなと思いました。

ーーなるほど。そう考えると、「深海」って森さんにとっては本当に贅沢な1曲ですよね。

森:本当にそうなんです。今でも「どうしてAyaseさんが私に書いてくれることになったんだろう?」と不思議に思うぐらいなので、一生の宝物だなと思っています。

ーー森さんにとっての宝物であると同時に、これから耳にするリスナーさんにとっても心の拠りどころのような曲になるんじゃないかなという気もしています。

森:嬉しいですね。自分の気持ちを込めた曲ではあるんですけど、自分のために作った曲ではなくて、聴いている誰かや、その先にいる会えない誰かのために作りたい、一緒に集まれる場所にしたいと思っていたので、皆さんがこの曲に共感してくれたら最高ですね。

ーー「深海」という言葉は受け取り方によっては、ちょっと暗い闇のようなヘヴィさも感じられるじゃないですか。その一方で、どこまでも果てしない広大さも見つけられる。このワードはどこから出てきたものなんですか?

森:Ayaseさんから出てきた言葉で、私も最初に聞いていろんな意味を考えました。近くも遠くもあって、手を差し伸べてあげたいのに何もしてあげられない、本当に深海にいて沈んでいるような気分も表していますし。私は自分に聞こえるか聞こえないかぐらいの小さなノイズがずっと耳に響いているような感覚で、それをひとつの深海にまとめて、「そこでみんなと共有していけたらいいじゃない?」という想像もしました。二文字だけどすごく含みのある言葉ですし、さすがAyaseさんだなと思います。歌詞とのマッチング含めてすごくおしゃれですし、そこも素敵です。

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