エド・シーランも注目する若手シンガー、メイジー・ピーターズとは何者か? 多彩な声色と表情で魅了する“実力派の新世代”

メイジー・ピーターズ、多彩な声色と表情

 また、かなりハイペースで作り続けていることも驚くが、さらに度肝を抜かれるのは、どの楽曲もクオリティが非常に高いこと。そして音楽性が幅広く、同じような曲調の楽曲が皆無だということ。とどめはボーカル=声音の多彩さだ。クリアで透明感のある声、少しかすれたフォーキーな声、ポップス然とした張りのあるブライトな声、フレーズ終わりの子音に見られるキュートで人懐っこい少女のような声(ちょっとはしゃいでる印象を受け、可愛らしい)……と、一つひとつ挙げていったら本当にきりがないほど豊富なのである。

 個人的な感想になるが、彼女の楽曲を聴いていると、カレン・カーペンター(Carpenters)、フィオナ・アップル、セリーヌ・ディオン、テイラー・スウィフトなど、多くの歌姫たちが脳裏に浮かび、消えてはまた浮かぶ。そんな中でも、フレーズ最後の一音で、個性をしっかり残すあたりがお見事だ。さらに無理にロングトーンで声を張ったりしないこと、ファルセットのさりげなさ、滑舌の良さ、リズムやピッチの安定感、ふわっと置くように声をメロディに乗せる手法、そこから発生する独特のゆらぎなどから、ずっと聴いていられる歌声でもある。ピュアなメロディも魅力だが、次が想像できない独特な譜割りなどアグレッシブな要素もあり、フックも十分だ。音を詰め込みすぎないサウンドメイクも、前述した歌声のゆらぎとマッチしていてとても心地よい。ずっと聴いていられると書いたが、一度聴いたら、もう一度聴かずにはいられない中毒性があるのかもしれない。

Maisie Peters - Psycho (Official Video)

 ヒット中の最新曲「Psycho」についてだが、様々なリズムのループも聴きどころになっている。後半に向かってバックトラックの音数が増えていく構成や、母音を伸ばす部分はありつつもロングトーンらしいロングトーンがなく、短いフレーズを繰り返すボーカルなど、彼女の楽曲の中では音数と音符がかなり多い印象。そういう意味では新境地と言えるのではなかろうか。そして、ぜひご覧いただきたいのが、本曲のミュージックビデオである。ストーリー仕立てのビデオで、つい見入ってしまうのは、メイジー・ピーターズの存在があるからこそである。彼女のスタイルの良さ、薄氷を思わせるようなブルーアイ、サイボーグのような無表情と別の表情のコントラストなど、観る者を飽きさせない抜群の存在感を放っている。

 8月27日には「Psycho」も収録された1stアルバム『You Signed Up For This』をリリースする。日本盤には先述した「Worst of You」を含む3曲のボーナストラックも3曲収録されるとのこと。2021年、聴き逃せない作品になっていること間違いなしだ。

■配信情報
メイジ―・ピーターズ「Psycho」
2021年7月2日(金)配信開始
ダウンロード/ストリーミングはこちら

■リリース情報
メイジ―・ピーターズ『You Signed Up For This』
2021年8月27日(金)世界同時発売
日本盤価格:¥2,200(税込)
CD予約&ダウンロード/ストリーミングはこちら

<トラックリスト>
01. You Signed Up For This
02. I’m Trying (Not Friends)
03. John Hughes Movie
04. Outdoor Pool
05. Love Him I Don’t
06. Psycho
07. Boy
08. Hollow
09. Villain
10. Brooklyn
11. Elvis Song
12. Talking To Strangers
13. Volcano
14. Tough Act
<日本盤ボーナストラック> 
15. Worst Of You
16. Favourite Ex
17. Feels Like This 

メイジー・ピーターズ WMJ公式サイト:https://wmg.jp/maisie-peters/

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