泣き虫、音楽性の幅に一本の筋を通す歌声のインパクト 『東京驚異。』ツアー東京公演を観て

泣き虫『東京驚異。』レポ

泣き虫(写真=後藤壮太郎)

 現状ライブに来た人しか聴けない新曲だと紹介された「cider」は、キーボードとベースのリフが印象的な浮遊感のある曲で、サウンドのイメージ的には、次に演奏された「アルコール。」と近い印象だ。さらにそこから「ケロケ論リー。」と続けたこのブロックではバンドが曲間を繋げることで3曲を一気に聴かせる構成。また、この頃にはライブ中盤に入っていて、演者・観客ともに少しずつ解れてきたのだろう。泣き虫の歌はより立体的になり、観客は、リズムに合わせて手を大きく振ったり手拍子をしたりと、全身でライブを楽しむようになっていった。青空の下で自転車を漕ぐ女子学生の映像も爽やかな「心配性。」、牙を剥き出しにした「Shake It Now.」、そして「君以外害。」と、クライマックスに向かって畳み掛ける展開の中で思ったのは、泣き虫のボーカルスタイルはある種ラップに近いのでは、ということ、歌詞にある独創的な押韻を発語した瞬間、リズムが生まれる。そのリズムが、泣き虫の歌のグルーヴをどんどん加速させていく。特に弾き語りの時にはそういった歌の在り方が分かりやすく伝わってきたのだが、そのグルーヴをバンドとも共有できれば、ライブの快楽度がもっと増していくように思う。ラストに向かう3曲は、その片鱗を伺わせるようなものだった。

 本編は「Hello/Hello」で終了。止まない拍手に応えてのアンコールでは、「いやー、ありがとうございます」と正座して頭を下げたかと思えば、そのまま床に散ったピックを回収するマイペースぶり。そしてステージ上に座って、地元の海で作ったという曲「21g」を弾き語りで披露した。コール&レスポンスに代わってハンド&レスポンス(=泣き虫が歌ったフレーズと同じリズムで観客が手拍子をする)を行った「カエル。」での観客の上々な反応に、「次はもっと(リズムを)複雑にしておきますので」と泣き虫。初期曲をリアレンジした「寝れない電話のうた。」では「(歌詞)飛んじゃったー!」と悔しそうにしていたが、熱量マックスのバンドサウンドとともに駆け抜けながら、今ツアーで得た手応えを実感していたことだろう。次へ繫がる可能性を観る者に感じさせたライブだった。

■セットリスト
1.大迷惑星。
2.くしゃくしゃ。
3.トーキョーワンダー。
4.からくりドール。
5.207号室。(弾き語り)
6.cider(新曲)
7.アルコール。
8.ケロケ論リー。
9.心配性。
10.Shake It Now.
11.君以外害。
12.Hello/Hello

En1.21g
En2.カエル。
En3.寝れない電話のうた。

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