KREVAが語る、気迫のビルボードライブツアーで掴んだ確信 “全力の表現”だからこそ伝えられる非日常

KREVA、気迫のビルボードライブで掴んだ確信

「今に集中して新しく上書きしていくしかない」

ーー「変えられるのは未来だけ」は、どういうタイミングで書いた曲なんですか?

KREVA:これは自粛期間中に曲をいっぱい作ってる中でできた1曲ですね。シングルになるとか考えずに作っていたので、スタッフに選んでもらった感じです。

ーーこの曲のモチーフ、背景としては、どういうものがあったんでしょう?

KREVA:家にいる時間が長くなって、意識的に本を読むようにしていたんです。自己啓発本とか、ライフハックものとか、禅の話とか、山本耀司の本とか、なんでも読んでいった。そうしたら、過去のことを引きずっていてもしょうがない、未来しか変えられないということを、言葉は違えどいろんなところで言ってるんですよ。だから自分も「本当にそうだな、変えられるのは未来だけだな」と思って、それを言葉にした曲ですね。あと背景としては、自分って朝起きた瞬間に「あの時ああいうことしちゃったけど、どうだったんだろうな……」みたいなことを1時間くらいうだうだ考えちゃうタイプなんですよ。

ーー僕もリアルに共感します。自分の場合は「あのとき取材で言った一言は余計だったな」とか、そういうことを思い出したり。

KREVA:ですよね。でも、それって全く無駄だなって。特に朝だったら、起きちゃって、動いたらそれでいい。常に一つひとつ積み重ねて未来を変えていくしかできないんだから、今に集中して、新しくやることで上書きしていくしかない。そういうことを歌詞にした曲です。

ーー歌詞に〈パーテーション〉とか〈SSD〉みたいな言葉が出てくるのもKREVAさんらしいなと思います。

KREVA:今って、いろんなことがコンピューター頼みになってくるわけじゃないですか。でも、クラッシュしてデータがなくなったりもするんですよ。実際、何曲かダメになったこともあって。自分はこんなに過去を引きずっているのに、デジタルだと瞬間でゼロになるんですよね。「俺もSSDみたいに、昔の引っかかってる部分を消せちゃえばいいのに」って思って書きました。

ーー過去に対して向き合うことから曲のイメージが膨らんでいったんですね。

KREVA:あと、自分の歌詞に〈未来〉ってよく出てくるなと思ってたんです。たくさん曲を作っていく中で、前と同じことを言ってると思うことがあって。だから、逆にそれを積極的に使っていこうとしてました。「前の曲と言ってること同じだな」って歌詞があったら、じゃあむしろ違う角度からそれを言っていこうというマインドで。過去の自分を振り返って引っかかるところもあったんだけど、新しく上書きするしかないなと。

“見えないハードル”を必死で越えていく感動

ーーお話を聞いていると、ライブにせよ、新曲にせよ、メッセージ性ということにとても意識的になっているように思います。

KREVA:伝えることの大切さに気付いたというのはあるかもしれないです。歌詞もそうだけど、以前MIYAVIと取材を受けたときに気付いたことがあって。というのも、MIYAVIは英語で歌ったりするし、そうなると歌詞のメッセージも直接届かないかもしれないけれど、彼はライブのMCで「これはこういう曲で、こういう気持ちがあって……」ということをちゃんと言ってから曲をやったりするんです。今はそういう風にちゃんと伝えられる人じゃないといけないなという気持ちは強く持っていたのかもしれない。ミュージシャンだから、「音の一部になりたい」「歌詞とか関係なくいい曲だなって思わせたい」と思う時もあるんですけど、今はそういう気持ちはあんまりないですね。

ーー数年前には「言いたいことがない」という辛さを抱えていた時期もあったわけじゃないですか。例えば「健康」を作っていた頃はそういう話をしていたと思うんです。でも、そのときのモードと今は変わってきていると。

KREVA:そうですね。でも不思議なのは、「健康」なんて作ったビートを聴いてノリで出てきた言葉なんだけど、あれが真理すぎて(笑)。

ーーそうですよね(笑)。

KREVA:〈結局やっぱり最後は健康〉って歌ってるんだけど、すべての話が、最後は健康についての話になっちゃう。そういう強さというか怖さもあるなと思って。今回も、選曲会議のときにメンバーから「『健康』を今やったらいいんじゃないか」って言われて。たしかにと思ったんだけど、「そうじゃないな。俺が伝えたいのはそっちじゃないな」って。必死でもがいてるような様子を見てもらいたいライブだったから。

ーーなるほど。僕がライブを観て思ったことと、今話していただいたことがすごく合致したところがあるんです。というのも、音楽でもスポーツでも同じところがあると思うんですけど、人のパフォーマンスを観て「感動した」とか「勇気づけられた」ってよく言うじゃないですか。それって結局のところ、その人が自分で設けたハードルをめちゃめちゃ頑張ってクリアしていくのを観た時に感じることだと思うんです。

KREVA:まさに! それは自分も思ってた。誰も見えないハードルを必死で越えようとしている時に、感動が生まれるなって思ってたんですよ。例えば、サッカーだとボールに届かなさそうな時でも全力で追っていたり、フルタイムを走りきってやろうとしているところにグッとくるなと思って。その感じは出そうと思いましたね。水を飲んじゃいけないとか、曲を止めちゃいけないとか、全曲心に響く言葉を放たないといけないとか、誰に言われたわけでもないんだけど、そういう方へと向かっていきました。

ーー他にも、スポーツにおける「どれだけ遠くまでヤリを投げられるか」とか、そういう競技ルールだって原理的に考えてしまえば勝手に設けたハードルなわけですからね。

KREVA:たしかに。ガチガチのレギュレーションでね。

ーー合理的に物事を考えたらやらなくていいことをやる、しかもやるからには全力で、本気でやる。そこに感動が生まれる。感動と非合理性って隣り合ってるんだなと思ったんです。

KREVA:そうですね。やっぱり求められるのは非日常だと思うんです。だとすると「なんであんなに頑張るの?」っていうところから非日常が見えてくる。それを感じてもらえた気がしますね。

ーー最後にもうひとつ、現時点でこの先に向けてどんなイメージやビジョンがありますか。

KREVA:そうだなあ……ある時点から、先のビジョンは描かないようにしていて。「KILA KILA ~2019 Ver.~」でも〈無くたっていい 抱負〉と歌っているけど、そういうものはなくていいかなって思います。とにかく毎日音楽に触れて、何にどう使うかはわからなくても、とにかく音楽を作り続ける。それだけはやろうかなと思ってますね。

※ライブ写真は『KREVA in Billboard Live Tour 2021』7月1日公演 1stステージ@Billboard Live TOKYOの模様。

KREVA「変えられるのは未来だけ」

■リリース情報
KREVA「変えられるのは未来だけ」
2021年6月2日(水)リリース 配信はこちら

■セットリスト
『KREVA in Billboard Live Tour 2021』
2021年7月1日(木)Billboard Live TOKYO 1stステージ
プレイリストはこちら

01. Finally
02. 人生
03. One feat. SONOMI
04. ひとりじゃないのよ feat. SONOMI
05. Fall in Love Again
06. アグレッシ部 ~2019 Ver.~
07. 音色 ~2019 Ver.~
08. KILA KILA 〜2019 Ver.〜
09. イッサイガッサイ ~2019 Ver.~
10. タンポポ feat. ZORN
11. 変えられるのは未来だけ 
12. トランキライザー ~2019 Ver.~
13. C'mon Let's go ~2019 Ver.~
14. Revolution
15. 居場所 ~2019 Ver.~

■INFORMATION
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