超特急、『コント×超特急』第二弾でパワーアップした笑い 誠実に向き合い成長していくエンターテインメント

超特急、パワーアップした笑い

 7月26日と27日、超特急がフジテレビのコント制作チームとタッグを組んで作り上げる『コント×超特急』の第2回が開催された。4月に行われた初回公演はオンラインのみだったが、今回はヒューリックホール東京に観客を入れてのリアルライブ形式(※2日目はオンラインでも配信)。今回はその2日目の模様をお届けする。

 『コント×超特急 其ノ弐 ~初キス大作戦~』と名付けられた今回。前回よりも一場面一場面の尺が長く、笑いがベースとはいえ聞かせるセリフも多かったからだと思うが、全体の印象としては、瞬発力重視のコントライブというより笑いが多めの舞台を見ているような感覚だった。この『コント×超特急』にかける意気込みを聞いた先日のインタビューで、あがり症でなかなか台詞が覚えられないというユーキが「役者として目覚めるかもしれない」と半ば自虐的に抱負を語っていたが、今回5人に課せられた演技"量"は確かにかなりのものだったと思う。

 オープニングは、前回同様チャラい男を絵に描いたような3人組――リョウガ、ユーキ、カイが喫茶店で延々と実のない会話を繰り広げるシーンから。待ち合わせに遅れているタカシはこれから『五等分の花婿』という映画を観に行くことにしたらしく、ダジャレを重ねまくってボケ倒した3人もほどよきところで映画館へ。そうして舞台は映画の内容へとスライドし、リョウガ扮するYouTuber育成家庭教師"下柳雨太郎"と現役YouTuberである五つ子の物語が始まった。

 五つ子が所属する事務所から半年でチャンネル登録者数を10万人にするよう依頼されて上野家にやってきた、元YouTuberの雨太郎。炎上商法で再生数を稼いでいたという当時の雨太郎を知る二郎(タクヤ)は全く心を開こうとしないが、責任感強めの一郎(タカシ)、1人だけ訛っている三郎(カイ)、乙女キャラの四郎(ユーキ)は「損するわけじゃないし」と雨太郎を受け入れていく。5人は「全力〇〇」や「爆速動画」といったテーマで動画を撮りながらあの手この手で再生数を伸ばすためのトライを続けるのだが、ステージ上で回しているカメラの映像をそのまま見せるようなシーンもあり、視覚的にドキッとするような演出がなされていたのも面白かった。また前回のコントで見せた"粟くん"と"布ちゃん"同様、合間合間で繰り広げられるリョウガとタクヤのやりとりは時折コントであることを忘れてしまうほどのアツさでやはり目が離せない。この2人が打ち解ける日は来るのか、そもそも10万人は突破するのか、そしていまだ顔を見せない引きこもりの五郎って一体……? あまりにも自然な形でストーリーに引き込まれつつ、<ムーンウォークするコウメ太夫>や<爆速のジョイマン>など、芸であり技のようなクオリティの笑いを次々と披露する五つ子には圧倒されっぱなし。

 一郎が唯一自分でいられる場所だというものまねパブのシーンでは、客席からの拍手や笑い声が引き出したアドリブも多かったのではないだろうか。雨太郎と二郎が渋谷で街頭インタビューをするシーンでは、通りがかった個性的すぎる3人ーーユーキ、カイ、タカシがいかに2人を笑わせるかというミッションを裏テーマとして掲げているようにも感じられ、前回の競馬場でのシーン同様、どこまでが台本でどこからがアドリブなのかわからないからこその面白さが生まれているようにも感じられた。

 随所で繰り広げられる4人の自由なボケに細かくツッコミを入れていたリョウガの対応力も素晴らしかったが、そのリョウガ演じる雨太郎もまた、兄弟を取り巻くあらゆる状況において、決して見放さず、親身になって的確なアドバイスをし続けていて、結果的には4人からの信頼を意外な形で受け取ることになっていくーー。「好きだ」という気持ちを自覚した4人は二郎の提案で雨太郎のどこが好きかを挙げていくことにしたのだが、蓋を開けてみればリョウガ自身にまつわる話ばかり。8号車(ファン)の前に出る時だけグッチの香水をつけることや、自分の意志では髪を切らず「おまかせ」ばかりで時にメイクさんまで困らせていることなど、メンバー愛あっての暴露に会場は大いに沸いていた。

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