4s4ki、新世代アーティストが考える“ポップ”とは? 多様な表現によるアウトプットの源泉にも迫る

4s4kiが考える“ポップ”

絶対に視野を狭めちゃいけない

――今作ではハイパーポップからトラップ、チップチューンやロックまで非常に幅広い音楽性へと拡大していますが、これまで4s4kiさんがリスナーとして聴いてきたものが反映された結果なのでしょうか。

4s4ki:それもありますね。でもこういうジャンルをやろうっていうのは意識することはあまりなくて、全てが感覚です。初期から聴いてると(音楽性も)随分変わってきていると思うし、私も自分が変わっていくことが楽しみですね。全く予想できないから。そんな中でも、自分の素材を活かしながらも、誰もやってないだろうということを模索するのは好きです。先ほどの自分の声と低音域との相性という話もそうですけど、自分の素材が活きながらそれが独自のものになっているっていうのをやっていきたいです。

――「誰もやってないだろう」というポイントは、やはり今だと4s4kiさんのトレードマークでもあるような、過剰に音を割れさせる、重ねる、といったカオティックな音作りの手法に見出しているのでしょうか。

4s4ki:そうですね。私、DTMとかも独学なので、恐らく人に説明できないようなめちゃくちゃなやり方をしてると思うんですよ。誰かに「トラックメイク教えて」って言われて教えても「ちょっと言ってること分かんない」って言われるくらい。それがそのまま曲に出ている感じですね。本当はここまでキックの音を上げちゃいけないのにあえて音を上げて割れさせるとかはよくやりますね。割れてる音っぽいのを選ぶというよりは、もう原始的に音を上げて割れさせるっていう(笑)。何かの理論に沿ってやるとかは苦手なので、自分のやり方でやっていった結果オリジナリティのある楽曲になっているのかなって思います。

――4s4kiさんと言えば、アートワークやMV等のクリエイティブでも独自の世界観を表現されていますよね。それらは、音楽の具現化としてあるのでしょうか? 音楽以外の表現の制作背景を教えてください。

4s4ki:まず言えるのは、私の周りのスタッフが皆狂ってるんですよね(笑)。それをベースに聞いてほしいんですけど。私の曲や私の発想をメジャー(レーベル)でやるっていうのは……私がレコード会社の人だったら、「いや売れないでしょ」って思うから(笑)。だから、メジャーデビューさせてくれた周りの大人がまず狂ってるなっていうのと、あと、これ(今回のアルバム『Castle in Madness』の初回限定特殊パッケージである飛び出す絵本を指しながら)とか予算莫大じゃないですか。色々提案するんですけど、最終的に予算大丈夫ですか? って聞いたらスタッフさんは「予算見てないです」って言うんですね (笑)。表現の発想自体は、普段から「こういうのが好きで」とか雑談しつつ生まれてくるものだし、やっぱり周りの人のおかげですね。正しくいなければ、と思わなくてもいい環境にいるので、自由に色んなことを考えられます。ありがたい限りです。ただ自分のやりたいことを(表現に)詰め込んでいくという作業を毎日していて、理想の自分があるわけでもないので、いつまでもゴールにはたどり着かないんですけど常に「今やりたい自分でいよう」というのは思っていますね。誰かの二番煎じは嫌だし、とにかくやりたいことだけ詰め込んでます。

――何がその表現の源泉にあるんでしょう。これまで大切にしてきたことは何ですか?

4s4ki:視野……ですかね。絶対に視野を狭めちゃいけないなと思います。私、無理して学校行かなくていいと思うし、学校行きたい人は行けばいいと思うし……例えばバイト先という一つだけの世界で生きていたらもうそこの色になっちゃうし、その中でどうかっこよくいるかが大事だって思うんですけど。私は小さい頃から、学校では浮かないようにしようとかバイト先ではちゃんとしようとか、全く考えてこなかったです。というか、できなかったんですよね。自分の良いところであり悪いところだと思うんですけど。でも常に広いところを意識してないとそこの世界に染まっちゃうっていうのは皆あると思うので。とにかく色んな経験をして色々見て知るべきだと思います。そうやってたくさんインプットしていくことで、知らないうちに変なアウトプットができるというのはあるかもしれません。

――今回のアルバムは収録曲のMVも多く撮られていますが、どういう制作過程で出来上がったんでしょうか。

4s4ki:一緒に映像を毎回作ってくださってる及川(佑介)監督という方がいらっしゃって、彼も絵コンテを組み立てて撮影するっていうよりは、現地で「こういうの撮りたい」って感じで感覚でどんどんやっていくスタイルなんです。及川監督には常に「これやりたいあれやりたい」というのは言っているので、そこから“4s4ki引き出し”みたいなのを作ってもらってる感じですね。

――今回、及川監督には、具体的にどういった要望を伝えられたんですか?

4s4ki:「m e l t」は監督と打ち合わせをした結果、1カメ1発撮りで録ることになったんですけど、今までやったことがなかったので面白かったです。ライブしてる感覚に近くて、個人的に印象深いMVでした。「gemstone feat. Puppet」とかもそうですね。「こういうところで撮りたい」っていうのを伝えたら及川監督がロケ地を見つけてくれて。「m e l t」ではぬいぐるみを持ってるんですけど、待機時間中に近くのデパートのゲーセンでその日に取ったやつなんです(笑)。その日に生まれたシチュエーションです。及川監督も私が言ったことに対して「あ、それいいかも」ってすんなりやっちゃうんですよ(笑)。彼が「こういうのどう?」って提案してくると私も「めっちゃいい!」ってなるので、センスの共有ができているのかもしれないですね。

4s4ki - m e l t (Official Music Video)

――そういったMV撮影時の偶発性みたいなものは、曲作りにおいてもあるわけですよね。

4s4ki:むしろそれしかないですね。筋書きみたいなものって苦手で作れない。試しながら遊んでたらできました、みたいな感じで、意識的に作るっていうのはほとんどないですね。今回のアルバムだと、例えば「幸福論」「Sugar Junky」とかはまさにそういう作り方です。どんなリリックでどんな曲ができるのかよく分からない状態の中、本能だけで作ったっていう感じですね。あと「FAIRYTALE feat. Zheani」もリリックは全くこうなる予定はなかったです(笑)。もっとちゃんと強くてかっこいいワードで作っていこうとか漠然とは思ってたんですけど、おちゃらけ感が強くなりました。

4s4ki - 幸福論 (Official Music Video)
4s4ki - Sugar Junky (Official Music Video)

――あらゆるジャンルから直感で好きなものを取り込んで、それをフィーリングの合う仲間と自由にコラボレーションして作り、かつ音楽に限らず様々な表現でアウトプットしていくという部分において、やはり4s4kiさんは新世代のアーティスト、という印象があります。

4s4ki:何が新しいかとかはよく分かっていないのですが、私はやりたいことをやっているだけですね。でも褒められるのはすごく嬉しいので、「頑張ります!」って思います。今回のアルバムもいっぱい皆に褒めてほしいなって。褒められるために作ってる(笑)。

――(笑)。でも、褒められるために作ってるって言っても、先ほど「メジャーで売れるようなものではない」みたいなこともおっしゃっていたし、音楽はどんどんヘヴィにはなっていくし、広く大勢の人に対してというよりは、「特定のこういう人達には絶対に気に入ってもらえるだろう」という感覚なんですかね。

4s4ki:そうですね。それはあります。センスの共有ができる人であれば気に入ってもらえるだろうと私は思っているので。電波でつながってるんですよ、きっと。そういう人が増えていくのは嬉しいですし、ずっと4s4kiの変化っていうのは気にしていてほしいですね。「最近のこの曲好きじゃないな」っていう人も、三カ月後には「あれ、昔のに戻った!」っていうのもあるかもしれないし(笑)。めげずに見ていてください。<術ノ穴>でデビューした時からメジャーデビューする前提で活動しようって思っていたんですけど、だからと言って媚びることはしたくなかった。だから、褒められたいけど全ウケは狙ってないです。むしろ「よくこんなことしたね?」と思ってもらいたいですね。

■リリース情報
『Castle in Madness』
発売:2021年7月7日(水)
通常盤 ¥2,644(税込)
内容:CD(12曲)
初回盤 ¥4,444(税込)
内容:CD(12曲+BONUS TRACK1曲)
※特殊パッケージ仕様
DL/Streaming https://jvcmusic.lnk.to/CastleinMadness

■ライブ情報
『FUJI ROCK FESTIVAL’21』
詳細はこちら https://www.fujirockfestival.com/

4s4ki オフィシャルサイト https://4s4ki.xyz/

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