EXILE MAKIDAI連載「EXILE MUSIC HISTORY」第5回 PATO&SEVA、振り付けと演出でクリエイトする“LDHらしさ”

「EXILE MUSIC HISTORY」第5回

EXPGでアーティストを育ててきて

MAKIDAI:ところで今、GENERATIONS from EXILE TRIBEをはじめとするJr.EXILEチームは、ほぼEXPG出身じゃないですか。

SEVA:自分が担当していたときの卒業生が多いです。

MAKIDAI:EXPGの生徒の皆さんにはライブのサポートもしてもらっていますし、そこから次のアーティストが輩出されていますよね。「育っているな」という実感はあります?

SEVA:EXPGは年齢関係なく幅広い層が関われる良い場所だと思ってます。小学6年生の子が低学年の子の面倒をみたりとか、そういった人間力を育てる環境も担っている場所。それに加えてダンスでもしっかり表現できる場を準備しているし、子どもたちが育つ環境としてはすごく良いと常に思っていました。

MAKIDAI:EXPGがスタートしてから10年以上経っていて、その間にこんなにアーティストが育っていますからね。EXPGを一番、引っ張ってきたのもお二人ですから、すごい功績だと思います。リスペクトです。

SEVA:「先生の言うこと聞きなさい」とか、普通ならダンスの先生が生徒に言う言葉を、EXILEメンバーの皆が言ってくれるじゃないですか。だから、自分たちにとってもお手本となる存在がいたと言いますか、メンバーの言葉を置き換えれば生徒にも伝えやすいんです。そういうことも含めて、コミュニティのような雰囲気があるのはやりやすかったですね。

MAKIDAI:HIROさんたちが率先して雰囲気作りやチーム作りをやっていたことの影響はやはり大きいと。

PATO:あとは正直、自分の息子よりも今のTRIBEの子たちといる時間の方が圧倒的に長いんですよ。そこで苦労をともにしながら「こういうことやりたいよね」とフランクに話せる環境があったので、今振り返ってみるとすごくスペシャルなことだったのかなと思います。

MAKIDAI:ライブをしたり、レッスンをしたり、振りを付けたり、そのなかで家族といるような濃密な時間を過ごしていたんですね。EXPG出身の子も大人になったな、と感じたりします?

PATO:一緒にお酒を飲んだときに思っちゃいました(笑)。不思議な感覚ですよね。よく言うじゃないですか。息子や娘を持たれている方が、一緒に飲んで実感するって。

MAKIDAI:乾杯したときに「ああ、20歳になったんだ」みたいな。その人数もまたすごく多いですからね。

PATO:自分自身も育てられたと思うんです。インストラクターとして教えているつもりが、振り返る瞬間の言葉をもらったときに、改めて自分が教えてもらったこともあるなと思って。

SEVA:こちらが何気なく言った言葉が、すごく良い解釈をしてくれていたこともある。

MAKIDAI:それが新しい発見になったりするんですよね。「こういう角度もあるな」っていう気づきがあるのは面白い。だからひとりでは絶対できないし、コミュニケーションすることで可能性は広がっていくと思います。

SEVA:まあ、「こっちは分かっていたよ」という感じで振る舞いますけどね(笑)。

MAKIDAI:EXPG出身チームの子たちは振り付けを覚えるのが早いんですか?

PATO:めちゃくちゃ早いです。

SEVA:ライブのサポートダンサーは、当日に振り付けを修正して本番でやるってこともありますから。もちろん、そのポテンシャルがあるからこそ依頼するんですけど。

PATO:さすがに申し訳ないなって思うんですが(笑)。普段から鍛えていただいているインストラクターの皆さんにも感謝です。

MAKIDAI:高度な要求にも応えるEXPGチームやサポートチーム、本当に素晴らしいですね。

アイデアの源流とこれからのエンタテインメント

MAKIDAI:お二人が新しいアイデアとかを吸収していく上で、チェックしているエンタテインメントはありますか?

PATO:いわゆるエンタテインメントと言われているものには全部アンテナを張っています。コロナ禍になって、配信やバーチャルのライブも増えたじゃないですか。PKCZ®の『PKCZ® VR SPECIAL ChamberZ』の現場にもお邪魔させてもらったり。伸びしろのある分野だと思うので、それを気にしながらフィジカルなもので何を表現するかを考えてます。

MAKIDAI:表現方法はある意味、リアルに加えてバーチャルな世界が1個増えたと考えられますよね。

PATO:楽しみですね。たぶんこういうことなるんだろうと安易に想像できますが、それをどう表現するか、というLDHらしさを準備しておかないといけないなと。そこは気にしてます。

MAKIDAI:『PKCZ® VR SPECIAL ChamberZ』のような、VRゴーグルをはめて、そこから一気に世界が変わるのは、自分たちが子どもだった時にはなかった世界ですね。

PATO:圧倒的に違いますよね。

SEVA:VRの良さが明確になったからこそ、生のものの素晴らしさも改めて感じられるみたいなところがあります。あれは面白いですね。

MAKIDAI:「LIVE×ONLINE」もそうですよ。VRとはまた違うけれど、新たなテクノロジーを使ったライブのあり方でした。2020年は、かなり忙しかったんじゃないですか?

SEVA:「何年分のライブを作ったんだ」みたいな感じでした(笑)。「LIVE×ONLINE」は普通のライブと違って、演目1個作ってツアーを回るという形じゃなく、一発のみなので、作る本数は多かったですね。

PATO:僕たちは映像表現も好きなんです。フィジカルなライブだと、やはり全体のお客さんに伝えてなんぼで、伝わらないと意味がない。だから普段できないことを映像配信のクオリティで挑戦できたので、そういう意味では楽しかったです。

SEVA:あの時期はテレビで放送される歌番組などをめちゃくちゃ見ました。どうやって歌番組と差別化して、ライブの意味を落とし込むべきかとか、その差をどう表現するべきかとか。そこにひとつの魅力を作らなきゃいけないので、その点は難しかったですね。

MAKIDAI:映像ならではのライブ感やメリットはありましたが、その上で生のライブの良さも再認識しましたよね。

PATO:やっぱり生は良いですね。フィジカルの良さを改めて思いました。

SEVA:一連の経験を経て、考え方や価値観がアップデートされましたね。やはりフィジカルだと演じ手とお客さんの距離感が詰まって、新しい感動の空間が生まれるじゃないですか。その瞬間にいることで元気をもらったり、活力につながったりする。その価値もやっぱりすごい。

MAKIDAI:今までは意識してなかったですが、コールアンドレスポンスのレスポンスがないに等しい感じでライブを発信していくのって、すごいことだなと思いました。

PATO:『RISING SUN TO THE WORLD』でも、MAKIくんがクラウドコントロールするのを見ると、今ならではの表現だなと思ったり。ライブ全体を考える時も、演じ手のパフォーマンスしやすさもあるんですけれども、どこが客観的に見たときに喜んでもらえるかを意識するんですよ。それで、やっぱりメンバーの皆さんって、特にEXILEの世代は「良いのが出ちゃう」んですよ。

MAKIDAI:「良いの出た!」みたいな感覚、わかります。

SEVA:そう。その感覚が出やすいような環境を作りたいなと思ったりはします。凝り固まって決めずに少しルーズにしておく、みたいなのが大事で、そこにライブ感が出たりとか、来ているお客さんが楽しんでもらえる瞬間があったりするのかなと。

MAKIDAI:決め込んだことをしっかりやる、というのもエンタテインメントとしてあるけど、やっぱり「良いの出たね」というライブ感が面白いところでもあるんですよね。

PATO:そこがEXILEメンバーの一番の強みなのかなと、いまだに思いますね。個人的には、ライブで重要なのはお客さんとの距離感だと思っているんですけど、それが詰まる瞬間は観客がもう集中している瞬間じゃないですか。メンバーそれぞれにフォーカスできつつ、でも同じユニゾン感があるみたいな。

MAKIDAI:ライブなんだけど、踊りのスピリッツというか、ダンサー心と言いますか。「良いの出てた」という感覚、言い換えると「グッド・バイブス」がライブの表現にも自然に反映されていると。

PATO:そうですね。みんなの見せ場がちゃんとあるからこそ、グッド・バイブスも生まれてくるのだと思います。

SEVA:ステージで見えないところも含めて、みんなが全力になると、それはお客さんに伝わりますからね。

連載バックナンバー

第4回:アートディレクター 中代拓也、デザインに込めた“リスペクト”
第3回:DJ KIRAと語り合う、ダンサーのためのトラックメイキング
第2回:KENJI SANOと語り合う、“EXILEのキャプテン”として共に歩んだ軌跡
第1回:サウンドエンジニア D.O.I.と振り返る、EXILEサウンドの進化

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