向井太一のステージから感じられた確かな成長 『COLORLESS』ツアー東京公演レポート

向井太一『COLORLESS TOUR』東京公演レポ

向井太一

 バンドがオリエンタルなインストセッションに突入している間にステージを捌けた向井は衣装替えして再登場。フリルのデザインが羽のようなシャツなんて、なかなか似合う人はいないのでは。ハイファッションにも見えるし、ジェンダーや年齢を超えていく自由さも感じる。こうした魅力はもっと前面に出していいんじゃないかと感じた瞬間だ。後半はニュートラルに歌えるキーでドラマ性をふつふつと醸し出した「SPEECHLESS」も瞠目したが、オーディエンスが晴れやかな表情になる「YELLOW」からオーセンティックなファンクテイストのある「Answer」まで4曲をメドレーにリアレンジするなど、アルバムツアーでありつつ、ふんだんに人気曲を盛り込む意欲も見せた。全方位にいまの表現を見せるという意味で非常に効果的だった。

 感情を解放して、それゆえにふりかかかることも受け入れていく、新作にはそうした強さが通底していると思うが、ライブのクライマックスはそのことを前面に出すパフォーマンスで証明してくれた印象だ。クワイヤがSEで迫ってくる「空」はいつかみんなで声を出せるようになるまでは心で歌うしかないが、その時までの約束のようにも思える。アルバムに至るまでの気持ちの動きーーコロナ禍の中での命のありようや、心の置き方における逡巡、前作『SAVAGE』の時期は落ち込んでいた自分をファンが助けてくれたこと。その時期を過ごして自分のコンプレックスと向き合い自分のままで歌うこと。いまは聴く人を励ましたい、そこまで彼なりに強くなれたことーー彼の中に生まれた軸がそのまま曲になったような「Colorless」がするりと飲み込める流れが、セットリストを通じて醸成されていたのだ。

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 このままJ-POPの天井を打ち破ってポップスターになって欲しい。穏やかさや誠実さを希求してやまない時代、向井太一というアーティストにその役割が訪れたのではないだろうか。そんなライブ体験だった。

向井太一

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

■セットリスト
『COLORLESS TOUR 2021』
1.Love Is Life
2.Ups & Downs
3.Comin’ up
4.BABY CAKES
5.I Like It
6.FREER
7.Sorry Not Sorry
8.Bed
9.HERO
10.僕のままで
11.What You Want
12.Don’t Lie
13.悲しまない
14.眠らない街
15.SPEECHLESS

メドレー
16.YELLOW
17.Great Yard
18.ICBU
19.Answer

20.Get Loud
21.空
22.Colorless

EN1.リセット

向井太一 Official Web Site:http://taichimukai.com/

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