AKB48、乃木坂46との形勢逆転どこで起こった? 新番組は逆襲の一手となるか

 AKB48の公式ライバルとして結成された乃木坂46。当初はアイドルシーンで天下をとったAKB48へのカウンターのポジションだったが、活動内容はかつての王道アイドルの方法に近い。結成当初から地上波テレビ番組の冠番組を持っていたりと、ライブよりもメディア露出を中心とした活動で人気と知名度を集めた。専用劇場は持たないものの、選抜制や握手会などAKB48が作り出した文化を取り入れてはいる。失敗が少ない定石とAKB48が作った新しい価値観を組み合わせているのだ。身近な存在として応援し握手会などでコミュニケーションを取るファンが多いAKB48に対して、乃木坂の場合は憧れの存在に会いにいくために握手会やライブへ参加するファンが多いように感じる。

 乃木坂46合同会社代表の今野義雄氏は「洋服が似合うこと」にこだわりメンバーを選考したと2015年のインタビューで語っていた(※1)。つまり統一した美しさを重視したのだ。そのためか乃木坂46は女性ファッション誌などでモデル活動を行うメンバーが多い。乃木坂46に女性ファンが多い理由はこうしたところにもあるのだろう。

『乃木坂46写真集 乃木撮 VOL.02』
『乃木坂46写真集 乃木撮 VOL.02』

 メンバーの写真集が爆発的に売れ、社会現象的な「写真集ブーム」を作ったことも乃木坂の人気を確立した要素の一つだ。特に元メンバーである白石麻衣の写真集『パスポート』は累計50万部を超えるヒットとなったことは記憶に新しい。グループ写真集も大ヒットしている。プロのカメラマンではなくメンバー同士で撮影した写真を集めた『乃木撮』はグループ作品としては歴代1位の売り上げだ(※2)。写真集といえばアイドルの王道的な活動の一つである。その王道を極めていることも乃木坂46らしさの象徴といえるかもしれない。

 デビュー当初はAKB48との差別化を図るためにフレンチポップ路線を続けていたが4thシングル曲「制服のマネキン」以降は様々な音楽性に挑戦するようになった。そして5thシングル曲「君の名は希望」により清楚さや透明感といった、グループのイメージが固まったと感じる。そんな流れの中でリリースされた6thシングル『ガールズルール』のセンターが5作品連続で務めた生駒里奈から白石麻衣に代わり、その後のシングル曲はセンターが流動的になった。流動的なセンターの入れ替わりと写真集ブーム。それらによってグループだけでなくメンバーの知名度や一般人気もさらに加速していくことになる。そして、白石麻衣と西野七瀬がセンターを務めた「インフルエンサー」で第59回日本レコード大賞において大賞を受賞。同じく大賞候補にノミネートされていたAKB48を初めて制した(AKB48のノミネート作品は「願いごとの持ち腐れ」)。

 AKB48は斬新で風変わりなことをやり続けていくうちに、それが評価され結果的に国民的人気を得た。一方で乃木坂46はAKB48と過去の王道アイドルの良い部分を組み合わせて、戦略的な方法で国民的アイドルになった。そしていつしか人気が逆転。今では世間の思い描く国民的アイドルは乃木坂46だろう。

 しかしこの状況はAKB48がこれから面白くなることへのフラグかもしれない。もともとは王道へのカウンターが得意なグループだ。まさに彼女たちの強みが活きるタイミングではないか。王道な方法で天下を取った乃木坂46に「越されました」と自ら言ってしまうほどにはギラついている。もしかしたらこれから最も面白くなる女性アイドルグループはAKB48かもしれない。

<参考記事>
※1:https://www.mdn.co.jp/di/contents/3374/40178/
※2:https://music-book.jp/music/news/news/194374

■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。‬ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
ブログ:https://www.ongakunojouhou.com/
Twitter:https://twitter.com/houroukamome121

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