斉藤和義、“幻のセットリスト”をついに披露 観客を感動の渦に巻き込んだ中野サンプラザ公演

斉藤和義『TOUR 2020 "202020"』レポート

 ここで“換気タイム”。

 「ライブ、やっぱり楽しいね!」と笑顔で語り掛けたあと、音楽業界の現状について言及。落語協会の決断(「大衆娯楽である寄席は社会生活の維持に必要なもの」という判断のもと、都内4軒の寄席は観客を減らして営業を継続)に触れ(※4月29日には休業発表)、「賛否両論あるのはわかっているけど、感染対策をやって、音楽業界も同じように発表すればいいんじゃないかと思う」という発言に、客席からは大きな拍手が沸き上がった。この日のライブで斉藤が“コロナ禍におけるライブ”について語ったのは、このときだけ。斉藤が鍵盤を弾いた「君の顔が好きだ」、そして、名曲「歌うたいのバラッド」からは、さらにディープな音楽世界が繰り広げられた。もっとも印象的だったのは、やはりアルバム『202020』の楽曲。特に摩訶不思議なエキゾチズムを放つインスト曲「ニドヌリ」、ソウルフルなグルーヴとともに“仕事の締め切りに追われている男が、なぜかどうでもいいことを思い出してしまう”状況をポエトリーリーディング風に表現した「シャーク」、ストーンズ直系のロックロールナンバー「Room Number 999」を続けざまに演奏するシーンは圧巻だった。バンドメンバーは、おなじみの真壁陽平(Gt)、山口寛雄(Ba)と、斉藤和義のライブには初登場の平里修一(Dr)。バンドでのライブは2年半ぶりだったそうだが、4人のアンサンブルは完全に仕上がっていた。

 「ベリー ベリー ストロング 〜アイネクライネ〜」「歩いて帰ろう」というアンセム2曲で本編は終了。アンコールでは今年3月に配信された新曲「Boy」(浦沢直樹の全作画アニメーションによるMVも話題です)を披露し、凄まじい音量の拍手のなかライブはエンディングを迎えた。

 5月2日からは全国ツアー『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 202020&55 STONES』をスタート。延期、中止となった公演もあるが、このツアーでも斉藤和義は、“やれることをやって、出来る限りステージに立つ”というスタンスを貫いている。言うべきことを言い、やるべきことをやる。彼の姿勢は、エンターテインメントの関わる全ての人にとって大きなヒントになるはずだ。

斉藤和義 オフィシャルサイト

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