マキシマム ザ ホルモンの“顔面指定席ライブ”が面白すぎた 当事者全員が加担した前代未聞のステージを振り返る

ホルモン、前代未聞のライブを振り返る

 面白いので面の話が続いてしまうが、ライブ本編は比較的ストレート、現状のベスト的な選曲だ。最新盤から「maximum the hormone II ~これからの麺カタコッテリの話をしよう~」、8年前のアルバムから「中2 ザ ビーム」や「my girl」、そして初期の「ヘルシー・ボブ」があり、鉄板中の鉄板といえるおよそ15年前の「絶望ビリー」や「恋のメガラバ」がハイライトを飾る。こうして発売時期をさかのぼって驚くのは、彼らの楽曲の濃度、そこに込められたカロリーの高さが15年間まるで変わっていないことだ。ヘヴィロック、メタルコア、ポップパンク、アイドル歌謡にダンスビートなどが混沌と渦を巻くホルモンの楽曲は、一曲に過剰な念と情報量が込められていて、中身を分析していくだけでも相当体力を消耗する。演奏する側のエネルギー消費量は推して知るべしだ。

 そして、パッと聴きは呪文のような歌詞も、実はほとんどが実話と妄想から来る亮君の真実である。たとえば「maximum the hormone II」は痛風や尿酸値と闘い、痩せた亮君つまんないと嗤うファンと闘い、健康になってもなおコッテリの生き様に賭けると宣言する壮絶な闘争歌であり、何をそこまで過剰一筋にこだわるのかと不安になるくらいの覚悟が込められている。体力的に無理できないからと余剰を削ぎ落とさない。引き返せないのではなく引き返さないのだろう。やるならこのスタイルしかやりたくない。120%ではなく200%までやるホルモンでありたい。そういう覚悟の強さが亮君の表情に何度も感じられた。あるいは、そういうホルモンであってくれ! という願いが客席中に渦巻いていたのかも。ライブでの対面が本当に困難になっていた近年の彼ら。一期一会がどれほどかけがえのないものかは、会場にいた全員が理解していたはずだ。

 なお、このライブの模様は6月に有料配信されるそうで、そこにつながる演出も随所に仕込まれていた。ちゃんと企みに乗っかった腹ペコたちの結束力はいかがだったか、後日の映像でしっかり確認してみてほしい。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

マキシマム ザ ホルモンオフィシャルサイト
http://www.55mth.com/open/index.php
「ESSENTIALS」特設サイト
http://www.55mth.com/2021/essentials/

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