ポルノグラフィティ 岡野昭仁、新旧楽曲のカバーで魅せた“ボーカリスト”としての力 辻村有記と共作のソロ楽曲も披露

ポルノ岡野昭仁、“ボーカリスト”としての力

 再び場所は東京キネマ倶楽部。先ほどまでは無かったLEDによる演出が画面を彩る中で披露したのは、2020年代の音楽シーンを代表するであろうバンド、ヨルシカの「だから僕は音楽を辞めた」。ヨルシカのコンポーザー・n-bunaとは1月に岡野が配信リリースした「光あれ」でコラボしたばかり。n-bunaが紡ぐ奥深い歌詞を丁寧に歌いあげる。続けて披露したのは椎名林檎の「丸ノ内サディスティック」。tasukuのワウペダルを用いたギタープレイと打ち込みによるビートが、この曲が元々持っている都市感を一層際立たせる。その都市感を引き継ぐように続けて披露されたのは松原みきの「真夜中のドア〜Stay With Me」。披露する前に岡野が言及した通り、近年の80’sシティポップの再評価を踏まえつつ、2021年流に再解釈されたアレンジにただただ惹きこまれてしまう。そして90年代J-POPの名バラード、DREAMS COME TRUEの「未来予想図Ⅱ」を淑やかに歌い上げ、80年代から現在に至るまでの音楽シーンを総括してみせた。

 ライブもいよいよ終盤戦。ソロプロジェクト「歌を抱えて、歩いていく」について改めて語る岡野。プロジェクトが始まったきっかけは元HaKU、現在はサウンドクリエイターとして活動する辻村有記との共作であったと話すと、その共作楽曲である「Shaft of Light」を初披露。前衛的なビート、メロディを極端に絞り息遣いを組み込んだサウンドは現在の音楽シーンを見回してみても異端と言えるようなアレンジで、デビューから21年を経た岡野の止まぬチャレンジをそのまま表出したような作風に仕上がった。そしてライヴの最後には先立って配信リリースされた「光あれ」を披露。未だ混沌とした日々、前の見えぬこの時代を貫く一閃の光のように力強く歌いきり、ライヴの幕を下ろした。

 音楽番組『DISPATCHERS』のここまでの集大成、そしてソロプロジェクト「歌を抱えて、歩いていく」の今後を予感させる内容となった今回のライヴ。どんな曲も歌いこなし、自身のモノにしてしまう懐の深さと岡野のボーカリストとして持つ力に痺れ続けた1時間半だった。近年のポルノグラフィティはtasukuをメインアレンジャーに、これまでのキャリアとは一線を画す革新的なポップミュージックを展開していたが、今回のソロライヴはさらに一段レベルアップしたサウンドアレンジが印象深い。新旧を問わず様々な他ミュージシャンの楽曲を新しいアレンジでカバーしたこと。そして、ポルノグラフィティとしての枠を飛び越えて、他ミュージシャンとの共同制作を重ねることは、きっと岡野の今後の糧になることだろう。

「このチャレンジをしっかりとポルノグラフィティに還元したい」

 ライヴ終盤、岡野自身がこう話したように、ソロ活動というチャレンジが還元されたポルノグラフィティの新しい活動も楽しみだ。

『DISPATCHERS』特設サイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる