わーすた、わーしっぷに伝えたグループの覚悟と自信 念願の有観客開催した6周年ライブレポ

わーすた、6周年ライブを振り返る

 楽曲に彩りを与えていくバンドマスター、岸田勇気(Key)を筆頭に、ヘヴィなサウンドとテクニカルなプレイで攻めるきこり(Gt)。tmsw(Ba)はずっしりとした重低音から伸びやかな高音まで6弦をフルに使ったフレージングでボトムを支えている。神田リョウ(Dr)の低めにチューニングされたスネアの太さ、タイトでがっしりとしたリズムの安定感がバンドの屋台骨となっている。と思えば、先陣を切って突進してくるドラミングが心地よい。そんなバンドサウンドの上を自由闊達に歌い踊る5人。そこにあるのはアイドルとバックバンドの関係性ではなく、ひとつのバンドだ。ステージ上の9人が一丸となって作り出すグルーヴを前に圧倒される。

 「最初からめちゃめちゃカッコいいステージをお送りしてきたんですけど、ロックなわーすただけじゃなく、大人だったり可愛かったり、いろんなわーすたを楽しんでもらえたら嬉しいです!」

 坂元の言葉の後に披露されたのは「グレープフルーツムーン」。映し出された月の下、ドラマチックで激情的なパフォーマンスに、会場の情緒は一気に揺さぶられた。

 岸田の流麗なピアノの旋律が響き渡る中、LEDスクリーンのセットが二段構えの舞台となり、上段に廣川、下段に三品が陣取る。2人が歌う曲は、三品曰く半世紀ぶり(!?)となる「好きな人とか居ますか」。ハスキー気味の三品と、瑞々しい廣川の歌声。タイプのまったく異なるツインボーカルが織りなす色香。リリース当初(2016年)は随分と大人びた楽曲だと思ったが、先日、三品も二十歳を迎えた現在では、息を呑むほどの艶めかしさを醸す。歌詞を映し出していくタイポグラフィの演出が2人の魅惑的に舞う影を色濃くしていった。

 対するのは、坂元、松田、小玉による「べちょべちょパンケーキ? feat. そこの君。a.k.a. ヲタ」。陽キャ女子の日常会話が繰り出す怪曲の世界観は、LEDに映し出されるLINE風の吹き出し演出によってシュールな狂劇として繰り広げられる。コミカルなネタソングに見せかけておいて、ニューウェーヴとファンクが入り混じったマニアックな楽曲は生バンドで聴くと音楽面での説得力が増す。ぶっ飛んでいるようでもよく聴けば音楽性の高いという、わーすた楽曲の魅力が垣間見える楽曲だ。それにしても、他愛のない女子会話をきっちり聞かせる3人の演技力には感服である。きこりのシュレッドギターソロタイムからなだれ込んだ「清濁あわせていただくにゃー」ではスクリーンを駆使し、インパクトの強いMVを完全に再現した。

 この時期にぴったりな桜色の衣装にお色直ししてアコースティックセット。「みなさんと巡り会えた奇跡に感謝している気持ちが伝わればいいな」という松田の紹介からの「ねぇ愛してみて」。着席スタイルで5人の絶妙なハーモニーを優しく届け、「TOXICATS」「Zili Zili Love」では、スタンドマイクのコーラススタイルでジャジーな演奏に乗せて妖艶さを漂わせていった。わーすたのボーカルグループとしての実力の高さを知らしめたセクションだった。

 「Do on Do ~坊っちゃんいっしょに踊りゃんせ~」からの後半戦。先ほどとは打って変わって、エレクトロな祭囃子でキレキレのダンスを魅せつけると、「KIRA KIRA ホログラム」で、会場の熱気は最高潮へ。ステージに現れた“WASUTA”の電飾セットをバックに「遮二無二、生きる!」の力強いステージングでさらなる昂揚へといざない、止まらない胸の高鳴りは有観客ライブで初披露となった「春花火」のゆらゆらと舞い落ちる花びらと変わっていった。

「これから先もこの5人でずっとずっと頑張っていきたいと思いますし、この5人じゃなきゃわーすたじゃないと思うので、これからもこの5人を引き続き応援してください」(坂元葉月)

 今でもいろいろ我慢しなければならないこともあるけれど、こうして少しづつでもみんなと会えるようになる日々が戻ってきている実感がある。こういう状況だからこそ、できることはたくさんある。みんなには会えなかったけど、わーすたとしては成長のできた1年だった……。想いの丈を集まってくれたファンへの感謝とともに1人づつ口にした。

 「最後はみんなで楽しく歌おうじゃないか!」三品の言葉に誘われて本編ラストは「約束だから」。頭上のスクリーンにはリハーサルからイベント、ライブ……と、これまで6年間の軌跡が映し出される中、ストレートなロックサウンドとともに大いに歌った。声が出せない状況でも会場に目一杯の心の声が響き渡った。

 アンコール1曲目は「ハロー to the world」。スネアのロールとピアノの旋律が絡み合い、エモーショナルな歌がドラマチックなダンスとともに鮮やかに舞い踊る。緩急のついたNEKONOTE BANDの演奏とせめぎ合う5人の姿が圧巻だった。

「みんな最後はわんわんにゃんにゃんしてね!」

 松田がそう叫ぶと、最後の最後は「いぬねこ。青春真っ盛り」。会場全体がわんわんわん、にゃんにゃんにゃんのお祭り騒ぎ、ラストのキメジャンプで大団円。全員が20代を迎えても、そしてこの先も、わーすたの本質は変わらないと思った瞬間でもあった。

「これからもついてきてね!」

 本編最後にスクリーンに映し出された言葉。廣川も幾度となく口にしていた何気ないこの言葉だが、この先も止まることなく突っ走っていくという、覚悟と自信に満ち溢れた言葉に他ならない。猫耳をつけて、はしゃいで、ふざけて、いつでも楽しそうで、でもキメるところはバシっとキメてくれる。そんな最高のアイドル、わーすたは7年目に突入した。彼女たちの輝きはこれからさらに増していくはずだ。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ(https://fuyu-showgun.net)/Twitter(https://twitter.com/fuyu_showgun)

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