My Bloody Valentine、サブスク再配信でバイラルチャート首位に マイブラが日本に残したシューゲイザーの遺伝子
参照：https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest
Spotifyの「バイラルトップ50（日本）」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分（4月1日公開：3月25日～3月31日集計分）のTOP10は以下の通り。
1位：My Bloody Valentine「Only Shallow」
2位：Brave Girls「Rollin’」
3位：和ぬか「寄り酔い」
4位：スペシャルウィーク（CV.和氣あず未）、サイレンススズカ（CV.高野麻里佳）、トウカイテイオー（CV.Machico）、ウオッカ（CV.大橋彩香）、ダイワスカーレット（CV.木村千咲）、ゴールドシップ（CV.上田 瞳）、メジロマックイーン（CV.大西沙織）「ユメヲカケル!」
5位：ARIANNE「Komm,susser Tod (M-10 Director’s Edit.Version)」
6位：宇多田ヒカル「One Last Kiss」
7位：Mom「あかるいみらい」
8位：大森元貴「French」
9位：トウカイテイオー (CV. Machico)「winning the soul」
10位：BLOOM VASE「Bluma to Lunch」
ここ最近のバイラルチャートが、じつに面白い。
特にこの1カ月間のウィークリーチャートは、毎回1位が変動し、楽曲もバラエティに富んでいる。カナダ出身の16歳の無名アーティストのサウンドフォントの如く短い楽曲、人気バンドのフロントマンのソロデビュー曲、同チャートと親和性の高いTikTokから火がついた日本の新人アーティスト、社会現象にもなった人気アニメシリーズの過去作品の挿入歌……と、曲調はもちろん、チャート1位に至るきっかけも様々である。これは、サブスクリプション音楽配信サービスの利便性があってこその結果であると同時に、“新しい音楽を知る／聴くきっかけ”が、新作リリースに留まらず、多角的になっている証拠と言えるだろう。歴史あるアーティストの楽曲のサブスク解禁も、前述した“きっかけ”のひとつと言えるのではなかろうか。
今回1位に初登場したMy Bloody Valentine（通称 マイブラ）は、3月31日に過去音源がサブスクにて再配信されたアイルランド出身の4人組である。再配信された作品は、1988年発売の1stアルバム『Isn't Anything』、1991年発売の2ndアルバム『loveless』、2013年発売の3rdアルバム『m b v』、さらに1stアルバム以前にリリースされたEP音源などを収録した『ep’s 1988-1991 and rare tracks』という全4タイトルである。前述した『loveless』は、シューゲイザーの金字塔と呼ばれるアルバムである。当時、それまでThe Beatlesの中後期から脈々と続いていたサイケデリックの進化形、もしくはネオサイケデリックと呼ばれていたシーンを“シューゲイザー”という新たなジャンルに引き上げた音楽史に残る名作だ。以降の音楽シーンにも多大な影響を残している。この名作のオープニングを飾るのが、今週バイラルチャート1位を獲得した「Only Shallow」である。
シューゲイザーというジャンルは、フィードバックノイズやディストーションをかけた轟音のギターサウンドと、優美なフレーズが繰り返されるポップなメロディ、吐息のようにたゆたう耽美なボーカルスタイルが特徴である。異なる表情を持つギターサウンドのレイヤーが入れ替わりながら織りなすマイブラのサウンドは、当時のギターロックにおいて、まさに革命だった。マイブラは『loveless』リリース後に初来日公演も果たしているが、以降、長期間に渡り表立った活動をせず沈黙。急速に過熱していたシューゲイザーシーンも、1990年代半ばのブリットポップの台頭により沈静化していった。しかしマイブラは、2007年に再始動を発表する。2008年7月には『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演し、初日のヘッドライナーを務め、沈黙の長さを感じさせない圧倒的な存在感を印象付けた。
