SOIL&“PIMP”SESSIONS 社長×俳優 松尾諭、ディープなジャズ談義 「音楽も芝居も全てにリズムがある」

SOIL社長×松尾諭、ディープなジャズ談義

上手いだけじゃない「歪み」が本当にカッコいい(松尾)

ーーちなみに、お二人が最近気になっているのはどんな音楽ですか?

社長:僕の音楽の聴き方は、普通にリスニングする時と、DJとしてネタを掘っている時があって。この1年は、結構ラウンジ的な場所でのDJオファーはあるんだけど、真っ暗な部屋で爆音で鳴らすDJは全くできていないから、そっちの方の音源がどんどん溜まっていくんですよね。それらをよく、家で聴いて「早くDJやりたいなあ……」と思っています(笑)。最近は、Overmonoというテクノのアーティストがお気に入りですね。

松尾:UKのユニットなんですね。聴いてみます。僕は最近だとほんまにSOILの新作か、KID FRESINOの『20, Stop it.』が2021年のベストアルバム暫定1位を争っていますね(笑)。

社長:おお! あのアルバムはすごかったですよね。

松尾:頭一つ飛び抜けていますよね。いつかSOILと共演してほしいですわあ。アンダーソン・パークと折坂悠太くんも、このところずっと聴いていますね。僕、最近ドラムを始めて、週4でスタジオに入って練習してるんですけど、これだけドラムにハマったのはアンダーソン・パークのせいなんですよ(笑)。

社長:めちゃめちゃ叩いてますね。

ーーさて、このたびSOILの新作『THE ESSENCE OF SOIL』がリリースされますが、松尾さんは聴いてみてどんな印象を持ちましたか?

松尾:これまでジャズカバーアルバムを出したことがないというのがまず意外でしたね。で、聴いてみたらもう「ここまでジャズやれるんや!」って。

社長:あははは!

松尾:偉そうにすいません! いや、当たり前なんですけど(笑)。もともとジャズができる人たちが、いろんな分野に挑戦して、また戻ってくるというのは、例えていうなら「今まで空手の達人だった人が『K-1』に出場して、そこで再び戻ってきての正拳突きが、かつて見たこともないほどパワフルだった」みたいな感じでしょうか。

社長:めちゃめちゃ分かりやすいです(笑)。

松尾:皆さん上手いのは当たり前なんですけど、上手いだけじゃない「歪み」というか「くすみ」があって、それが本当にカッコいいんですよね。1曲目の「Inner Glimpse」(マッコイ・タイナー)も、途中でホーンがババーっと鳴るところあるじゃないですか。あの瞬間で「これは間違いなく傑作だな」と確信しますよね。最後が「Silence」(チャーリー・ヘイデン)というのもまたニクい。アレンジされているけど、オリジナルと匹敵している感じ。アルバムの最後にそういう曲を持ってくるのがすごいなって。今回、なぜジャズのカバーをやろうと思ったんですか?

社長:変な言い方ですが、まさしく「コロナ禍に後押しされた」という感じです。コロナ禍でライブもキャンセルになっていく中で、本来はオリジナル曲でアルバムを作るつもりでアイデアをいろいろと出し合っていたのですが、「これ、作ってもライブができないよね?」という話になったんですよ。新作を出せば、それを携えてライブツアーに出たいのに、それが今の段階では全く計画できない。でも僕らは、ライブレストランやジャズ箱といったシーティングでのライブもやってきていたので、ライブハウスなどでは当面できなくても、そういう場所であれば、ちゃんと感染対策をして安心して楽しんでもらえる場所を作ることができるし、そこにフォーカスしたアルバムなら行けるんじゃないか、という話になったんです。

松尾:なるほど。そんなライブ、想像しただけでニヤニヤしちゃいますね(笑)。僕は社長以外のSOILのメンバーにはお会いしたことはないですが、アルバムを聴いているとみんなきっと楽しそうに演奏してたんじゃないかなと。

社長:いや、ほんとその通りなんですよ。ちょっとレコーディングの動画を観てくれますか?

松尾:いいんですか!

社長:今回、僕はやることがなかったので(笑)、レコーディングブースに入って全曲の演奏風景を撮影してたんですよ(と、言いながら動画を松尾に見せる)。

松尾:うわあ、これは贅沢ですねえ。レコーディングってどのくらいかかるものなんですか?

社長:大抵は1日に3曲くらい録るんですよ。しかも今回はすごく早かった。朝の11時くらいからスタートして、17時には全部終わって夕飯を食っていましたね(笑)。大体2テイク目でOK。多くても3テイクで終わりました。

「ストレートなだけじゃなく、ミックスの塩梅が僕らの個性」(社長)

ーー選曲はどのように行ったのですか?

社長:メンバーがやりたい曲をそれぞれ持ち寄って。一言で“ジャズ”と括ると幅が広すぎてしまうので、メンバーそれぞれにとってルーツとなる楽曲を選ぼうということになりました。そうなるとジョン・コルトレーン然り、マッコイ・ターナー然り、ジャズの中でも精神世界を追求しているアーティストの楽曲が中心になっていって。やはりそこが共通で影響を受けているところなんですよね。そこでも結構な数の楽曲が挙がったのですが、さらに7曲に絞り込みました。

ーーBlack Sabbathの曲が入っているのがユニークですよね。

松尾:そうそう、びっくりした。僕は原曲を聴いたことがないんですけど、もう完全にジャズですよね。

社長:ある意味「外し」というか。ただストレート・アヘッドなジャズをやるだけじゃなくて、そういうミックスの塩梅が僕らの個性でもあって。「ジャズをどこに感じるかは、それぞれの自由」というのが、トランペットのタブゾンビのメッセージなんですよね。

ーー今回、社長が選んだのはバイロン・モリス&ユニティの「Kitty Bey」ですよね。

社長:まさにレア・グルーヴの高額盤の1枚なんですよね(笑)。90年代半ばは、高い時で4万くらいいったんじゃないかな。でもその曲が僕は本当に大好きで、当時無理して購入するんですが、のちに再発が出てがっかりするっていう苦い思い出があります(笑)。この曲はクラブジャズ・シーンの重要曲で、フロアでかかるとみんな踊りまくっていたんですよね。アメリカのブラックジャズだけじゃなくて、僕らが通ってきたルーツにはUKのクラブジャズからの影響もすごく大きいから、そこもちゃんと示しておきたいと思ったんです。

松尾:いやあ、最高です。U.F.O.の『THE SCENE』みたいな映像集も作ってほしいなあ。あと、最初にSOILを聴いた時にも思ったんですけど、SOILだけに土臭い感じもたまらないんですよね。それは粘り気のある土の時もあれば、砂埃が舞うような土の時もある。ファラオ・サンダースの「You've Got to Have Freedom」や「Black Unity」を聴いたときのような興奮を、今の音楽で聴けたことに心から感動していますね。

ーー素晴らしい。そしてコロナ禍になって音楽との向き合い方などに変化はありましたか?

松尾:この1年くらい、誰かの新作を聴いた時に「この人のライブに行きたいな」ってすごく思うようになりました。もちろんSOILのアルバムもそうですし、他の人のアルバムを聴いても「やっぱり生で見たいな」と。それができない環境になって、ありがたさを身に沁みて感じていますね。今まで仕事にかまけてライブにあまり行けてなかったんですけど、とりあえず自粛が明けたら生のライブに行きたいです。

社長:それは舞台に対しても思うんです。僕は舞台がすごく好きで。高校生の時につかこうへいさんの舞台にハマってから、いろんな舞台を観に行ってたんですよ。感情をこんなに揺さぶられるのかって。一つの劇の中に喜怒哀楽すべての表情があるってすごいなあと。あれは行かないとわからない世界ですよね。

松尾:表現って、リズムだと思いません? 音楽も芝居も絵画も、全てにリズムがある。そう考えるようになったのは、落語を見た時なんですよ。落語にある「緊張と緩和のリズム」は、ジャズにも通じるんじゃないかと。ずっと一本調子の音楽よりも、もともとそういう曲の方が好きなんですよね。それが芝居に反映されているかどうかはわからないけど(笑)、常にリズムを大事にしたいなと思っています。

社長:話し足りないんで、このまま飲みに行きたいっすね。

松尾:僕は一応、ケツは空けておいたのに、社長はこのあと仕事があるんでしょう? つれないなあ。

社長:すみません(笑)。じゃあコロナが落ち着いた時に、ぜひ!

『THE ESSENCE OF SOIL』

■リリース情報
Cover Mini Album『THE ESSENCE OF SOIL』
3月17日(水)発売 ¥2,300(+tax)
*メンバーによる収録曲解説付き
*初回出荷分は紙ジャケ仕様

<収録曲>
1. Inner Glimpse (McCoy Tyner)
2. My Favorite Things (Richard Rodgers)
3. Planet Caravan (Geezer Butler / Tony Iommi / Ozzy Osbourne / Bill Ward)
4. A Love Supreme, Pt. II – Resolution (John Coltrane)
5. Soulful (Roy Hargrove)
6. Kitty Bey (Gerald Wise) 
7. Silence (Charlie Haden)

SOIL & "PIMP" SESSIONS Official Web Site
松尾諭 Twitter

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