ももいろクローバーZの歴史を紐解く 第3回:改名~悲願の紅白出場とその後

ドイツでのライブで確信「私たちは世界を変えられる」

 挑発だけではなく、持ち味の遊び心もちゃんと並行した。8月には横浜、大阪で『ボイン会』なる怪しげなエーミングの公演を打ち出し、「何が起きるのか」とドキドキさせた。その中身は、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)出場をファンに誓うため、メンバーが指に朱肉をつけて色紙に拇印を押し、それをファンに直接手渡すものだった(もちろん筆者も大阪公演で拇印色紙をゲットした)。

 8月20日のよみうりランドオープンシアターEASTでの『サマーダイブ2011 極楽門からこんにちは』では6000人を動員。9月9日『文化庁メディア芸術祭 ドルトムント展2011』プレオープンイベント出演のため、ドイツのドルトムントへ渡った。ライブ翌日、ドイツのDOMMUNEスタジオから配信されたインタビューでは、高城が「言葉が通じなくても一緒に盛り上がれたということは、私たちが世界を変えられるということ。これからもっともっと世界を変えていきたい」と意気込んだ。2008年に路上ライブからスタートし、地下から這い上がった彼女たち。そのまなざしは「世界をどのように照らすか」に向いていた。

 2011年のももクロの畳み掛けるような動きは圧巻だった。毎日のように彼女たちの新しいニュースを追っている感覚があった。早見の脱退ショックをマイナス要素に思わせず、快進撃を続けた。同年末『ももいろクリスマス2011』で、さいたまスーパーアリーナへたどり着く。

ドランクドラゴン・塚地らも、ももクロの熱狂

 2012年は筆者が仕事として、ももクロともっとも接点を持った年である。2月公開の映画『NINIFUNI』の関西地方のプロモーションを担当したのだ。『NINIFUNI』は、『ディストラクション・ベイビーズ』(2016年)や『宮本から君へ』(2019年)で知られ、いまもっとも日本で刺激的な映画を撮る真利子哲也監督の作品。

 ももクロは本人役で出演した。誰もいない砂浜に車を停めて練炭自殺を図る青年(宮崎将)。車窓の向こう側では、ミュージックビデオの撮影のために砂浜へやって来た、6人体制時のももクロの姿。元気一杯に踊ってハシャぐ彼女たちと自殺を図る青年の対比。圧倒的な生と死を画面内におさめる凄まじい内容だった。さらに不気味に鳴り響く、津波の音。この映画は東日本大震災前に撮影されたが、どうしてもあの出来事が結びついてしまう。わずか42分の映画。作品に渦巻く気配に言葉を失う。

 この映画の宣伝のため、私はももクロの来阪ライブでチラシ配りをおこなった。ただ、これまた単なるライブではなかった。2月18日、メンバーやスタッフらがTwitterとブログを使って13時、14時の2度にわたり「たこ焼き最高、食べに行っちゃう?」など大阪でのサプライズライブをにおわせた。15時になると三角公園前にある街頭ビジョンが開いてメンバーが登場し、ライブをおこなった。モノノフたちは場所を事前に突き止めて集結。私はキングレコードのスタッフから情報を事前提供してもらい、同所で映画のチラシを配りまくった。ももクロの結成時のような路上戦を自らに課した(ちなみに大阪公開時の舞台挨拶では真利子監督、高城とトークもおこなった)。

 もうひとつ印象的なのが、10月公開『くろねこルーシー』という映画の関西宣伝をつとめたとき。主演・塚地武雅(ドランクドラゴン)がPRで来阪。そのときの彼の装着品の配色が、ももクロのメンバーカラーだった。それに気づいて指摘したときの「そうなんです!」という塚地特有の人の良さそうな笑顔が忘れられない。塚地は2012年開催『ももクロ夏のバカ騒ぎ Summer Dive 2012 Tour -開幕戦- 6.17 NHKホール大会』に客として訪れ、ライブ映像に偶然映りこんだことがネットでも話題に。塚地はももクロ大好き芸人筆頭。芸能界でもももクロ熱が広がっていた。

 2012年3月にレギュラー番組『青山ワンセグ開発』(NHK Eテレ)、4月にラジオの初冠番組『ももクロくらぶxoxo』(ニッポン放送)がスタート。4月21日、22日『ももクロ春の一大事2012 ~横浜アリーナ まさかの2DAYS~』で計2万5千人を集めて大成功させた。特に2日目、ステージ位置を会場のセンターに設置して360度客席が囲むなかで繰り広げたパフォーマンスは、メンバーの身体性を存分に堪能できるすばらしい内容だった。  8月5日、西武ドームでの『ももクロ夏のバカ騒ぎ』ツアーの千秋楽はなんと3万人以上を動員。同月『SUMMER SONIC 2012』に出演。10月5日に女性限定ライブ、11月5日に男性限定ライブで日本武道館での公演を実現。人気音楽番組『MUSIC STATION』(テレビ朝日系)にも初出演を果たした。規模が明らかに破格になった。

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