Sexy Zone『SZ10TH』大差でチャート首位 10年間で培われた“表現の深み”を味わう

 ほかにも、アップテンポで快活な楽曲が続くなか飛び抜けてファンキーなアレンジの「カラフル Eyes」に耳を惹かれる。生っぽいフィーリングのやわらかなサウンドに包まれたボーカルは、ハーモニーの滑らかな手触りも相まって、快活さのなかにメロウな香りが漂っているのが印象的だ。そして、そのメロウさは「RIGHT NEXT TO YOU」と地続き。同じようなことはレーベル移籍前、ポニーキャニオン期のラストシングルにあたる「Honey Honey」(「麒麟の子」との両A面)にも感じる。もうちょっと打ち込み寄りのキラッとしたサウンドだが、要所に残る温かみがボーカルとよくマッチしている。

 と、この機会にSexy Zoneの10年を駆け足で振り返ってみると、「RIGHT NEXT TO YOU」の独り歩きとも言えるバズのほうが奇妙に思えてくる。いや、すごくスマートでよくできた曲なのはたしかだ。明らかにチャレンジにあふれている。ただ、リアルタイムでちゃんと聴けたという個人的な事情もあるだろうけれど、アルバム『POP x STEP!?』がもっと注目を浴びてもよかったのに......なんて思うのだ。(ちなみに、『POP x STEP!?』については以前にこの連載でレビューを書いているので参照されたい。ベテランから若手まで多彩なクリエイターが参加した1枚で、聴き応えがある)。それに、期間限定スペシャルプライス盤のディスク3にはファンクラブ会員による投票で選ばれた楽曲がコンパイルされていて、さすが佳曲が多い。聴けば聴くほど愛着が湧きそうだ。そうした印象にしても、「RIGHT NEXT TO YOU」をきっかけに『SZ10TH』へ手を伸ばしたからこそ、遅ればせに感じ取れたのかもしれないのだが。

 新鮮なインパクトとともに10年を総括するアルバムを出したSexy Zoneの次の一手はどうなるのか……と思っていたところで、3月8日に新曲「LET'S MUSIC」のMVが公開された。「RIGHT NEXT TO YOU」のように「いかにも新機軸!」というわけではないが、むしろこれぞ本領発揮では、というファンキーなサウンドが抜群に良い。ボーカルの聴きどころの作り方や細かい展開は現代的、かつメンバーの魅力も感じられて、なんならこっちのほうが好きだ。発売が楽しみです。

Sexy Zone「LET'S MUSIC」(YouTube ver.)

■imdkm
1989年生まれ。山形県出身。ライター、批評家。ダンスミュージックを愛好し制作もする立場から、現代のポップミュージックについて考察する。著書に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019年)。ウェブサイト:imdkm.com

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