PEDRO、愛と感謝を爆音でかき鳴らした初の単独武道館レポート

PEDRO、愛と感謝かき鳴らした初の武道館

 そこから終盤戦へ近づくにつれて、ステージはさらに加速する。「ゴミ屑ロンリネス」や激しいバンド演奏が象徴的な「SKYFISH GIRL」「EDGE OF NINETEEN」と続き、次のそっと語りかけるようなバラード曲「生活革命」のライブアレンジされたイントロでステージが再びグルっと半周して開演当初と同じ配置に。ライティングの演出が目立つ幻想的な空間で「空っぽ人間」までを歌い上げると、勢いそのままに「感傷謳歌」を熱唱し、アユニは観客へのメッセージを伝えた。

 舞台上で「この数時間。誰かにとっては、知らない人のただの数時間かもしれません。でも、私は今日、ここで音楽を鳴らしている間、歌っている間、いろんな感情になりました。私にとっては大切で、愛おしい時間」と、まさにその瞬間の思いをこぼしたアユニ。「私と、私の音楽を、あなた方が生かしてくれたということ。そして、これからもこの街で生きていきたいということ。今の思いが、すべて詰まっている曲を聴いて帰ってください」と紹介し、最新シングルの表題曲「東京」を披露して、3人はステージを後にした。

 その後、客席からの拍手を受けて再びPEDROの面々が登場。「皆さまの人生を祝しまして、乾杯!」と威勢のいい口上で始まったアンコールの1曲目「乾杯」が終わると、アユニは、胸の中の想いを語り始めた。

 静かな会場で、そっと語りかけるように「少し、お話させてください」とつぶやいたアユニ。満足に眠れないまま訪れた当日の朝の様子を「PEDROチームの方から、入り口の『生活と記憶』っていう幕の写真が送られてきて。ああ、今日は夢じゃないんだ。現実なんだって思って。朝、鏡を見たら、私は私なんだって。何か、不思議な感覚になりました」と振り返った。

 また、コロナ禍で様々な変化もあった昨年からの流れについて「当たり前だったライブも貴重な時間だったとか、音楽の尊さとか、人が存在しているっていう事実の強さとか。あなたたちもいろんなことがあったと思います。今日まで、ささいなことでも大きなことでも、本当にいろいろなことがあったと思う」と回想。観客に向けて「一人ひとり、話したい気持ちです」と本音をぶつけ、「今はそれができないけど、今日この時間、武道館で私にいろんな感情をぶつけてくれたと思います。本当にありがとう。今日まで生きてくれて、本当に本当にありがとうございます」と感謝を伝えた。

 さらにわずかな沈黙を挟み、「今日、このステージを徹夜で作ってくださったスタッフの方々。私の人生に革命を起こしてくれたひさ子さんと毛利さん。私をいつも支えてくださり、人間にしてくれたPEDRO、そして、BiSHチームの皆さん。私に愛をたくさん教えてくれた、あなたたち。そして、いろんな喜怒哀楽を一緒に味わって、どんな困難な日も一緒にぶつかって乗り越えてくれたBiSHのメンバー。すべてが私の宝物で、誇りです」と周囲への想いを吐露。そして、こらえていた感情をすべて吐き出すかのように「あなたも、どうかたくさん笑って泣いて、たくさんおいしいものを食べて、たくさん寝て、眠れない夜が来ませんように、元気に生きていてください」と客席へと言葉を投げかけた。

 そして「日常」に続いて、間髪を入れずにラストを飾る「NIGHT NIGHT」を披露。曲の終盤では銀テープが勢いよく放たれ、会場内の視界がさえぎられるほどキラキラした空間のまま一夜限りの公演は幕を閉じた。

■カネコシュウヘイ
編集者/ライター/デザイナー。アイドルをはじめ、エンタメ分野での取材や原稿執筆を中心に活動。ライブなどの現場が好きで、月に約数万円はアイドルへ主に費やしている。単著に『BABYMETAL 追っかけ日記』。執筆媒体はWeb『ダ・ヴィンチニュース』『クランクイン!』『ウレぴあ総研』、雑誌『日経エンタテインメント!』など。

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