indigo la Endが追求し体現する理想の音楽 最新作『夜行秘密』プラネタリウム配信ライブレポ

indigo la Endが追求する理想の音楽

 曲が始まると同時に大きな月が出現した「フラれてみたんだよ」では、川谷が紡ぎ出す歌詞の魅力をじっくりと味わうことができた。indigo la Endの楽曲を通し、人と人との繊細な関係性、揺れ動く感情を詩的に描いてきた川谷。この曲では、これまでの作詞のスタイルを維持しながら、〈フラれてみたんだよ〉という言葉が耳に飛び込んできた瞬間のインパクトを加えることで、ポップスとしての強さを高めることに成功している。奥深いストリングスの音色を交えたアレンジも絶品。生音の豊かさをたっぷり体感できたことも、このライブのポイントだったと思う。

 そして、個人的に最も強い衝撃を受けたのは、「晩生」だった。長田のフィードバックギターが響いた瞬間にステージは赤い光に染まり、彗星が次々と流れていく。サウンドの基調は、90年代のシューゲイザーやオルタナ。川谷のSG、長田のレスポールがメロディアスな轟音を鳴らすと、佐藤、後鳥によるリズムセクションも即座に共鳴し、圧倒的な高揚感を生み出す。〈どうして僕じゃ/どうして私じゃ/あなたじゃなかった?〉と叫ぶように歌う川谷のボーカルにも心を打たれた。

 「6枚目のアルバム『夜行秘密』を明日(2月17日)リリースすることになりました」「大事なアルバムになりました。結成10周年とかに関係なく、僕らがやりたい音楽をやり続けた結果が、今回のアルバムになっていると思います。アルバムが長く愛されることを願って、最後に曲をやりたいと思います」と川谷が語った後、ラストの「夜の恋は」へ。プラネタリウム内のドームには、東京の夜景が広がり、〈好きにならずにいたかった あなたを知らずにいたかった〉という美しいコーラスとともに数多くの花火がスクリーンに映し出される。切なさと興奮が入り混じる、indigo la Endらしいエンディングだった。

 終演後に配信されたインタビューで川谷は、「やりたいこととポップスというものの、自分たちが許せる範囲のいい作品が出来た」とコメント。ギターロック、R&B、AORといった幅広い音楽性を吸収しながら、生楽器の響き、生演奏ならではのサウンドを追い求めてきたindigo la Endは、結成10周年を経て、新たな傑作『夜行秘密』に辿り着いた。ロマンティックな演出を施した今回の配信ライブで彼らは、そのことをはっきりと証明したのだと思う。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

indigo la End 『夜行秘密』リリース記念 Special Streaming Live at Planetarium
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【indigo la End New Album『夜行秘密』リリース記念 Special Streaming Live at Planetarium 】

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