実力派ボカロP ユリイ・カノン、楽曲やMVを通じて描く様々な物語 1stアルバム『人間劇場』発売への期待

 YouTubeで動画再生回数が現在3,140万回を超えた「だれかの心臓になれたなら」を代表曲に持つ京都出身のボカロP、ユリイ・カノンが、2021年3月3日にメジャー1stアルバム『人間劇場』をリリースする。YouTubeに公開している動画の総再生回数は、6,000万回以上(2021年1月13日現在)。すでに浦島坂田船のうらたぬきや、ウォルピスカーター、音楽ユニット・THE BINARYへも楽曲提供をしている実力派ボカロPだ。

だれかの心臓になれたなら /ユリイ・カノン feat.GUMI

 2008年頃、ボーカロイドシーンでは、初音ミクをはじめとした息継ぎの必要がないボーカロイドに楽曲を歌わせることを前提に、高速化したテンポの楽曲が賑わいを見せていた。例えば、これまでで最も高速だとされるcosMo@暴走Pによる「初音ミクの消失」は、1秒当たり7.5文字の速度と言われている。ここ数年は、ヨルシカ、YOASOBIを中心に、生身の人間をボーカルとするコンポーザーと歌い手による音楽ユニットが次々と誕生したことから、当時と比較すれば、人間が歌うことにフォーカスした楽曲が多くなったのは否めない。そんななかでも、ユリイ・カノンは、比較的ハイテンポなメロディを生み出し続けているボカロPである。とりわけ、高速ツーバスで駆け抜ける「スーサイドパレヱド」は、高速BPMが卓抜している楽曲のひとつだ。

【オリジナル】スーサイドパレヱド / ユリイ・カノン feat.GUMI -Suicide Parade/YurryCanon

 2016年5月、ニコニコ動画に投稿した「或いはテトラの片隅で」でボカロPとしてデビューを果たしたユリイ・カノンは、2016年11月、YouTubeに投稿した、自身4作目の「おどりゃんせ」で初の殿堂入りを飾る。「おどりゃんせ」は、「だれかの心臓になれたなら」の次にYouTubeにおける動画再生回数が多い楽曲で、1,050万回再生超え(2021年1月13日現在)。そして、2018年12月19日には、1stアルバム『Kardia』をリリースした。

【オリジナル】 おどりゃんせ – Odoryanse / YurryCanon feat.MIKU&GUMI

 初音ミク、GUMIを中心としたボーカロイドを使用し、和の音色やシンセサウンドのポテンシャルを生かしたユリイ・カノンの楽曲は、1曲ごとに物語が展開されている。退廃的な架空の世界が紡ぐ物語は独創的だ。そんなインパクトのあるユリイ・カノンの楽曲において心臓部になってくるのは、生と死をテーマにしたリリックだろう。〈どんな世界も君がいるなら/生きていたいって思えたんだよ/僕の地獄で君はいつでも絶えず鼓動する心臓だ/いつしか君がくれたように/僕も、/だれかの心臓になれたなら〉というフレーズが叙情的な「だれかの心臓になれたなら」では、心臓=生きる理由として、人がこの世界に生きることへの最大の価値を示しているのが印象に残る。

『人間劇場』通常盤
ユリイ・カノン『人間劇場』通常盤

 生命を中心にしたテーマのほか、ミュージックビデオにおけるギミックもユリイ・カノンには欠かせない。攻撃的なメロディを投じる「ベロニカ」「スーサイドパレヱド」をはじめとしたミュージックビデオには、間奏のフレーズで突然、文章が綴られたフレームが差し込まれる。実はその文章こそが、楽曲を聴く上での想像を広げてくれるパーツになるという仕組みだ。例えば、すでにYouTubeで公開されている『人間劇場』収録曲の「人間らしい」のミュージックビデオで文章が綴られたフレームの一部を抜粋すると以下の通り。

【「人の性は悪なり、その善なるものは偽なり」――それが正しいというなら、歪んだこの感情はとても人間らしいと言えるのかもしれない。】/【生きるために自分を殺しました。そうして人間らしい自分を演じてきたのです。】

人間らしい / ユリイ・カノン feat GUMI

 このように文章を通して、タイトルの「人間らしい」の心髄へも近づくことができる。ミュージックビデオのなかからもユリイ・カノンにしか描けない世界があふれ出ているのだ。

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