SixTONES「うやむや」がファン以外からも評価される理由 “ボカロ的要素”を取り入れ、シーンの発展感じさせる1曲に

 そもそも、いわゆる“ボカロ曲っぽさ”を感じさせる音楽にはいくつかの要素がある。例えば打ち込みのサウンド、BPMの高さ、(もともと人間ではなくボーカロイドが歌うものとして生まれた音楽であるために)息継ぎの間もないほど詰め込まれた歌詞、語感の良さを優先した言葉選びや、言葉遊びの多用などだ。「うやむや」の歌詞で言うと、〈うだうだくちゃくちゃ物申そう/トラウマだらけで針千本〉などがそう感じさせるのではないだろうか。

 SixTONESらしさを生かしながら、これらの“ボカロ的要素”をうまく取り入れた曲作りをしたことが、今回支持された一因と言えるだろう。

 また、単純に楽曲そのもののクオリティが高いというだけではなく、男性6人のボーカルで歌っているという点もこの曲の聴きどころになっている。「うやむや」でタイプの違う6人の声音が次々と移り変わりながら歌いあげる音色の鮮やかさには、いわゆる“ボカロ曲”に耳なじみのある層からしても目新しさがあったのではないだろうか。

 昨年2020年は、YOASOBIの「夜に駆ける」のヒットをはじめ、ずっと真夜中でいいのに。やヨルシカ、yamaなど、ボーカロイドの文脈の中から生まれたクリエイターの音楽が世間一般にも広く浸透した年だった

 だが、今回「うやむや」という曲が登場したことにより、そうしたサウンドがシーンに広がり、さらに進化していると思い知らされることとなった。『1ST』というアルバムがあらゆるジャンルに挑戦しているように、今後ジャンルの垣根はどんどん壊され、そのたびに新しい化学反応が生まれていくことだろう。「うやむや」は音楽シーンの新たな発展と、その中でのSixTONESの活躍を期待させる1曲となった。

■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ Twitter(@erio0129

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