Eve「廻廻奇譚」、数週にわたってバイラルチャートランクイン 『呪術廻戦』に寄り添う、けだるいフロウと胸踊る躍動感

 BUMP OF CHICKENやRADWIMPS、相対性理論といった2000年代のギターロックがルーツであることから、バンドサウンドを取れ入れることが多い一方で、ロックを下敷きにしながらもジャンルの枠にとらわれない自由で多彩なアプローチがEveの持ち味だ。「廻廻奇譚」でもそれが存分に発揮されている。ドライブ感のあるギターサウンドを基調にしているものの、ヒップホップの要素も取り入れた本楽曲はミクスチャーロックと呼ぶべきだろうか。途中間奏を経て、BPMを落としトラップビートにスイッチするという発想はジャンルを超越するEveらしい発想だ。ボーカルにかかったエフェクトも、けだるいフロウと相まって酩酊感を演出する。そのあと一転して加速するサウンドは疾走感がほとばしり、ハイトーンなボーカルがカタルシスに導く。胸が踊るような躍動感のある本楽曲は、アニメのオープニングテーマとして物語のスタートを彩る役割もしっかり果たしている。

 TVアニメ『呪術廻戦』のオープニングテーマになることを受けて「エネルギーのあるこの作品にどのような形で寄り添えるのか、そういうことを考えながら音楽を作りました」とコメントを寄せたEve(参照:呪術廻戦 公式HP)。「廻廻奇譚」が『呪術廻戦』の持つエネルギーに飲み込まれず、寄り添うことのできるバイタリティに満ちた楽曲であるからこそ、6週連続でバイラルチャートトップ10にランクインするほどのロングヒットになっているのではないだろうか。この記録がどこまでつづくのか、今後もしっかり見守りたい。

■Z11
1990年生まれ、東京/清澄白河在住の音楽ライター。
一般企業に勤務しながら執筆活動中。音楽だけにとどまらず映画、書籍、アートなどカルチャー全般についてTwitterで発信。ブリの照り焼きを作らせたら右に出る者はいない。
Twitter(@Z1169560137)

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