白神真志朗、新曲「ノスタルジア」制作に垣間見える“クリエイティブな発想の源” 「自分が作るものに責任を持っていたい」

白神真志朗、クリエイティブな発想の源

「言ったことはないけど、“そう思う心情を内面に飼っている”のが歌詞」

ーー真志朗さんは、今話してくれたように自分の作品を語る言葉を持っている方ですし、分析力も異様に高い。あと、ストリングスによるイントロも素晴らしいんだけど、そこに時計が刻む音が没入感を誘いますよね。

白神:どっちが先か忘れたんですけど、「ノスタルジア」にはテーマがあって。最初は、いわゆる望郷みたいな感覚は映像作品の主題にはなかったんです。地元に帰ってきた登場人物が、地元に住み続けている人との間で繰り広げるドラマを描こうっていう感じでだったんですけど、過去の経験を振り返って回帰していくという切り取り方にしようと思ったのは、音楽側のアイディアができたからなんです。たぶん、サウンドを作っていてふと時計の音が欲しいなと思って入れちゃったんですね。入れた後で歌詞を書いたので、音に引っ張られて「ノスタルジア」になったんですよ。テーマも含めて。

ーー面白いなあ。

白神:だいたいイントロから曲は作るんです。今回、歌詞のイメージから編曲されたものではないんですよ。

ーー歌詞は女性目線な言葉になっていますが、真志朗さんのなかで、自分の経験と重なった言葉ってあるんですか?

白神:自分自身の心境とは違うんですけど、歌詞に〈波打ち際〉という言葉を入れたときに、島本理生だなって。

ーー島本理生?

白神:島本理生という小説家がいるんですよ。その方の『波打ち際の蛍』という作品があって、〈波打ち際〉と書いた後で、そのことを思い出しました。そういえば〈波打ち際〉って歌いたかったんだと気がついて。歌詞を書いていて思うのは、例えば僕が海岸で〈波打ち際の向こうに/広がる暗闇と/道連れになってくれる?〉と女の人に言ったことはないんですけど、そう思う心情を内面に飼っているんですよ。この歌の物語を考えていたときに、そういうことを言う自分を想像できなくはないんです。言いたいこともあるかもと。そうでないと歌詞にならないんです。

ーー経験していないことでも、その場にいたら言っていたかも知れない、みたいなことですね。

白神:そうですね。これはどこかにいる人の話ではなくて、自分が女性だったらどう思うのかなって考えるんです。

白神真志朗

ーークリエイティブの考え方がよくわかるエピソードですね。ちなみに、もともと真志朗さんが音楽に目覚めたきっかけはなんだったんですか?

白神:映画『ライオンキング』ですね。その前から音楽は自然にあったんです。音楽が好きだなあと思ったきっかけですね。

ーー楽器はいつ頃から?

白神:4歳から7歳までピアノをちょっとだけやっていて。その時は全然ピアノが好きじゃなくって。田舎育ちなんで、小さい頃はサッカーやったり外で遊んでましたね。

ーー音楽活動をやることになったのは?

白神:中学校2年生ぐらいの時に、友人がアコギでコブクロのカバーとかやり始めて。それに合わせて歌を歌っていたのが最初かな。そのうち、アジカンやバンプとか、流行っているバンドを知ってバンドをやることになって、ベースをやりながら歌っていました。その後は、3ピースでバンドやっていましたね。そして紆余曲折を経てステラ・シンカになったと。当初はビッグビートみたいな感じから、DAWを覚えていきました。

ーーボカロ文化の入り口は?

白神:もともとは全然通ってなかったんですよ。ライブハウスに出入りしてたときに、今のヒトリエのドラマー、ゆーまおに出会って。その後、bermei.inazawaさんと深水チエさん、ボカロPのなきゃむりゃさんがゆーまおと同人系のバンドをやろうってなった際に、ベースが弾けてDAWが扱える人がいないかって声をかけてもらって。同人即売会の『M3』に出たのが僕のニコニコ動画や同人の元年でしたね。

ーーなるほど。そして、じんさんのプロジェクトに結びついたと。

白神:だんだん波及してNeru君に声をかけてもらって、まふ君(まふまふ)へとつながっていきました。

ーーソロ活動として、自分の表現でやってみようと思ったきっかけは?

白神:僕は美術か音楽をやりたかった人なんです。ベースは、あくまでバンドをやるためにやっていたものが結果的に続いているだけなんですね。音楽で食っていくことは目標ではなかったんですよ。ただ、モノづくりをして世の中に向けて表現したかったというか、その流れにあるものでしかないですね。

ーー目標はあったりするんですか?

白神:結局は、自分自身の音楽が世の中にどう消費されていくのかっていうことですよね。ひいては生きてから死ぬまで、世の中にどんな影響を与えられるのか、ということを考えています。「自分勝手にいたくないという感性を肯定していたい」と思っています。それが目的なのかな。それは果たされ続けているし、より多くの方に聴いてもらえたらより果たされていくのかなって。自分自身がクリエイターとして、アーティストを名乗るからには自分が作るものに責任を持っていたいですね。

■楽曲情報
白神真志朗「ノスタルジア」
12月9日(水)配信 ダウンロードはこちら
Music Video公開中

作詞・作曲・編曲・Vocal:白神真志朗
ストリングスアレンジ:葛西竜之介(APDREAM)
Cello:堀沢真己、奥泉貴圭、結城貴弘、西方正輝
Piano:宇都圭輝
Additional Synth Sound Design:中土智博(APDREAM)
Background Vocal:eco、さかな
Recording Engineer:白神真志朗、内藤岳彦
Mixing Engineer:白神真志朗
Sound Director:山田公平(APDREAM)
Promotion Advisor:岡田一男、椎野一誠(Medium)
Distribution:Warner Music D.N.A.

■関連リンク
白神真志朗 オフィシャルサイト
Twitter

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