『滝沢歌舞伎ZERO 2020 The Movie』、興行収入10億超えヒットの理由 “舞台でも映画でもない”新たなエンターテインメントの形

『滝沢歌舞伎ZERO』からブラッシュアップされた演目の数々

 『滝沢歌舞伎ZERO』から引き続き披露されている演目もブラッシュアップ。映画化により高性能カメラで大きくアップになっても仕掛けが分からない「変面」のクオリティの高さには驚かされた。筆者も必死にスクリーンを凝視したのだが、面が変わるタイミングを見破ることは不可能であった。

 前回はラウールと佐久間が出演した「Maybe」も一部メンバーを変更し、対比のある演出が印象的な仕上がりに。映像を効果的にシンクロさせることで、よりラウールの全身全霊のパフォーマンスの魅力が増したように思う。

 宮舘と渡辺翔太による「My Friend」も宮舘がフライングの新技に挑戦し、進化を遂げている。渡辺の艶のある伸びやかな美声と相まって、大人っぽいパフォーマンスに仕上がっている。

 雨の中での5分間もの激しいダンスパフォーマンスが見どころの「組曲」は華やかさも取り入れた贅沢な演目。一人だけに集中することが難しく所謂“目が足りない”状態になってしまうのでついつい2度、3度と映画館に足を運んでしまう人も多いのではないだろうか。

 『滝沢歌舞伎』の真骨頂である「腹筋太鼓」では“漢”Snow Manを存分に感じることができる。飛び散る汗も懸命な表情も美しい腹筋も、同時に大画面と音響で楽しめる贅沢さをシンプルに楽しんで欲しい。

 また、「Make It Hot」「Crazy F-R-E-S-H Beat」「Black Gold」とライブさながらにパフォーマンスされる楽曲にも注目。岩本照が振付を手がけた「Crazy F-R-E-S-H Beat」はカメラアングルも考慮し、細かい部分にもこだわっており見ごたえがある仕上がりだ。初披露となる新曲「Black Gold」はクールな9人の姿がたまらないと映画を観たファンの間で絶賛されている。

世代を問わず楽しめる新感覚のエンターテインメント

 本格的な歌舞伎の世界が繰り広げられる「五右衛門ZERO」、佐久間、阿部の艶やかな女形と男形の渡辺に加え、映画で日本舞踊初挑戦の目黒蓮が加わった「男と女の舞」など、映画化に伴い新たな演出を取り入れた日本古来の文化を継承した演目にも監督である滝沢の思い入れを感じることができる。

 日光江戸村で撮影した時代劇「鼠小僧次郎吉」も必見。ファンにはおなじみの“お丸”を演じた深澤辰哉のテンポの良いセリフ回しで、コミカルに進んでいくストーリーは大人から子どもまで楽しむことができる。悪役を演じた向井康二はアップのシーンがあることを考慮し、よりリアリティを出すために歯のホワイトニングを中止して撮影に挑んだというだけあり迫力ある存在感が光っている。驚きの演技力を見せつけ、役者としての可能性を感じさせた目黒は「カメラが寄ることを考え、自分の中の表情の引き出しを探った」(『anan』12月16日号)と語っている。

 『滝沢歌舞伎 ZERO 2020  The Movie』はチケットの入手が困難で観劇することができなかった人や、Snow Manに注目し、はじめて「滝沢歌舞伎」の世界に触れる人はもちろん、ジャニーズファン以外の人も楽しめる作品となっている。滝沢の意志を継承したSnow Manによる、“舞台でも映画でもない”新しいエンターテインメントをぜひ多くの人に体験してもらいたい。

■北村由起
ライター・エディター。出版社勤務、情報誌編集長を経てフリーに。情報誌、webマガジン、ムック等を中心に執筆。ジャニーズウオッチャー。

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