Eve「廻廻奇譚」&ALI「LOST IN PARADISE feat. AKLO」はなぜ胸に刺さる? 『呪術廻戦』とシンクロした先鋭的な2曲を分析

 一方、エンディングテーマの「LOST IN PARADISE feat. AKLO」を歌うALIは、リーダーのLEO(Vo)をはじめメンバー全員が日本とそれ以外の国をルーツに持つ多国籍音楽集団。音楽的にはソウル、ファンク、ジャズ、ヒップホップなどを掛け合わせたミクスチャースタイルを身上としており、2019年にはTVアニメ『BEASTARS』のオープニングテーマ「Wild Side」を担当。 スウィングジャズ〜ビバップの要素を取り入れたクールかつパンキッシュなサウンドでアニメファンにも鮮烈な印象を与えた。

ALI – LOST IN PARADISE feat. AKLO(Music Video)

 「LOST IN PARADISE feat. AKLO」は、ラッパーのAKLOをゲストに迎え、ストリングスやホーン隊も大々的に活躍するグルービーな1曲に。グロリア・ゲイナー「I Will Survive」などのディスコクラシックに近いフレイバーを感じさせつつ、AKLOの小粋なラップやバンドの洗練された演奏によって、モダンなファンクネスが気持ちいい現代的なナンバーに仕上がっている。2020年はBTS「Dynamite」やドージャ・キャット「Say So」、デュア・リパ「Break My Heart」のように、往年のディスコサウンドを今風に解釈した楽曲のヒットが目立ったが、本楽曲もそういった時代の空気感を共有している印象だ。

 そのようにダンサブルでファンキーな楽曲が、「呪い」を題材に扱ったダークなバトルものである『呪術廻戦』とどのように結びつくのか。その答えはエンディングアニメを観ればわかる。そこで描かれるのは、本作で活躍する呪術師たちの休日模様。髪型をセットして軽快にダンスしながら外へ繰り出す虎杖悠仁、あくまでもクールな佇まいの伏黒恵、買い物を楽しんだのかたくさんのショッパーを機嫌良く振り回す釘崎野薔薇、大人の余裕を感じさせる踊り方がカッコいい五条悟など、アニメ本編ではあまり観られないメインキャラクターたちの普段の顔、いわば作品の裏側の一面が切り取られているのだ。「LOST IN PARADISE feat. AKLO」は、そんな彼らの日常を彩るゴキゲンな音楽として、ここでは存在しているのだろうし、作品全体に感じられるスタイリッシュな雰囲気を一層強める効果も果たしているように思える。

TVアニメ『呪術廻戦』ノンクレジットEDムービー/EDテーマ:ALI「LOST IN PARADISE feat. AKLO」

 本作の音楽プロデューサーである小林健樹の発言によると(参考:アニメージュプラス)、原作者の芥見下々はアニメの劇伴音楽のリファレンスとして「ビリー・アイリッシュやスタイリッシュな方向を提示」したという。そういった音楽的嗜好が作品全体に通底しているからこそ、EveやALIといったジャンルの垣根なく先進的な音楽を生み出すアーティストの楽曲が、このアニメにはマッチしているのかもしれない。

■流星さとる
流浪の人。アニメ・声優・アニソン関連のライター仕事、よろず承ります。お問い合わせは【ryuseisatoru@gmail.com】までどうぞ。

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