佐藤千亜妃、カバーライブで聴かせた高揚感と温かさ 往年の名曲から近年のヒットソングまで、幅広く歌い上げるステージに

佐藤千亜妃、カバーライブの高揚感と温かさ

 「今日はラストの公演になる。やればやるほど、違うライブの表情になる」と語った後、メンバー紹介をここで挟む。「本当に演奏のカッコいい4人が揃い、カバーとは思えない臨場感があって、歌うことが気持ちいい」と佐藤は素直な心情を吐露していた。それは会場にいる観客や配信で観ている視聴者も同じ気持ちだろう。さらに前半で取り上げた楽曲についても触れ、「(ヒゲダンは)去年すごくハマッた」「椎名林檎さんは大好き」など、いち音楽ファンとしての素顔を見せるコメントも微笑ましく、そうしたピュアな音楽愛がカバーに新たな息吹を吹き込んでいるに違いない。

 後半はアコギとピアニカというシンプルな編成で、ゆず「バイバイ」を披露。郷愁を誘う音色の上で、スケール感のある壮大な歌声が映え、この曲も彼女の歌声に抜群にマッチしていた。また、宇多田ヒカル「初恋」も素晴しい出来映えで、澄んだ声色は吸い込まれるような魅力を帯びていた。平井堅「Sweet Pillow」、チャットモンチー「世界が終わる夜に」と続き、「みんなで頑張ろうという気持ちを込めて」と前置きすると、本編ラストに中島みゆきの「ファイト!」を見舞う。きのこ帝国やソロ作品だけでは見られない、感情剥き出しのアプローチにゾクゾクするような興奮に包まれた。

 アンコールに応えると、自身のソロ曲をピックアップし、アコギ弾き語りで「橙ラプソディー」、晴れやかな明るさを運ぶ「You Make Me Happy」と放ち、最高の笑顔を浮かべて歌に没頭する佐藤の姿が印象的だった。

 強力なサポート陣をバックに、佐藤は様々なキャラクターを演じるように歌に魂を込めていく。けれど、どの曲にも彼女のオリジナリティは息づき、聴き手を優しく包み込むような慈愛に満ちたライブを見せてくれた。その余韻はいまだに抜けず、心の奥底にはずっと温かいものが残り続けている。

■荒金良介
99年からフリーの音楽ライターとして執筆開始。メタル/ラウド/パンク/ミクスチャーなど激しめの音楽を中心に、雑誌/WEBを軸に書いてます。今年、自分が音楽を聴くきっかけになった漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の作者・荒木飛呂彦先生に六本木で偶然すれ違い、心臓が飛び出るほどビックリしました。その昔、荒木先生が少年『ジャンプ』の作者一言コメント欄で、レッド・ツェッペリンをお薦めしてて、それをきっかけに今では音楽ライターをやっています。人生はわからないものです。

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