イワツボコーダイ×maeshima soshi楽曲歌いこなす新星 佐藤ミキとは? 『魔法科 来訪者編』ED曲で注目集める“シルキーボイス”

『魔法科 来訪者編』で話題の佐藤ミキとは?

 そして8月26日、プレデビュー作品として発表されたのが、配信限定シングル「A KA SA TA NA」。「Play the real」に続きイワツボコーダイとmaeshima soshiが制作した本楽曲は、夏の終わりの淡い恋模様を描いたラブソング。メロウなヒップホップ調のトラックは、近年TikTok経由で人気を集めるRin音や空音らの楽曲と近しい雰囲気があり(maeshima soshiは実際にRin音や空音の楽曲も手がけている)、〈見たかった花火も無くてさ〉〈会えない日々が続いて〉など、コロナ禍における夏の恋人同士の距離感を描写したような歌詞の内容を含め、広く共感を得られそうな楽曲になっている。恋愛あるあるの「あかさたな」を歌詞の中に仕込んだ言葉遊びも秀逸だし、「Play the real」とは印象の異なる切なくも艶やかな歌声、浮遊感のある耳に心地の良いコーラスからは、彼女のポテンシャルの高さが感じられる。

佐藤ミキ 『A KA SA TA NA』M/V

 それら新鮮なサウンドアプローチの2曲とは趣きを変え、より繊細な表現が求められるバラードに挑戦したのが、デビューシングルの表題曲「名もない花」。前2曲と同様にイワツボとmaeshimaがタッグでプロデュース、作詞は佐藤がイワツボとの共作で担当しており、大切な人を思う温かな気持ちと、それがいつか失われるかもしれないことの切なさや儚さが、歌詞で表現されている。楽曲タイトルの「名もない花」には“自分の心の中に咲いている秘めた感情”という意味合いが込められているとのことで、『魔法科高校の劣等生』の楽曲として受け取るなら、兄妹の関係でありながらお互いに対して深い愛情を抱く司波達也と司波深雪の心情に置き換えられる。もちろん、シンプルに片想いだったり、相手に素直な気持ちを伝えられない葛藤といった、誰しもが抱いたことのある感情と重ねて聴くこともできる。その言葉の強度と奥行きは、佐藤ミキというアーティストを知るうえで重要なファクターの一つだし、細かなビブラートを用いた歌唱表現も彼女ならではの味として、この楽曲をさらに印象深いものにしている。

佐藤ミキ『名もない花』M/V(「魔法科高校の劣等生 来訪者編」ED_先行配信中)【FULL ver.】

 アニメタイアップ曲でのデビュー、そしてアニソンシンガーや声優アーティストを多く抱えるSACRA MUSIC所属ということもあり、彼女のことを(狭義での)アニソン歌手と捉える人もいるかもしれないが、MVやアーティスト写真を含めたビジュアル全体から感じられるクールでありながらキュートな佇まい、スタイリッシュで最先端かつ普遍的な魅力を持った音楽性からは、より広い層にリーチする可能性を感じる。その意味ではUruやmiletといったアーティストのように、アニメ・実写の分け隔てなく作品のテーマに寄り添った楽曲を歌えるシンガーとして、これから先、大きく育っていくのではないだろうか。今後の活動が楽しみだ。

■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。

■リリース情報
2020年12月2日(水)Debut Single 
佐藤ミキ『名もない花』
・購入はこちら
©2019 佐島 勤/KADOKAWA/魔法科高校 2 製作委員会 

<出演情報>
「Sony Music Artists presents おなじむ vol.1」
2020年12月15日(火)20:00~生配信
・詳細はこちら

佐藤ミキが所属するSony Music Artistsによる配信プログラムへの出演が決定。
第一回目となる配信では東京スカパラダイスオーケストラのドラマー・茂木欣一がメインMCとなり、CHEMISTRYをゲストに迎えた一夜限りのトークやミニライブを繰り広げる。

■関連サイト
オフィシャルサイト
オフィシャルYouTubeチャンネル 佐藤ミキ Official YouTube Channel
Twitter @satomiki_0929
Instagram satomiki_0929
Weibo

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