ウルトラ寿司ふぁいやーの“広く深い”ポテンシャル TikTokやYouTube、作品にみる爆発寸前のエンターテインメント

ウルトラ寿司ふぁいやーのポテンシャル

 先述したとおり、ウルトラ寿司ふぁいやーはリアルなライブと同時に動画でパフォーマンスを発信するということに取り組み続けてきたグループだ。コロナ禍においてはその動画パフォーマーとしての側面が開花。リモート演奏の動画を次々とアップしてファンを楽しませ続けた(もちろん、星野源「うちで踊ろう」とのコラボも当然のようにやっている)。6月には本来ワンマンライブを開催するはずだった代官山UNITからの無観客配信ライブで熱いパフォーマンスを届けてみせ、リアルではなかなか思うような活動ができないなかでも、彼らは彼らなりのやり方でファンベースを広げてきたのだ。

 そんななか、10月にリリースされた2ndアルバム『What we 貫』。すでに聴いている人もいるかと思うが、まさにここまでの集大成と呼ぶべき、かなり密度の高い作品である。ではどんな作品で、どんな音楽が鳴っているのか。ここまで筆者はあえて彼らの音楽性には触れずにきたのだが、それというのも、このウルトラ寿司ふぁいやーは音楽的に端的に説明するのがとても難しいグループなのだ。とにかく芸の幅が広く、かつクオリティが高い。広く浅くでも狭く深くでもなく「広く深く」といういちばん難しいところを正面突破するようなスキルフルな連中なのである。

 『What we 貫』の収録曲だけみても、軽やかに踊るピアノと華やかなコーラスの真ん中でブリブリのファンクネスが炸裂する「HANPAFUL DAYS」にはじまり、ドープなヒップホップのノリとセクシーなハモリが極上のコンビネーションを織りなす「テクマクマジック」、アコースティックギターとサックスの音がノスタルジーを誘う「めっちゃええ歌詞」、Pファンク的なスケール感とパワー感を感じさせる王道ファンキーチューン「ワーカホリックバカリーマン」、ハードロックとポップスと合唱曲が無理やり合体したような異形のポップソング「THE OUTSIDER」……と、もはや何でもあり。動画でもありえない組み合わせのマッシュアップとか、脱臼しそうなメドレーとかを次々繰り出している彼らだが、そこからもわかるとおり、ふつうのバンドやグループとは違う筋肉のしなやかさと柔らかさをもっているのだ。すごいアスリートって股関節の可動域がめちゃくちゃ広かったりするが、ああいう感じである。

HANPAFULDAYS - ウルトラ寿司ふぁいやー【Official Music Video】
テクマクマジック-ウルトラ寿司ふぁいやー【Official Music Video】
めっちゃええ歌詞-ウルトラ寿司ふぁいやー【Official Music Video】
ワーカホリックバカリーマン-ウルトラ寿司ふぁいやー【Official Music Video】
THE OUTSIDER-ウルトラ寿司ふぁいやー【Official Music Video】

 アカペラ出身メンバーによる完璧なボーカルワークと、バンド出身メンバーの確かな楽器スキルや的確なアレンジのセンスに、楽曲のコンセプトや動画の企画に見える発想力とユーモアをかけ合わせてウルトラ寿司ふぁいやーの音楽はできている。要するにアスリート級の股関節をぐるんぐるん回しながら本気でおもろいことをやっているのが、このグループなのである。動画を見たりすると7人のバラバラ具合(見た目もキャラも)に驚くが、そのバラバラさが、足し算でも引き算でもなくちゃんと掛け算になっているのは、奇跡といってもいいかもしれない。

 ただおもしろいことをやっているだけでもない、ただストイックに音楽を突き詰めているだけでもない、そのいい感じのバランスこそが、ウルトラ寿司ふぁいやーの魅力だ。『What we 貫』の最後に入っている「マイホームタウン」に感動している自分に気づいたときには、やられた! という気持ちになったが、それも、彼らがあくまで音楽と楽曲を中心において活動をし続けている証拠だろう。

 そんなグループほかにいるかな、と思ったが、いた。デビュー40年を超え、国民的バンドとして愛され続けるサザンオールスターズである。極寿司炎からすると同じ事務所の超大先輩にあたるサザンもまた、珠玉のメロディと歌詞で全国民を感動させながら、同時にライブではありとあらゆる演出を駆使して観客をエンターテインし続けている。すっと耳に入ってくるポップスとしての純度を保ちながらも、その実めちゃくちゃ洋楽的でハイブロウな音楽をやっている、という点もどことなく通じるものがある。ウルトラ寿司ふぁいやーこそ令和のサザンだ、と断言するにはまだ早いかもしれないし、いろんなところから怒られるかもしれないが、そんな予感はある。

 12月28日、ついに実現するライブ。クアトロのステージで彼らはどんなパフォーマンスを繰り広げてくれるのか。今からとても楽しみだ。

ウルトラ寿司ふぁいやー「KIRIDANCE」【Music Video】

■小川智宏
元『ROCKIN’ON JAPAN』副編集長。現在はキュレーションアプリ「antenna*」編集長を務めるかたわら、音楽ライターとして雑誌・webメディアなどで幅広く執筆。

■リリース情報

『What we 貫』
発売:2020年10月28日(水)
価格:3,000円(税込)
<収録曲>
01,Prologue78〜What we 貫〜
02,HANPAFUL DAYS
03,テクマクマジック
04,めっちゃええ歌詞・・・CBCラジオ11月度マンプレ
05,KIRIDANCE・・・FM福岡11月度パワープレイ
06,ワーカホリックバカリーマン
07,いい加減にシエスタ
08,ガチガチに降り積もったWinterLove
09,THE OUTSIDER
10,マイホームタウン
11,幸せになれ(Live ver.)
※各DLサイトで配信されるアルバムには、M1,5,7,11は収録されません

<各配信サイトURL> 
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■ライブ情報
『ウルトラ寿司ふぁいやーワンマンライブ「復活!廻らない極寿司炎 本店 -トロは鮪でもクア鮪なのよ-」』
日程:2020年12月28日(月)
時間:開場 18:15 / 開演 19:00
会場:東京・渋谷CLUB QUATTRO
チケットはこちら

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