USインディ注目株のエイドリアン・レンカー、神話的な物語を綴る青葉市子……アンビエントと歌の境界で揺らめく必聴作5選

青葉市子『アダンの風』

青葉市子
青葉市子『アダンの風』

 今年でデビュー10年目という節目を迎えた青葉市子。自身のレーベル<hermine>を立ち上げて作り上げた新作は、沖縄の島々に長期滞在した時に思いついた物語をもとに、架空の映画のためのサウンドトラックとして制作された。曲作りのパートナーに作曲家の梅林太郎を迎え、レコーディングやミックスのエンジニアに葛西敏彦が参加。二人は曲作りの段階から参加し、青葉と一緒にアルバムの世界観を作り上げ共有した。これまでの作品はギターの弾き語りが中心だったが、本作ではストリングスやオルガン、フィールドレコーディングなど様々な音色が融合。インスト曲とボーカル曲が混ざり合い、これまで以上に映像的で広がりあるサウンドを構築している。当初はインスト中心のアルバムにする予定だったらしいが、一人の少女を主人公にした物語は、音楽で綴った神話のように幻想的だ。

Ichiko Aoba - Porcelain (Official Music Video)

COMPUMA & 竹久圏『Reflection』

COMPUMA & 竹久圏
COMPUMA & 竹久圏『Reflection』

 サウンドクリエイター/DJとして多方面で活躍するCOMPUMAと、KIRIHITOやGROUPで活動するギタリストの竹久圏がコラボレート。本作は、京都の老舗茶問屋、宇治香園が提供する「音と光で茶を表現する」シリーズ“Tealightsound”の7作目。二人は以前にも、このシリーズで『SOMETHING IN THE AIR -the soul of quiet light and shadow layer-』という作品を発表しているが、そのアルバムを作る際に訪れた山奥にある茶畑を5年ぶりに再訪。今では廃園となって自然に呑み込まれたその茶畑から受けた印象を作品にしたそうだ。鳥や鹿の鳴き声、水音など、現地でフィールドレコーディングされた自然音と、霊気のように浮遊する電子音が融合。さらに竹久のクラシカルで情感豊かなギターが加わり、ストレンジでありながら郷愁を感じさせるサウンドスケープを生み出していく。自然を美しいフレームで切り取るのではなく、二人のアーティストが音を絵筆に独自の感性でスケッチした異空間音響作品。

RealSound_ReleaseCuration@Yasuo Murao20201122

■村尾泰郎
音楽/映画ライター。ロックと映画を中心に『ミュージック・マガジン』『レコード・コレクターズ』『CDジャーナル』『CINRA』などに執筆中。『ラ・ラ・ランド』『グリーン・ブック』『君の名前で僕を呼んで』など映画のパンフレットにも数多く寄稿する。監修/執筆を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)がある。

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