すとぷり、アルバムチャート首位獲得で絶好調 バラエティ豊かな作風とキャラクターの魅力溢れる楽しさ

 『Strawberry Prince』はアニメや配信プラットフォームとのタイアップ曲を含む全20曲、1時間19分と盛りだくさんの内容だ。ライブ映えしそうなアップテンポなダンスポップが大半を占めるが、転調を多用したダンスロックやEDM、いかにもJ-POP的バラード、うっすら2ステップ的フレイバーを感じる爽やかなポップソングまで、曲調は幅広い。J-POP的、といってもGReeeeNやFUNKY MONKEY BABYSなどの00年代後期のそれを思わせる「マブシガリヤ」と、往年のSMAPなんかを思わせる「ハジメテキミと」ではガラッと印象も変わってくるが。本作はこうしたバラエティの豊かさも、メタ目線やメンバーごとの小ネタも含んだギミックも併せて、ジャンルにこだわらないキャラクターソング的な自由さと楽しみに溢れている。昨今、特に音楽原作系のコンテンツに顕著だが、ジャンルや音楽性がコンテンツやキャラクターたちの特徴づけに重要な役割を果たすことが増えている。もちろんそれによってそれぞれの楽曲が洗練されていくのはいいことだけれども、こうした賑やかなごった煮感もまた楽しい。

【MV】マブシガリヤ/すとぷり

 本作の売上が証明するように、ユニットとしての勢いはこの難しい状況下でも衰えていないばかりか、むしろ加速している。もともとインターネット上の生配信を中心としていたことが、かえって追い風になったのかもしれない。アルバムも盛りだくさんなら、YouTubeチャンネル上で見られるコンテンツの供給も膨大。不安定な情勢が続くが、この勢いのまま来年に控える武道館公演が成功することを祈るばかりだ。

■imdkm
1989年生まれ。山形県出身。ライター、批評家。ダンスミュージックを愛好し制作もする立場から、現代のポップミュージックについて考察する。著書に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019年)。ウェブサイト:imdkm.com

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