稲垣吾郎が再び身に宿す、陰陽師 安倍晴明の神秘的な魅力 2人を繋ぐ、混迷の時代に求められる“しなやかな強さ”

 先日、19年ぶりに発売されたフォトエッセイ『Blume』でも、私たちの期待どおり、いや想定以上の「稲垣吾郎」っぷりが伝わってきた。自ら生けることもあるという花のある暮らし。2週間に一度は窓掃除までするほど清潔な空間。ムダなものを極力所有しない整然としたインテリア……かつて愛猫たちと暮らしていた日々を振り返った章も、「彼女たち」と呼ぶ艶めかしさに、つい「式神と暮らしているらしい」と噂された“安倍晴明”感に繋がってしまう。

 また、香りに魔法の力を感じ、贈り物に人が人を想う時間の価値を見るなど、目に見えない何かに対して真摯に向き合う姿勢も、人々が陰陽師に感じていた神秘性と通じるものがあるように思えてくる。ついつい体重や体脂肪、健康診断の結果など、数字で管理したくなる健康に関しても、決められたプログラムで鍛えていくというよりも、身体の内側に流れるものと相談しながら、フラットな状態を保つことを重視しているのだ。

 科学が発達した現代、人間は多くの病を治せるようになり、天候についても近い将来、人工的に操作することが可能になる日もくるだろう。AIも、いにしえの人が見たら、リアルに式神だと感じるかもしれない。しかし、それほどに神がかった力をもってしても、人間はいまだにすべてのことをコントロールできない。

 目に見えない脅威に翻弄され、先の見えない未来に不安を募らせる。人々の迷う気持ちは安倍晴明が実在していた時代と2020年で、そう変わってはいないのかもしれない。時を経てもなお安倍晴明が語り継がれるのは、いつの世も決して思い通りにはいかないこと、そして混乱する世界に動じず、凛として生きる“しなやかな強さ”を持っていたいという願いからなのかもしれない。そして2020年の現代日本において、稲垣吾郎こそ、そのアイコンにふさわしいと言えるだろう。今こそ知りたい陰陽師・安倍晴明の生き様を、今を共に生きる役者・稲垣吾郎の生命力で体現されるのを楽しみにしている。

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