秋山黄色「サーチライト」で描かれる激情と静寂 水溜りボンド 佐藤寛太によるMV、ドラマ『先生を消す方程式。』での役割も

秋山黄色「サーチライト」で描かれる“激情”と“静寂”

 では、ドラマ『先生を消す方程式。』の世界において、「サーチライト」はどのように機能しているのか。

 『先生を消す方程式。』の舞台は都内の進学校にある3年D組。成績優秀者が集められたそのクラスは、親が権威者の生徒4人を頂点としたスクールカーストに支配されている。また、生徒による教師いじめにより、歴代の担任は精神的に追い詰められ、次々と退職していった。そこで新しく担任に赴任したのが、田中圭演じる義澤経男。義澤は、なぜか生徒一人ひとりの詳細なプライベート情報を握っているうえに、たとえ何をされようとも、常に笑顔でいる。そんな彼を疎ましく思う気持ちから、生徒たちの行動はエスカレートし、殺人計画へと発展していく。

 以上が概要だが、いわゆる黒幕はどの生徒でもなく、副担任の教師が彼らを唆していることが第1話の時点で明らかになっている。生徒たちの過激な行動の根底にあるのは、一人ぼっちになりたくない、クラスメイトからも両親からも絶望されたくない、という不安。現在の自分の立ち位置が揺らぐことを恐れて虚勢を張っているわけだ。

 しかし(繰り返しになるが)弱さを受け入れることが真の強さならば、弱者を排除するために振るわれる権力とは、真の強さではない。どん詰まりの闇へ自ら進む生徒たちの虚勢が、義澤によって引っ剥がされたとき――“自分の弱さを認めなければ始まらない”という本当のスタート地点に立たされたとき、きっとこの曲が彼らの行く道を照らしてくれることだろう。

 サーチライトとは照明器具の一種で、例えば戦時中には、夜間爆撃にやってくる敵軍の航空機を見つけるために――つまり、闇に紛れて見えづらくなっているものを照らすための光として用いられていた。それと同じく、この「サーチライト」という曲もまた、私たちが生きる上で目を逸らしてしまいがちなもの、だけど本当は正面切って向き合うべきものを炙り出す歌として存在しているのだ。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

「サーチライト」
「サーチライト」

■リリース情報
「サーチライト」
2020年11月13日(金)配信スタート
タイアップ:テレビ朝日系 土曜ナイトドラマ『先生を消す方程式。』主題歌

■ドラマ情報
テレビ朝日系土曜ナイトドラマ『先生を消す方程式。』
2020年10月31日スタート
【毎週土曜】よる11:00~ 11:30
出演:田中圭、山田裕貴、高橋文哉、久保田紗友、森田想、 高橋侃、秋谷郁甫、榊原有那、川瀬莉子、田中亨、奥山かずさ、 手塚とおる、松本まりか
プロデューサー:横地郁英(ゼネラルプロデューサー/ テレビ朝日)、秋山貴人(テレビ朝日)、遠田孝一、小路美智子
脚本:鈴木おさむ 演出:小松隆志 ほか 音楽:HAL 制作:テレビ朝日/MMJ

■関連リンク
オフィシャルサイト
Twitter:秋山黄色
Twitter :秋山黄色staff
YouTube channel
秋山黄色OFFICIAL GOODS

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる