流線形/一十三十一が語る、劇伴制作で改めて触れたシティポップの魅力 「“ここじゃないどこか”に連れていってくれる」

流線形/一十三十一、シティポップの魅力

一十三十一とクニモンド瀧口、それぞれのシティポップの捉え方

ーー最初に一十三さんが仰った、「シティポをお茶の間に」という意義もすごく大きいと思います。

クニモンド瀧口:まあ、そこまでシティポップを意識してたわけでもないんですけどね、じつは。もともと山下達郎さんや吉田美奈子さんの音楽がルーツになっているし、一十三ちゃんと流線形がやれば、自然とこうなるというか。

ーーなるほど。お二人はシティポップのムーブメントを象徴する存在だと思いますが、ご自身ではどう捉えていますか?

一十三十一:そうですね……。『CITY DIVE』を作っていた頃は、シティポップという言葉も知らなかったので。“東京、横浜、夜7時から朝7時までのデート”というイメージをもとに、原点回帰しつつ試行錯誤しながら作ったのが『CITY DIVE』で。アーバンなサウンドは意識してましたけど、それが結果的にシティポップと呼ばれるようになって。

ーーいろんな解釈もありますからね、シティポップは。

クニモンド瀧口:時期によっても違いますしね。流線形の1stアルバムは『シティ・ミュージック』(2003年)というタイトルなんですけど、当時のシティポップにはキンモクセイや堂島孝平さんなどのフォーキーなイメージもあったから、差別化したかったんです。僕がやりたかったのは、山下達郎さんの『IT’S POPPIN’TIME』のようなサウンドだったので。いまのシティポップは一つのムーブメントになっているし、一十三ちゃんの『CITY DIVE』もきっかけだったと思いますね。

一十三十一:『CITY DIVE』の前に、Dorianさんの楽曲(「summer rich feat.hitomitoi」)に参加して。その頃から、仲間が集まってきたんです。KASHIFくん、クニモンドさんもそうだし。あと、ビルボードレコーズからのリリースで、ビルボード東京でライブをやることも決まっていたから、「あの空間で歌うならこういう余裕なサウンドがいい」みたいなことも意識して。

クニモンド瀧口:それがいまやシティポップの女王と呼ばれて(笑)。

一十三十一:(笑)。ブリージンな音楽は小さい頃から聴いていたので。私の両親が北海道で“トロピカル・アーバン・リゾート”をテーマにしたレストランをやっていたんです。まさに『FOR YOU』(山下達郎)のジャケットみたいな雰囲気で、山下達郎さんや、大瀧詠一さんや、吉田美奈子さん周辺の曲が流れていて。それが根底にあったんですけど、デビューしてからは実験的な音楽を探求していたから、あえてそっちにはいかなかったんです。でも、しばらくお休みして、5年ぶりにアルバムを作ることになったとき、自分のルーツと自然に結びつくタイミングがやって来たというか。それを、さらにクラブミュージックを通過して出来たのが、『CITY DIVE』でしたね。

クニモンド瀧口:トラックメイカーの存在も大きいですよね。バンドサウンドだけではなくて、70年代、80年代のポップスとトラックメイカーが出会ったことがターニングポイントだったというか。

ーー10年代以降のダンスミュージックと70年代、80年代の質の高いポップスが結びついて、新たなシティポップの潮流が生まれた。

流線形

クニモンド瀧口:結果的には、ですけどね。そこまで意識はしてなかったし、ムーブメントを作ろうとも思ってなかったので。

ーーシンリズムさんもそうですが、シティポップの流れを汲むアーティストも続々登場していて。

クニモンド瀧口:音楽オタクですよね、いい意味で(笑)。Lampの染谷太陽くん、ウワノソラの角谷博栄くんもそうだし。ブルー・ペパーズの福田直木くんがライターの金澤寿和さんと一緒にAORの本(『AORライトメロウ プレミアム 01 Legends & Pre-AOR』)を出しましたけど、音楽の話をしてると、詳しすぎてちょっと引きますね(笑)。

ーー(笑)。シティポップが世代を超えて受け継がれ、何度もリバイバルするのはどうしてだと思いますか?

一十三十一:今回の『Talio』の裏テーマもそうですけど、“ここじゃないどこか”に連れていってくれるトリップ感があると思うんです。私自身もずっと“ここじゃないどこか”をテーマにしているし、それは聴いている方も心地良く感じてくれてるんじゃないかなって。

クニモンド瀧口:シティポップに限らず、音楽にはそういう力がありますからね。たとえば「この曲を聴くとイギリスの田園を想像してしまう」とか。あと、シティポップはイケてるイメージを想起させるんじゃないかな。昔、友達と熱海に遊びにいって、ウォークマンで「RIDE ON TIME」を聴いたら、「俺ら、すごくいい感じじゃない?」って気分がアガったり(笑)。

一十三十一:憧れもありますね。私自身、北海道で育って、いわゆるビーチリゾートに憧れていたので。

ーーシティポップの発展という意味でも、今後のお二人の活動に期待してます。一十三さんはずっと制作しているとか。

一十三十一:はい。今年はもともと制作でずっとこもっていたので。フィーチャリングものもけっこうあるので、この後、ちょっとずつ発表できると思います。

ーー流線形の新作も待ってます。

クニモンド瀧口:じつは5年くらい前に録った音源があるんですけど、アレンジに納得できなくて、延ばし延ばしになってて。『Talio』は数カ月で作ったので、メンバーがビックリしてました(笑)。さっきも言いましたけど、『Talio』はセッションで作ったので、ほとんど編集もせず、“まんま”使ってるんですよ。やっぱり勢いって大事なんですよね。『Talio』の制作に気持ちを押されたところもあるし、何とか年明けには(流線形の新作を)出したいですね。

流線形/一十三十一『Talio』

■リリース情報
『Talio』
発売:2020年11月11日(水)
価格:¥2,800(税抜)
NHK総合 ドラマ10『タリオ 復讐代行の2人』オリジナルサウンドトラック
エンディング主題歌「悲しいくらいダイヤモンド」、オープニングテーマ「金曜日のヴィーナス feat. 堀込泰行」、一十三十一が歌う挿入歌「蜃・気・楼」をはじめ、一十三十一&堀込泰行によるデュエット曲「嘘つき手品 feat. 堀込泰行」や劇伴インスト曲、計21曲を収録

一十三十一 オフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる