ばってん少女隊、ファンと作り上げた“楽しい(=ふぁん)時間” 有観客単独公演で見せたメンバーの成長

ばってん少女隊、ファンと作り上げた“ふぁん”な時間

 10月28日に待望のニューアルバム『ふぁん』をリリースしたばかりのばってん少女隊が、同作を携えた単独ライブ『ばってん少女隊 リリース記念LIVE “ふぁんtasy”2020』を開催。11月1日にKT Zepp Yokohama、8日にZepp Fukuokaで行われたこの2公演は、グループにとっても久しぶりの有観客での単独公演となる。このライブは、新作『ふぁん』収録曲全曲を披露するという挑戦的な内容ながらも、メンバー5人の成長が手に取るようにわかる、見応えのある2時間となった。

 筆者が観覧したのは、11月1日のKT Zepp Yokohama公演。今年オープンしたばかりで初めて訪れる会場というのもあったが、何よりこの規模感の有観客ライブは8、9カ月ぶりということもあり、新鮮な気持ちと緊張感を同時に味わいながら会場へと足を運んだ。場内はソーシャルディスタンスを確保した座席構成となっていて、開演を待つ間の観客も、近くの仲間たちとの会話はあるものの、コロナ禍前と比べたら静かなものだった。

 定刻になると場内に爆音で、アルバム『ふぁん』のオープニングトラック「ふぁんtasy」が流れ始める。座席に座った観客は特に立ち上がることなく、座った状態で周りの様子を伺いつつ、手元のペンライトを振り続ける。そして、ステージ前の幕が開くと、人形のようにポーズを取った、最新アーティスト写真で着用したものをリメイクした衣装を身にまとったばってん少女隊の姿が。逆光を浴びたその姿はどこか神々しく、これから始まる“楽しい(=ふぁん)時間”に期待が高まる。

 そのまま、アルバム同様に「スウィンギタイ」からライブをスタートさせると、5人は楽曲の持つ横ノリビートに乗せて息の合ったダンスで観る者を魅了する。一方、客席に目を配ると、久しぶりにライブ会場に足を運んだファンが多いためか、立って盛り上がっていいものか、このまま座ったまま応援すべきか戸惑っている様子が伺えた。コロナウイルス感染拡大防止のため、曲中コールしたり声援を上げるなど声を出すことは禁止されており、以前と勝手が違うのだから、無理もないだろう。最初こそペンライトを振る力もどこか遠慮気味だった観客だが、続く「ますとばい!」では空気が一変。曲中、星野蒼良が「心の中で言ってね!」と観客それぞれの心の中でコールを求める場面もあり、会場の熱気が徐々に高まっているのが筆者にまで伝わってきた。

 2曲終えると、おなじみの挨拶と自己紹介をする5人。メンバーから一方的に話しかける形にはなるが、マスク越しにもうれしそうな表情が十分に伝わり、久しぶりの再開を互いに楽しんでいるようだ。ここでメンバーから「曲中は立ち上がってもいいんですよ?」と、ファンを労う言葉も。このように、双方が少しずつ勘を取り戻していく感じもコロナ禍以降といったところだろうか。

 次のブロックでは、新作『ふぁん』から大人びた楽曲「Dancer in the night」「Just mean it!」の2連発。ともに落ち着いた曲調に対して、歌やダンスにおいて高い表現力が求められることから、改めてばってん少女隊の実力の向上を実感する良きタイミングとなった。特にダンスに関しては、ただ熱量の高さで観る者を圧倒させるのではなく、“魅せる”力で観客を惹きつける技術が要求されるのだが、少なくともこの2曲での彼女たちはその基準を見事にクリアしていた。

 さらに、グルーヴィーなファンクナンバー「でぃすたんす」や、緩急に富んだスカパンク「OTOMEdeshite」、キラキラのディスコチューン「ジャン!ジャン!ジャン!」とバラエティ豊かな新曲が続く。ここでは「OTOMEdeshite」にて学校の机やホワイトボードなどの小道具が用いられ、それらをBPMの速い曲調に合わせて動かし続ける演出が興味深かった。また、「でぃすたんす」は6月21日の『結成5周年!!!Specialオンラインライブ』での初披露から着実に完成度が高まっており、この日も観客との一体感の高さは特筆すべきものがあった。今後のライブにおいても、この曲はばってん少女隊の新たなアンセムとして愛され続けることだろう。

 そして、これらの楽曲や先のブロックでの2曲など横ノリの楽曲が増えたことで、ライブでのメリハリのつけ方もよりダイナミズムを持たせることができるようになったのは、彼女たちにとって非常に大きな進化ではないだろうか。もちろん、これまでのような熱く勢いで飛ばすステージも悪くないが、表現の幅が広がったことは間違いなく今後の彼女たちの可能性を大きなものにしており、ファン拡大にもつながるのではと確信している。

 ライブ中盤には、観客が声を出してコミュニケーションを取れないことから、ちょっとしたファン参加型のトークコーナーを用意。メンバーの話す「あるある話」に共感した観客は拍手で応えたり、上田理子の出したお題に観客がジェスチャーでほかの4人に伝えていくゲームなど、趣向を凝らした企画はどこか彼女たちのYouTubeコンテンツの延長線上のようにも映り、ファンならば間違いなく楽しめたはずだ。

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