羊文学「銀河鉄道の夜」、NITRODAY「人にやさしく」、長谷川白紙「光のロック」……若手アーティストが歌い継ぐ名曲

 長谷川白紙はサンボマスター「光のロック」(2007年)をカバー(アルバム『夢の骨が襲いかかる!』収録)。長谷川白紙といえば、デスクトップ上で創出する膨大な情報量の緻密でスピーディーなポップスを得意としてきたが、本作では鍵盤と声のみで“強烈に記憶に残り続けている”楽曲をカバー。激しくもメロディアスなギターロックである原曲は長谷川の音楽性からはかなり遠い。故に、全く違う装いを施すことで自身の個性を色濃く残してある。

「光のロック」

 冒頭からエレピの音色が軽やかに流れ、Aメロはまくしたてるように歌われる。Bメロのなぞり方は原曲に近いが、サビでは再び特有のタイム感でブレス混じりの発声を用いながら原曲とは違う色の興奮をもたらしていく。原曲では一撃だけ打ち込まれる〈少年少女‼︎青春爆走‼︎〉の絶唱。長谷川は徐々に自らを昂らせるように繰り返し唱え、ほとんど吐息のような〈君の事だけ考えさせておくれ!〉へとパスする。静かに爆発し続ける心の内が表現されているようだ。奇妙なアレンジとも言えるが、生々しい感情を込めたラストのフェイクや乱れた演奏は実に直情的だ。狂おしいほどに“あなた”のことを思う気持ちを込めた原曲への理解度が極めて高いように思える。

「光のロック」

 これらのカバーワークはどれも懐古的でなく、確固たる名曲の新たな聴こえ方を呼び起こすものばかり。若いリスナーには不朽の名曲を伝え、往年のファンにとっては新たな才能を見つける絶好の機会になり得るはずだ。

■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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