aiko、高橋優、クリープハイプ……日本語詞の魅力引き出すアーティストたち 新譜5作をピックアップ

クレイジーケンバンド『NOW』

 〈Go toか Stayか〉考えて、〈ドロンの映画でも見る〉という結論に至る「サムライ・ボルサリーノ - Le Samouraï Borsalino -」からはじまるブランニューアルバムのタイトルは『NOW』。タイトル通り、今現在の社会の雰囲気を濃密に反映した作品だが、もちろんそこはCKB、ソウル、ファンク、R&B、AOR、ボサノバ、ロックンロールなどをいい塩梅でブレンドしたサウンドとともに、“どんな状況でも、豊かな人生は送れる”というメッセージがたっぷりと込められている。オールドカーに乗って、切ない恋をしながら、本牧あたりで夜明けのコーヒーを飲む。そんな日々を夢想しながら、混迷の時代が明ける日を待ち望むーーそんなマーヴィン・ゲイの歴史的名盤『What’s Going On』よろしく、リアルな時代性と豊かで奥行のあるサウンドが一つになった充実作だ。

クレイジーケンバンド – 2020年10月21日発売ニューアルバム「NOW」ティーザー
tricot『10』(CD)

 前作『真っ黒』(2020年1月リリース)からわずか9カ月というインターバルで届けれたニューアルバム『10』。性急に突き進むビート、エッジの立ったギターフレーズを軸にした「おまえ」の〈悲しみも痛みも寂しさも悔しさも/歌うしかないのさ!〉をはじめ、中嶋イッキュウ(Vo&Gt)が紡ぎ出すリリックもさらに強いインパクトを放っている。個人的にもっとも心に残ったのは、官能性と叙情性が溶け合う「體」、そして、ファンタジックな色合いの「Laststep」。もともとJ-POPが好きで(モーニング娘。のファンであることを公言している)、10代の頃から歌詞を書き続けている彼女は、バンド結成10周年を迎えた現在、作詞家としても成熟の時期を迎えつつあるようだ。

tricot「10」予告映像

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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