“梨泰院ロス”を癒すサウンドトラックと豪華ブックレット ドラマの美学が随所に感じられる作品に

 K-POPファンは、BTSのメンバー・Vが歌う「Sweet Night」が最も気になるはずである。主演のパク・ソジュンとは過去のドラマ出演をきっかけに仲が良くなったそうで、その縁で参加したようだ。恋人たちの甘い夜をしっとりと歌うこの曲はドラマの後半から流れるようになり、特に最終回では視聴者に感動の余韻を与えてくれた。

 『梨泰院クラス』OSTにはインストゥルメンタルも数多く収められている。「タンバムの厨房」という曲では、主人公が経営する料理店・タンバムの温かいムードをクラシックギターによるゆったりとした曲調で表現。エレクトロポップやレゲエを組み合わせたサウンドメイクが印象的な「IQ162のアーバンガール」は、タンバムでマネージャーを務めるチョ・イソのキャラクターを的確に伝える。

 以上のように今回のOSTは、音を聴けばドラマのシーンや登場人物がすぐに思い浮かぶような仕上がりになっているのが最大の特徴だ。単なるBGMになることを避けつつ、かといって目立ちすぎることなくストーリーに寄り添ったサウンドを作る――。そんな裏方の美学が随所に感じられる力作だと言えよう。

 このたびリリースされた日本盤仕様の『梨泰院クラス』OSTは、豪華なブックレットも大きなセールスポイントとなっている。40ページという圧倒的なボリュームもさることながら、ドラマの場面をフルカラーでたっぷり掲載しているのがファンにとってはうれしい。

 さらに日本語対訳と韓国語歌詞のフリガナに加えて、参加ミュージシャンやレコーディングスタッフなどの詳細なデータも記載されているのも貴重だ。韓国では制作に携わった人たちをCDのブックレットに記載することはめずらしくないものの、ここまで徹底しているのは、本作が多くの人たちの努力と熱意によって出来上がったということを強くアピールしたいからなのかもしれない。

 “梨泰院ロス”という言葉をよく耳にする今、本盤はそんな人の心にうるおいを与えてくれるだろう。『梨泰院クラス』に夢中になった人であれば必ず持っていたい1枚だ。

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■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を開始。『ミュージック・マガジン』など専門誌を中心に寄稿。『ジャズ批評』『韓流ぴあ』で連載中。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著も多数あり。

■リリース情報
『梨泰院クラス オリジナル・サウンドトラック(日本盤)』
発売中
価格:¥4,500(税抜)
【日本盤仕様】
P40フルカラーブックレット
ハングル(フリガナ)歌詞・日本語対訳付き
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