SUPER BEAVERが全てをふり絞って届けた歌と演奏ーー結成15周年を記念した日比谷野音ライブを観て

SUPER BEAVERが全てふり絞った野音ライブ

 「一歩でもあなたの近くに!」と連呼しながら、葛藤も苦難も吐き出す「27」を経て、「声を出せないということが、何か理由になります?」と彼らしい煽り方から「東京流星群」へ。メジャーからインディに戻ったころから、彼らの歴史を作ってきた歌だ。〈輝きはいつでも 何処に居ても 変わりはしないだろう〉――画面の前にいるあなたの輝きも、きっと日比谷に届いていたに違いない。そして渋谷が「今日この日が、僕たちの、そしてあなたの突破口になりますように」と願いを込めた、新曲の「突破口」。藤原の渾身のドラムの連打! 本当に分厚い壁に、深い闇に、穴が開きそうな楽曲だ。そして4人とも、人前で新曲を披露できることが、本当に嬉しそう。そんなライブを実現に導いてくれたスタッフに対して、渋谷がオーディエンスから拍手を贈ってほしいと伝えると、あまりの大きさに今度は嫉妬する渋谷。微笑ましいほど素直だ。そして「愛すべきあなたのお手を拝借」と述べ、「美しい日」へ。声を出せなくても、跳んで、手をあげて、美しい光景を作り上げていく。演奏を終えて渋谷も「あなたのおかげで、美しい日になりました」と笑顔を見せた。

SUPER BEAVER
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渋谷龍太(Photo by 青木カズロー)
柳沢亮太(Photo by 青木カズロー)
上杉研太(Photo by 青木カズロー)
藤原”32才”広明(Photo by 青木カズロー)
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渋谷龍太(Photo by 青木カズロー)
柳沢亮太(Photo by 青木カズロー)
上杉研太(Photo by 青木カズロー)
藤原”32才”広明(Photo by 青木カズロー)
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 今を生きるすべての人の代弁のように〈楽しい予感のする方へ〉と歌う「予感」。「あなたが見てくれていたら大丈夫。胸張ってバンドマン稼業、これからも続けていきます」と多くのバンドマンの代弁のような言葉から、声なきコールアンドレスポンスを展開した「秘密」。そして、「4人で成し遂げてきたことはない。誰かと音楽を鳴らしている気持ちでいます」と彼らの歩みを象徴するような話からのラストナンバーは「ひとりで生きていたならば」。すべてをふり絞るような歌と演奏が終わり、アンコールの声も響く中、重大発表のアナウンスが聞こえ、配信は重大発表の映像へシフト――なんと、12月8日・9日に、横浜アリーナで生配信ライブを行うという! 明日を生きる糧を心に残して、ライブは幕を閉じた。

 「秘密」の最初と最後、渋谷は「本当はあなたと歌いたかった」と念を押すように言った。もちろん歯がゆさもあったと思う。しかし、これは紛れもなく、ライブだ――そう思えるコミュニケーションは、この日たしかに生まれていた。私自身も、辛い時こそ響くと感じているビーバーの音楽。生演奏に宿る救済や後押しに、体中の血が巡ったようなライブだった。

SUPER BEAVER
Photo by 青木カズロー

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。

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