DJ DARUMA、WEGO店内BGMセレクトに込めた“クラブカルチャーへの想い” プレイリスターとして“グルーブに浸る面白さ”追求

DJ DARUMA、グルーブに浸る面白さ

WEGOの強み

ーーこの膨大な曲数は、店員さんのことも思って選曲されたんですね。

DARUMA:むしろ一番考えたのは、店員さんの気持ちだったかもしれません。毎日のことですし、1カ月続くとなると、同じ曲ばかりを聴かされるのは拷問ですから。ニューヨークでもラジオで「HOT97」をかけっぱなしにすると、1日で30回くらい同じ曲がかかるから、嫌になったりするんですよね。まあ、帰国後に日本のクラブで聴くとニューヨークを思い出して、今度はアガるのですが(笑)。

 店員さんが飽きずに「このプレイリストいいな、さっきの曲聴きたいけど6時間後か」と思ってくれたら嬉しいです。ゆくゆくはプレイリスト中にトークセクションとかも入れ込んでいって、店内だけで聴けるラジオ番組みたいな感じにもしていけたら良いなと思っています。僕が様々なアーティストに、最近聴いてる音楽やファッションについての話を聞いたりしたら、若い子たちも喜んでくれるかなと思います。WEGOさんは250店舗もあって、年間のべ1億人くらい来店するそうです。すごく大きなタッチポイントなので、ミュージシャンにとってもプラスになると思います。

ーーDARUMAさん自身のブランド「FULL-BK」もWEGOとコラボしました。服飾面で見たWEGOの強みは?

DARUMA:WEGOさんはやはり、物量の力がすごいです。何百枚、何千枚という単位で洋服を作っていて、クオリティも高いから、たくさんの人々に着てもらえる。そういうビジネスには僕も興味があったから、服も音楽も関わることができて本当にありがたいです。スタッフの方々は、僕が提案するストリートのエッセンスについても理解が深くて、「こういう感じでやりたいです」と言っていただけるんですよ。皆さん、ストリートが好きだったんだなあというのが伝わってくる。あとはロープライスで、かつトレンドと噛み合っているのもポイント。無理に押し付けることなく自然と聴こえる音楽だったり、目にするものがちゃんとトレンドを踏襲しているのが素晴らしいと思います。

ーープレイリストには、DARUMAさん自身の音楽性もしっかり反映されていると感じました。2000年代頃からクラブに通っている人にとっても、納得感のある内容だと思います。

DARUMA:プレイリスターは個人的な趣味が出るものだと思います。クライアントの側も、リスターのテイストをある程度理解して、「この人だったらこういう選曲をしてくれそう」と考えてオファーするケースが増えていくと思います。トレンドの流れを汲んだエレクトロニック・ダンスミュージックならDARUMAに頼もう、みたいに。

陶酔するグルーブとこれからのクラブカルチャー

ーー今回のプレイリストをどう受け取ってもらいたいと考えていますか。

DARUMA:グルーブに乗る楽しさが伝わると嬉しいです。EDMは「1、2、3、ハイ! ドカーン!」で盛り上がる瞬間の波をどれだけ楽しめるか、という遊びだったと思うんですよ。それはそれで面白いし、TikTokもリズムや音楽を使った遊びを学ぶには良いムーブメントだと思います。でも、次は瞬間だけではなく、少しだけ長くグルーブの中にいる面白さを、理屈じゃない部分で分かってもらえたら最高ですね。DJが「1、2、3、ハイ」と煽らなくても、「いい感じに楽しいよね」と思ってもらえるようになったら嬉しいです。

 2000年代は『BIG BEACH FESTIVAL』や『WOMB ADVENTURE』が2万人を集めたり、『FUJI ROCK FESTIVAL』ではUnderworldがトリだったりして、リスナーがもっと一般的にグルーブを楽しんでいた時代だと思うんです。それが一度は廃れたものの、再び立ち返っていく時期になってきたので、ここからしばらくは若い方を含めてみんなでそれを楽しみたい。

ーー振り付けとして踊るだけではなく、長い時間をかけて陶酔していくようなダンスの楽しさもありますからね。

DARUMA:黙々と踊りながら考えてる時って、実は自分と向き合ってる瞬間でもあるんです。体は勝手に踊りながら「そういえば、あれはどうなったんだっけ?」とか考えを巡らせたりして、それが良いなと。若者たちは、せっかく踊れる機会があって、学校でダンスが必須科目になっていて、リズムに合わせられるので、もっと多様な楽しみ方を発見してほしいです。ダンスは上手いのに、グルーブを感じるという快感を知らない子も少なくないみたいなので。

 クラブ文化がEDMで一般化したことで、逆に一世代前のディスコ化してしまった気がします。みんなで同じ音楽で同じ瞬間に盛り上がるのも楽しいですが、その楽しさはカラオケの延長みたいなところがある。果たして、自分がみんなに楽しんで欲しいと願っていたクラブカルチャーはこれだったのだろうかと考えると、疑問が残るところです。だからこそ、僕が考えるクラブカルチャーを取り戻したいという理念で『EDGE HOUSE』を始めたんです。

ーー現在は新型コロナウイルスによってイベント開催が難しい状況ではありますが、今後のクラブはどうなっていくと思いますか。

DARUMA:コロナさえなければ、この夏がブレイクポイントだったと思います。EDMやベースミュージックを主にしていた世界各国のコマーシャルクラブが、一気にテクノやハウスへ入れ替えたんですよ。2、3年前からステップアップしてきたテクノ/ハウスのアーティストがビッグクラブのレジデントになって、これから世界中のトレンドが移っていくのが今年の夏だったはず。そうなっていれば、グルーブに主眼をおいたポップミュージックがもっとたくさん出てくるチャンスもあった。実際、すでにトレンドに敏感なK-POPはテクノ/ハウスを取り入れてます。グルーブとEDMのトレンドの名残をうまく昇華して、新しいK-POPにしている。

 状況が元に戻らないことにはエンジンのかけようがないですが、またみんなで一緒に踊れる日が来るのが待ち遠しいです。何時間も踊り続けた明け方のフロアは、やっぱり言葉で表現できないほど気持ちが良いものですから。

DJ DARUMA アーティストページ

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