GEEKが明かす、活動休止の理由と再始動に至った背景 音楽か家庭かーー3人がたどり着いた日常のリアル

GEEKが明かす、活動休止の理由

『LIFESIZE III』に込められた“現在のGEEK”

ーーそして出来上がった『LIFESIZE III』ですが、生活に直結したことを書くという内容性はデビュー当時から変わっていないけれども、その内容がよりフラットになったと感じました。『LIFESIZE II』が2008年12月にリリース、そして2009年2月にはSEEDAさんとOKIくんによる「TERIYAKI BEEF」がありましたね。その意味でも、GEEKはその当時のシーンのブライテストホープだったことは間違いないと思うし、そういったシーンからの要請に対して、しっかり返さないといけないという意志を、『LIFESIZE II』をいま聴くと感じる部分があって。

OKI:昔のことだからそんなに明確には覚えてないんですけど、プレッシャーはあったような気はしますね。作った作品に対しても、自分自身ジャッジが厳しくなってたし。

SEI-ONE: 声の出し方からしてもそうだったと思いますね。腹から声を出すのか、もうちょっと違うスタイルなのか、みたいなこともメンバーでしっかり話し合ったし、それぐらい作品に対して気合が入ってたし、真剣だった。だけど、今回はそれよりも、もうちょっと柔らかく作ってると思いますね。 

OKI:『LIFESIZE Ⅱ』の時は、二人にラップを聴かせるのは、すでにプリプロの段階だったりしたよね。

DJ EDO:それぐらい余裕がなかった。

OKI:そういう部分も反映してるのかもしれないね、いま考えると。

SEI-ONE:でも、それはその時にしか出せない空気にもなってたとも思う。

ーーその意味では、『LIFESIZE Ⅱ』は「当時のシーンの空気」を感じるんだけど、『LIFESIZE III』は「いまのGEEKの空気」を強く感じるんですよね。ライフサイズであることは変わらないんだけど、今作の特に後半は、極端に悪く言えば「しみったれた」作品だなって。

OKI:ふふふ。そうですね。

ーー家族の話、仕事の話、生活の話、休日のパパの話っていうのは、家庭のない、イケイケの若い子には響きづらいと思うし、「ストリートのヒップホップ」とは、全く逆のベクトルにあるから、その文法から比較すると、非常にしみったれてると思う人もいると思う。でも、これこそがGEEKにとってリアルすぎるほどリアルな内容なんだろうなって。 

SEI-ONE:そう思ってくれると嬉しいですね。

DJ EDO:アルバムの中で、「lovely day」が最初の方に出来たっていうのも大きいのかな。

OKI:「どういう曲を作ろう」っていうテーマみたいなのは、制作に入る段階では考えてなくて、SEI-ONEのトラックにフリースタイルで乗っけて、そこから広げていくっていうのが、今回基本になってて。だから、だから生活感を出そうをみたいなことは考えてなかったし、トラックから導かれたっていうのが正しいと思いますね。でも、自分の生活圏内のことを書くっていうのは、変わらないことだと思う。

SEI-ONE:OKIのスタイルは変わらないよね。だから、自分の目の前が変わって、それが反映されただけなんだと思うし、意図的に家族の曲を書こうと思ったりっていうのは全くないですね。

DJ EDO:やっぱり子供のことを考えてるのが幸せだから、自然に出てくるのかな(笑)。 

ーーだから前作の「Pipe dream」で歌ってた目の前と、今作の「ピクニック」の目の前の変化というのが、この12年間だったんだろうな、って。

OKI:「ピクニック」も自分の実体験に基づいた内容ですね。それは12年間の経験の上にあるものだし、それが書けたんだなって。

ーービート感としても『LIFESIZE II』は当時の音楽的な先端を反映したり吸収してたと思うんですが、今回のビート感はよりシンプルに、よりSEI-ONEくんのオリジナリティに寄った内容になっていますね。

SEI-ONE:自然とこうなっていったって感じですね。ビートに関しては本当に直感で作ってるんで。

DJ EDO:今回のトラックは、全部脳腫瘍の手術後に作ったトラックだよね。SEI-ONEにとっては僕らの想像を絶するような体験だったと思うし、当然、死だったり人生だったりに対して、僕らより考えたと思うんですよね。そういう上でのトラックだから、いろんな思いが詰まってると思いますね。

OKI:SEI-ONEのビートは右肩上がりで良くなってるよね。洗練されていってる。

DJ EDO:頭開けて通気性が良くなったのかな(笑)。

ーー……笑っていいのか悪いのか(笑)。

SEI-ONE:頭開きながらユーミンの曲を聴いて、涙が止まらなくなったり、そういう期間が何カ月かあったんですよね。そういう感受性が変わったっていう部分が、ちょっと影響してるのかもしれないですね。

ーー僕もGEEKとほぼ同世代ということもあると思うんですが、この内容は、やはり「大人」こそ響くんだと思って。例えば若いアーティストの描く色恋だったり、イケイケの内容は、客観的な尺度では興味は惹かれるんだけど、主観的に感情移入や没頭出来るかといったら、それは難しいし、感情移入できるというのは、欺瞞のようにも感じて。だから、その部分でヒップホップやラップを聴かなくなってしまった同世代と言うのは、多分少なくない数存在すると思うんだけど、ストリートやアンダーグラウンドの期待を背負ってたGEEKが、経年したからこそ出せるヒップホップ、ともに成長するラップを書いたことに、スゴく希望を感じるんですよね。これは質問じゃなくて感想で申し訳ないんですけれども。

SEI-ONE:いや、そう言ってもらえて嬉しいです。作って良かったね(笑)。

ーー一方で、 「we still」では、これからもまだまだやっていくという決意を感じて、その部分にも滾るものを感じて。

DJ EDO:この曲が一番最初に出来た曲なんですよね。最初にOKIがこの曲の1ヴァース目を書いてきて、それがとにかくヤバくて「もう1回聴かせてよ!」みたいな(笑)。

SEI-ONE:嬉しかったよね。興奮しちゃったもん(笑)。

OKI:リリックを書いても書いても、「結局何が言いたかっただろう」みたいなリリックになってしまって、そこに悩んでた時期が長かったんですけど、みんなでスタジオに入って、「やっぱりラップって楽しい」って感じたその余韻のまま書いたのが、このリリックなんですよね。それを二人に聴かせたら、その後もリリックが書けるようになって。

ーーやっぱり3人じゃないと書けなかったってことなのかな。それはスゴく美しい友情とも感じます。ではこの先の動きは?

OKI:正直ちょっと分からないですね。こんな状況っていうのもあるし。

SEI-ONE:ライブも難しいからね。

OKI:だからちょっと状況を見ながら、先を考えようかなって。でも、SEI-ONEの格好いいビートはまだまだあるし、スタジオにも入ってるんで、曲単位でも出せたらなって考えてますね。そのタイミングを見極めようかなって、おやじバンドとして(笑)。

SEI-ONE:でも、今が最高だよね。それだけは言いたい。

■リリース情報
『LIFESIZE III』 (ライフサイズ・スリー)
9月16日(水)
2,000円+TAX(CD)
<収録曲>
1. we still [Track by SEI-ONE]
2. hey!! [Track by E.C]
3. ooi gachi [Track by SEI-ONE]
4. チクタク -interlude-
5. tik tak bang bang [Track by SEI-ONE]
6. chill chill michill [Track by SEI-ONE]
7. puff puff [Track by SEI-ONE]
8. ピクニック [Track by SEI-ONE]
9. popcorn -interlude-
10. 居間 [Track by DOC-DEE]
11. lovely day [Track by SEI-ONE]

公式HP

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる