オレンジスパイニクラブ、Spotifyバイラルチャートトップ3へと上昇 リスナーを刺激する「キンモクセイ」の表現力

 さて「キンモクセイ」について。この曲は“オレンジスパイニクラブ”名義としては初リリース作品となる1stシングル『敏感少女』の収録曲だった。発売は2019年1月。ちなみにバンド名は、ザ・童貞ズ→The ドーテーズ→オレンジスパイニクラブと、数回改名されている。おそらく青春パンクなどに影響を受け、バンドを始めたのだろう。本人たちも「今よりパンク寄りなことをやってました」と、インタビューで語っている(参照:rockinon.com)。また、メンバー脱退によるパートチェンジ(ドラムスが現ギターへ)や、幾度かのメンバーチェンジ、現メンバーの脱退や再加入と、人間関係を含んだ紆余曲折も経験。サウンドも変遷してきた。「キンモクセイ」がヒットした最大の理由は、おそらくサビの歌詞だ。

 TikTokをチェックすると、ほとんどの投稿動画にサビの歌詞が書かれている。〈やっぱビビッときてるよ 君のイメージ金木犀よ/香りまで妄想しちゃうなんてバカね〉と、視覚と嗅覚を同時に刺激する多面的な表現力がある。ちなみに動物本能的(しかも虫レベルまで)として、男性は女性の“匂い”に色気を感じるそうだが、その本能に抗えないどうしようもなさを〈バカね〉と綴っているあたりには、冷静な分析力も伺える。

 さらに最後の〈グッときた心臓バンっと割れる〉などにも見られるように、擬音の使い方がとても上手だ。一聴で覚えられる言葉が並んでいる中で、さらにこの擬音がフックになり、グッドメロディと一緒に“一発で覚えられるサビ”になったのだろう。とはいえ。バンドのサウンド性は、かなりバリエーションに富んでいて、パンキッシュな曲やカントリー調の曲もある。この「キンモクセイ」の大ヒットから、今後バンドがどのようなストーリーを描いていくのか楽しみだ。

■伊藤亜希
ライター。編集。アーティストサイトの企画・制作。喜んだり、落ち込んだり、切なくなったり、お酒を飲んだりしてると、勝手に脳内BGMが流れ出す幸せな日々。旦那と小さなイタリアンバル(新中野駅から徒歩2分)始めました。
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