KEIJU、表現者として力強く走り続ける決意 『T.A.T.O.』は自分自身の在り方を堂々と打ち出した作品に

 クルーと共に生きながらも、どこか拭いきれない一抹の孤独感を抱え、それでもこの時代や自分自身にしっかりと向き合い、今を強く生きるKEIJU。『T.A.T.O.』完成までの約4年を通して本当に大切なものを見つめ直し、自身の理想に向けて実直に走り続ける生き様が揺るぎないものだからこそ、我々は彼のラップに人間としての“芯”を見出すのだろう。

 ひょっとすると、リスナーが『T.A.T.O.』に向き合う際、その内容を自身の経験や人生観に基づく尺度と照らし合わせて考えることで、彼の音楽に対して“生き急いでいる”と評価するシーンもあるかもしれない。中盤以降のシリアスな印象を与えるトラックも、さらっと聴き流すとただ暗い印象だけが残る可能性を秘めているといえる。

 それでも、そのスピード感や楽曲の織りなすムードこそが、『heartbreak e.p.』と根底を同じにしながらも、KEIJUが表現者として妥協せず、徹底的に自分自身を見つめ直した先で手にした答えなのではないだろうか。彼はきっと、生き急いでいるのではなく、我々よりもただ脇目を振らず、毎日を走り続けているだけなのである。

 『T.A.T.O.』を通して、まるで“Oracle”(=天啓)が舞い降りたかのように、栄光に向かって自分自身の在り方をより堂々と打ち出したKEIJU。彼の紡ぐ嘘偽りないリリックに学び、我々もその言葉に背かぬ真っ直ぐな生き方を追求したいものだ。

KEIJU『T.A.T.O.』

◼︎一条皓太
出版社に勤務する週末フリーライター。ポテンシャルと経歴だけは東京でも選ばれしシティボーイ。声優さんの楽曲とヒップホップが好きです。Twitter:@kota_ichijo

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