草なぎ剛はYouTubeでも“親しみやすさ”を損なわない 愛犬 クルミちゃんが引き出す、飾らない姿がカギに

 YouTubeというのは、素とエンタメのバランスが実に難しい。黎明期に多くの芸能人がYouTubeに進出して苦戦を強いられた理由も、テレビなどで求められた役割を全うする力が、自分自身の素をセルフプロデュースしていく力とイコールにはならないことが原因のように感じた。

 よく見る“人気YouTuberらしいこと”をいくら完璧にこなしたとしても、それは「YouTubeでしか見られないものを見たい」という視聴者の心には引っかかりにくい。かといって、テレビで華々しい活躍をしている人たちの素を、何の工夫もなく出すだけではエンタメにはならない。

 きっと演技力の高い草なぎのこと、「ユーチューバー草なぎ」という新たなエンターテインメントを開拓する上で、“人気YouTuber”なキャラクターを演じ続けることも可能だったはず。しかし、そこで終わらずに、“クルミちゃんのパパ”という素の要素が加わったことで、素をさらけ出す加減が掴めたのではないだろうか。

【ハロウィン】クルミのお見合い写真を撮ろう!

 草なぎがクルミちゃんに見せるいつもの顔は、誰かに求められてするものではない。それが、自然と視聴者に伝わるからだ。ちょっと真面目なこと、少し照れくさいことも、クルミちゃんに話しかける感覚ならば、飾らずに語れる。創り上げられたものではなく、不意打ちだからこそ出てしまう「可愛げ」や「愛され力」が評価されるYouTube。草なぎは、それをごく自然に見せているように感じるが、そのきっかけを作ってくれているのがクルミちゃんだったように思うのだ。

 国民的アイドルとして圧倒的なメジャー感を放ちながら、まるでいつもの散歩の途中で遭遇したような親近感を両立することができた、草なぎのYouTubeチャンネル。よく年齢を重ねるほど魅力を増す人がいるが、その本質は「すごい」と「可愛げ」の振り幅にある。

 2021年には大河ドラマ『青天を衝け』への出演も決定し、トランスジェンダー役という新境地を開拓した主演映画『ミッドナイトスワン』の公開も今年9月に控えている。

 キャリアを見れば、ますます大御所芸能人という箔がつく一方。だが、YouTubeを見ればずっと昔から知っている友人のような親しみやすさ。そんな絶妙な距離感を保ちながら、草なぎ剛はますます魅力的に年を重ねていくに違いない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる