三姉妹のHaim、声を失ったジア・マーガレット、女優でも活躍するマヤ・ホーク……個性豊かな女性シンガーの作品5選

Thanya Iyer『Kind』

Thanya Iyer『Kind』

 モントリオール出身のシンガーソングライター/バイオリン奏者のThanya Iyer(ターニャ・アイヤー)の2作目となる『Kind』。Thanya Iyerは個人名であると同時にバンド名でもあり、曲によっては、サックスやフルート、ハープなど、多彩な楽器が加わった表情豊かなオーケストラサウンドを展開。即興的で柔軟なアンサンブルはジャズっぽくもあるけれど、フォーク、アフリカ音楽、エレクトロなど様々な音楽性が溶け込んだスープのようなサウンドで、それをゆっくりとかき回すように曲は刻々と変化していく。そんななか、Thanyaの歌声は子守唄のように優しく穏やか。オルタナティブなサウンドの中にピュアな歌心が息づいている。

"KIND" by Thanya Iyer (visual album)

Maya Hawke『Blush』

Maya Hawke『Blush』

 ハリウッド俳優、イーサン・ホークとユマ・サーマンの間に生まれたマヤ・ホーク。ドラマ『ストレンジャー・シングス』やクエンティン・タランティーノ監督の最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)に出演して注目を集めるなか、『Blush』でシンガーとしてもデビューした。マヤは子供の頃からイーサンの影響でカントリー、フォークを聴き、イーサンの親友のジェシー・ハリスに曲作りのノウハウを教えてもらっていたとか。デビュー作となる本作はジェシーが全面的にバックアップ。マヤが歌詞を、ジェシーが曲を書いて二人で一緒に曲を作り上げた。ルーツミュージック色が強いのは子どもの頃から聴いてきた音楽の影響だろう。ノラ・ジョーンズがピアノで参加した曲もあって、アメリカーナな味わいを感じさせる。マヤにとって歌はプライベートな楽しみで、女優の仕事をしっかりやっていきたいそうだが、キャット・パワーを思わせる気怠げな歌声はなかなか魅力的。

Maya Hawke - By Myself (Official Music Video)
RealSound_ReleaseCuration@Yasuo Murao20200809

■村尾泰郎
音楽/映画ライター。ロックと映画を中心に『ミュージック・マガジン』『レコード・コレクターズ』『CDジャーナル』『CINRA』などに執筆中。『ラ・ラ・ランド』『グリーン・ブック』『君の名前で僕を呼んで』など映画のパンフレットにも数多く寄稿する。監修/執筆を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)がある。

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