「Dear My グッバイ」インタビュー

2020.08.08 12:00

超特急が語る、グループの“これまで”と“これから”　「目指すところに向けてやるべきことは多い」

文・取材＝古知屋ジュン、写真＝三橋優美子

無敵状態だった超特急というグループは、茨の道を走ってきた

――キーワードは中毒性という言葉になりそうですが、この曲のお気に入りポイントは？

カイ：僕はそれこそ、チアみたいなコールの入ったイントロですね。このイントロだけでタイトルと歌詞のイメージをすべて破壊してくれるぐらいの威力があるので。あとこの曲全体を通して、タカシがどんな顔して歌っているのか純粋に知りたいんですよ。歌っている姿を現段階ではまだ見れていないので。

タカシ：フフフ（微笑）。

リョウガ：僕は細かいところなんですけど、サビの〈心の奥で〉の裏の音がデン、デデデデン！　ってわざとらしいくらいレトロかつベタな感じのアレンジなんですけど、そこがすごく好き。

タクヤ：〈溢れる涙に色があること一人じゃ気付けなかった〉とか〈駆け抜けた瞬間（とき）が背中押すからボクは今頑張れるよ〉とか、この音からは想像できないようなグッとくる歌詞ですね。聴く人によって捉え方が変わるようなステキな歌詞だと思うんですよ。できるなら聴く人1人1人に向けてカメラを回したいくらい。

ユーキ：僕はサビの〈dear my〉をタカシが頑張って歌っている、あのニュアンスが好きですね（笑）。実はデモの段階では全然違う歌詞が付いていたこともあって、特にここが耳に残るんです。まさに中毒性があるなと。

タカシ：そうね。ほかにもAメロの〈何も無かったように（朝がやって来るから）〉みたいなコーラスの入り方がくどくて、すごく引っ掛かりがあるんですよね。意図的にわざとらしく歌っているというのもあるんですが、自分が歌っているにもかかわらず、そこにすごく違和感を感じるというか。でもそれがこの曲では正解なんだと思うんです。AメロもBメロもくどくてちょっと甘ったるい感じとか、歌詞はいいんやけど歌い方で「えっ？」と思わせるような感じが。これまでのツアーやライブのテーマソング＝胸に響く曲というイメージをいい意味で裏切るようでいて一本筋が通っている曲なので、その新しさがいいなと思っています。

――この曲に限らずですが、タカシさんの歌い回しで曲の印象がかなり変わるいい例というか。

タカシ：基本的にこの曲調に則った歌い回しで、ひと昔前の歌い方をイメージしていますね。

ユーキ：いずれライブで披露するときには、コーラスの部分はダンサーが歌って、サビは8号車にも参加してもらってみんなで歌いたいなって。

タクヤ：えー、「Stand up」でも大変だったのにまた歌う？？？

タカシ：先に言っておくけど、めっちゃキー高いよ？

カイ：そうなんだ（笑）。でも遊びがいがありそうだよね、この曲は。

ユーキ：ライブで披露を重ねていくうちにだんだん形が変わっていきそうな予感もあります。

――あと、この曲ではこれまでとは違う層の方々が超特急に興味を持ってくれそうな感触もあるんですよね。年上世代の男性ウケしそうというか。

カイ＆リョウガ：わかります！（ハモる）

――具体的にいうと、80年代後半～90年代にアニメが好きだった、30代後半から50代前後の男性にクリーンヒットするような。

タカシ：『男祭り』（注：毎年恒例の男性限定ライブ）でもやるべき？

ユーキ：じゃあこの曲を披露するときにはめっちゃかわいくなるんで、僕たち。

タクヤ：今ついてくれている8号車が困惑するようなのは、ちょっとどうかな？

カイ：代償が大きすぎるんですけど（笑）。

――先ほど、8周年を振り返るというコンセプトの楽曲ではないということでしたが、これまでのみなさんの道のりに思いを馳せる8号車も多いのではと思うんです。以前にリョウガさんが超特急のこれまでを「山あり谷あり」と表現されていましたが、その8年間を振り返って、今どう思っていますか？

タカシ：シンプルに、気づけば8年経ったな……という感じですね。そのときそのときはすごく長く感じることもありましたけれど、体感でいうとそれほど長くなかったように思います。僕たち超特急の目指すところに向けてやるべきことは多いし、越えなくちゃいけない壁はデカい。しかもその壁は活動に深みを求めるほどどんどん大きく、高くなっていくんですよ。でもそれを越えないと前には進めない。お世辞にもトントン拍子の道のりとは言えないけれど、だからこそ毎日が刺激的だなというのは感じます。

カイ：山あり谷ありと言いつつ、その当時には「ここが山だ」「ここが谷だ」と思ったポイントが、あとから思い出すと意外と平坦だったりするんですよね。でも僕自身は山とか谷という風にはあまり思ったことがないんですよ。物事はなるようにしかならないし、なんとかなるとも思っているし。結成当時は高校生と中学生だったから、みんな大人になったなと感慨深く思う部分もあります。いろいろありましたけど、それが今の超特急につながっているし、なんだかんだで楽しくやってきたなと。そして電車に例えるなら超特急は、すごく自由で柔軟な路線だなとも思います（笑）。

リョウガ：僕的にはまさに「Dear My グッバイ」の歌詞の世界みたいな感覚があるんですが、CDデビューから8年、結成からだと10年。かなり長い時間の中でいいことも、正直あまり望んでいなかったようなこともありはしたんですけれども、そのすべてを8号車と一緒に前向きに乗り越えてこられたからこそ今があるんじゃないかという風には実感しています。

タクヤ：僕も振り返るとあっという間だったな。楽しかったり辛かったりいろんな感情があった中で、どんなときでも8号車は僕らのそばにいてくれた印象がすごく強いので……これまでも、これからも感謝の気持ちを大切に活動していきたいなと思います。いろんなところで言ってきましたけれど、8号車がいなかったら僕ら、今まで続けてこられなかったと思いますし。

ユーキ：振り返れば学生時代を思い出すような感じで楽しい思い出もたくさんありますけど、当初僕の中では無敵状態だった超特急というグループは、茨の道を走ってきたような感覚があるんですよ。人生というのはただ上手く進んでいくわけじゃないんだなと痛感した部分もありつつ、それはある意味貴重な経験だとも捉えていて。自分の中ではまだまだ胸を張って踊れていない部分があるし、パフォーマンスに満足したことがないんですね。それを「何も考えずにこの時間をただ楽しんでやろう！」と思えるような環境に変えていけたらと。もっと自信を持って、8号車のみんなに明るくて楽しい時間を過ごしてもらえるようなものを見せていきたい。デビューから8年やってきて、夢は東京ドームだと言ってきましたけど、まずはそれを叶えられるぐらいの勢いを見せていけたらと思っています。

――なるほど。純粋な新体制のライブではなかったですが、年末年始のツアー『Revolución viva』を観て、パフォーマンスがすごくシャープになった印象がありました。この先の超特急のパフォーマンスというのは変わっていくんでしょうか。

ユーキ：僕としては体制がどう変わろうとも逃げたくないし、戦っていきたいので、超特急を続けている限りはぶっ飛んでいきたいんですよ。今は楽曲のバリエーションもすごく増えたので、新しい曲に合わせて色気というものをテーマとして押し出している部分はあります。それはこれまでの僕らを知っている人も知らない人にも注目してもらえる1つの武器にはなると思うんです。とはいえ、もともとの自分たちの基本線は大事にしていかなければいけないなと思うので。本来なら今のこの時期にフェスみたいな場でいろいろ仕掛けていきたいところなんですけども、かっこいいだけじゃない僕らの持ち味を大事にしたいところはあります。年末年始に見せたのは、あくまでも僕らの振り幅の一部ですから。プレイヤーとしては絶好調な時期だと思うので、今だからこそ思い切って攻めていきたいという気持ちはあります。

カイ

リョウガ

タクヤ

ユーキ

タカシ

――ちなみに、これからの超特急の音楽面についてはどう考えているんですか？

ユーキ：そこはもちろん、チームとして僕らの音楽を考えてくれているスタッフさんの意見もありますけど、僕個人としては他のアーティストとかぶらないパフォーマンスを武器にしていきたいと思っているので、リリース曲でも尖っていきたいという思いは持っていますよ。　

タカシ：超特急はあまりジャンルにとらわれるグループじゃないので、これからの活動でも8号車のみんなには、楽曲によって僕たちが見せる表情の変化を楽しんでもらえたら。これから大人っぽい曲を中心にやっていきたいというわけでもなく、トリッキーに動けるのが僕たちの魅力だとも思うし、貪欲にいろんな曲に挑戦していこうという基本線は変わらないんじゃないかな。

カイ：演歌とか、歌謡曲にもトライしたいよね。

タカシ：オモロいね。歌謡曲最高。

カイ：それをバックにバキバキに踊れるなら、めちゃめちゃかっこいいグループだと思いますよ。やったことないジャンルにどんどんトライしていきたい。

リョウガ：ジャンルの話からは脱線しますけれども「Dear My グッバイ」は歌詞的にバラードやミディアムナンバーっぽいので、同じ曲でメロディがまったく違うバージョンや、歌詞がまったく違う原曲のバージョンをやったら面白そうですよね。元の歌詞も個人的にはすごく刺さるものがあってもったいないと思っているので。そういう音楽的な挑戦というか、遊び方もできたらいいなと。

タクヤ：僕は音楽の知識があるわけじゃないけれども、カイやタカシが言ったようにジャンルにとらわれず、いろんな曲に今後も取り組めたらうれしいなと思っていますね。やったことがないようなものをどんどんつぶしていくような感覚で。

カイ：アフリカの民族音楽で踊りまくるか。

リョウガ：インド音楽だって、今の超特急ならやりかねないよね。

タカシ：それもけっこう合うんじゃないかな？　前に平井堅さんがやっていたような、インド映画みたいなド派手なMVとか。

ユーキ：最近日本の曲とインド映画の映像を組み合わせた動画が話題になったりしましたけど、インド映画のダンスのキャッチーさって異様なレベルだと思うんですよ。かつ、僕らのパフォーマンスのノリとも通じるものがある気がしていて。

――まさに振り幅無限大といった感じで。今後のみなさんがどう“化けて”くれるか、期待しています！