TOKIO 長瀬智也、雄々しさあるスタイルでアイドルの概念を広げた存在にーー退所発表を機に辿る軌跡

ドラマの役どころも大きく変化

 世代によって長瀬のドラマの印象は異なるかもしれないが、1996年放送のドラマ『白線流し』(フジテレビ系)、2000年放送の『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)が代表的といえるだろう。池袋西口公園にいけばマコトに会える気がして、聖地巡礼した人もいるのではないだろうか。2001年には『ムコ殿』(フジテレビ系)で、トップスター桜庭裕一郎を演じ、役名のまま劇中歌でCDデビューを果たした。

 その後も、天才詐欺師、刑事役などを演じ、過激なシーンも多かった。その緩さがない役どころも同性からの支持を得てきた理由の一つだろう。

 中でも、宮藤官九郎作品(脚本・演出)との相性が良く、元ヤクザの噺家を演じた『タイガー&ドラゴン』や、『うぬぼれ刑事』(いずれもTBS系)と複数の作品に出演している。

 音楽と芝居、長瀬が取り組んできた二つを融合した作品が、2016年公開の映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』だろう。クランクアップ報告会見では、長瀬が演じたキラーKのポーズをみせながら登場し、会場が沸いたことを覚えている。

 この時、宮藤との映画の仕事は約10年ぶりだったという長瀬。「お仕事をさせてもらっていく中で、好きな映画が一緒だったり、彼(宮藤)もバンドをやっていて音楽の話をしたり、いつか音楽を題材にした作品ができたらいいな、という話をしていて。今回キラーKというお話をいただいて、ぜひとも! とやらさせていただきました」と、誰よりも熱く語り、作品と共に音楽にも注目して欲しいと伝えていたのが印象深い。

 スタートがバンドだったことも多少の影響があれど、雄々しさのあるスタイルでアイドルの概念や、出演作品のジャンルの裾野を広げた一人だろう。

 ジャニーズ事務所では、KinKi Kidsと同世代でプライベートでも仲が良いことで知られる。3人での思い出も語られてきたが、中にはラブホテルに3人で宿泊したエピソードもあった。特に、同い年の堂本光一を溺愛し、ジャニーズカウントダウンでは新年の幕開けと同時に誕生日を迎えた光一の顔をホールドし、キスのプレゼントをしたことも。

 90年代後半のアイドル誌の中で、こんなやりとりがあった。一緒に食事をするときに、いつもコーラを注文するも氷多めでとオーダーする堂本にツッコミを入れた長瀬。しかし、反対に堂本からはカルピスを原液で飲むことの方が理解ができないと返されていた。ワイルドな風貌からは想像がつかない天然エピソードも多い。

 『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)の「0円食堂」で訪れた先々では、「長瀬くん!」と、女性たちを中心に色めき立っていたのが印象に残っている。カレーやラーメン企画では職人さながらのこだわりをみせ、放送のたびにSNSで話題になっている。嵐の相葉雅紀とは番組でバイクツーリングに出かけたこともあるなど、何をしてもカッコいいのだ。

 ここ最近は髪をオールバックにし、髭を蓄えることも増えた。ダークトーンのスーツを着こなす姿には渋さがあり、ひとりの40代男性としてみても、素敵な年の取り方していると感じた。

 デビュー前から長瀬を応援し、共に年齢を重ねてきたファン。生活の一部と言っては大げさかもしれないが、それほど彼の存在が大きい人もいることだろう。発表によれば、今後は事務所に所属することはせず、裏方の仕事をするという。3月までの活動を応援しつつ、大きな決断となったであろう今回の進路を、またどこかで、何かの形で応援できたらと思う。

■柚月裕実
Web編集者/ライター。企画、担当編集、取材・執筆してます。
日本の男性アイドルの頑張りを見ては涙する30代。
始まりはSMAP中居さん。 KAT-TUN、NEWS中心の事務所担。年中HDDの整理と原稿書きに追われています。

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