つんく♂、なぜ再びアイドルプロデュースに乗り出した? つん♂タス♀、モー娘。……プロデューサーとしての役割を語る

つんく♂、なぜ再びアイドルプロデュース?

“ツッコマレシロ”は大事だけど……

――モー娘。の場合は、つんく♂さんがプロデューサーとして最初から作品や世界観をつくってこられました。一方で『ASAYAN』の番組中、MCだったナインティナインの矢部浩之さんが、句読点の「。」をユニット名に含むことを提案し、採用されました。外の意見を取り入れることの重要性をどれくらい感じていますか。

つんく♂:常に外の誰かの血を入れていくことは非常に大事です。当時、矢部くんはじめ、番組サイドが面白がっているものをどのようにグループに自然に溶け込ませていくか考えていました。それが、つんく♂愛の分散につながったように思います。「。」を入れることで画数が良くなったとか、いろいろな意味はありましたが、それは後付けであり、美談でもある。そういう後付けをしてあげたら、矢部くんの責任も良い意味で軽くなる。みんなで楽しんでグループが作れた時代です。

――音楽番組『うたばん』に出演して、MCの石橋貴明さん(とんねるず)、中居正広さんからいろいろイジられて、メンバーがそれを打ち返すことで、新鮮なアイドル像ができあがりました。その点も外部を生かした展開だと思いました。

つんく♂:でもこれはアイドルに限らずですが、今の時代はどこまでツッコミをやって良いか、あだ名付けをして良いかなど、プロデュース側も慎重に考えていかないといけませんよね。お笑いコンビ、ぺこぱのツッコまないツッコミや、EXITの先輩へのあだ名づけは、時代の空気を生かしていて「うまいな」と思います。本来は、みんなに愛さるためにも“ツッコマレシロ”はとても大事。「何でも言ってください、ツッコんでください」という姿勢はとても良いこと。ただし、本人たちがツッコまれて本当にありがたいと感じているかどうか。それを考えてあげないとダメ。そうじゃないと、後々「やらされた」「我慢していた」となりかねない。

――まさに現在のアイドルシーンの問題点に通じる話ですね。企画などに関しても「プロデューサーや運営の言うことを我慢してやっていた」と後に明かすアイドルも少なくありませんし。双方の意思疎通が不足して、考え方や感じ方にすれ違いが生まれる。

つんく♂:『ASAYAN』では、僕もナイナイにたくさんイジられていたし、メンバーもそれを見ていた。だから、そういうことを「おいしい」と思えるメンバーもいただろうし、逆に真面目な子は「同じことはできない」となっていた気もします。『うたばん』ではタカさん(石橋貴明)がすごく空気を読んでくださっていた。飯田(圭織)や保田(圭)はうまく返していましたよね。後藤(真希)も、女性人気をつかめるような形になった。安倍(なつみ)は、ちゃんとイメージをキープできるように、必死にがんばってくれていました。ナイナイの甘噛みに徐々に慣れていって、タカさんの激しめなツッコミにも対応できた。結果として良かった気がします。ただモーニング娘。の話に限らず、何事も本人たちがどう感じるかです。それを無視すると誰も得しませんから。

――アイドルシーンは過度期を迎えていますし、新型コロナウイルスの影響で運営体制や売り出し方も変わってくるはず。そんななかで、アイドルの方向性を指し示すプロデューサーの役割はより大きなものになると考えます。つんく♂さんの目には、アイドルプロデューサーの現状はどのように映っていますか。

つんく♂:そのあたりのJ-POPやアイドルのあり方に関しては、今後、僕のオンラインサロン内で呟いたり、愚痴ったりしたいと思っています。僕らの稼業って、分かっていても話さないこともあるし、後出しでしか言えない結果もあったりするのも事実なので。それでも、サロン内ではできるだけ素直に話せたら良いなって。何となく今はそんな雰囲気です。

――つんく♂さんが今後、プロデューサーとしてどんな感じで動いていくのかも興味深いです。

つんく♂:僕のなかで、この10年で「わっ!」と思ったのは、のんちゃん、広瀬すずちゃんのデビューあたりを見逃していたことなんです。気がついたらすごいポジションまで一気にあがっていた。ふたりのような存在とデビュー前に出会えなかったのは、残念でなりません。これはすごく不思議なことなんですけど、女優が入り口の子は、そのあと歌手をやってどんなに売れても、女優なんですよね。モデル出身の人も、どんなに歌がヒットしてもモデルさん。僕は、歌手のポジションスタートで、女優も出来るような次なるスターと会いたい。オンラインサロンの企画で始まった「中2映画企画」(中2を題材とした映画のヒロイン募集企画)で、のんクラス、広瀬すずクラスと対面したいものです。楽しみ!

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